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「高杉さん高杉さん」
おっとりとした口調で、枕元に座り込むのは、高杉の妾、おうのである。
「何だ」
「庭にちょうちょうが止まっておりますよ」と、ふふと笑って指を指してみせた。
彼女は高杉さん、と呼ぶ。
高杉が芸妓であったおうのに一目惚れした時、高杉がそう命じたのだ。
なぜかは、分からない。
「なぁおうの」
敷布団の上にあぐらをかいて座り、高杉は呼びかけた。
「なんです」
「俺が死んだらーーー、」
おうのが目を見開いて、高杉の目を見つめた。
血の気がさあっと引き、目が潤んでいる。
「高杉さ…」
「まあ最後まで話を聞け。俺が死んだら、俺の姓を継いでくれないか」
「姓を継ぐ?」
「高杉のほうの名は、俺の息子が継ぐから、谷のほうを」
おうのはきょとんと首を傾げた。
「どうして、急に?」
高杉は、手を握ったり開いたりして逡巡した後、照れたように言った。
「お前に遺せるようなものがないな、と思って…。俺の女だって、証拠も……」
歯切れの悪い口調で、高杉はおうのから目を逸らす。それが面白くて、おうのはきゃらきゃらと声を立てて笑った。この独特の笑い声が、おうののいた花街では評判だった。笑って細くなった目尻が、とても愛らしかった。
「わかりました。[漢字]私[/漢字][ふりがな]わたくし[/ふりがな]、高杉さん以外に、絶対に男の人は作りません」
「いや、そこまでは言ってな…」
「ずっとずっと、高杉さんをお慕い致します」
おうのは微笑んでいるように見えたが、目は真剣そのものだった。
「ありがとう」
高杉は、以前と比べてだいぶん血の気の失せた頬を緩ませた。
この時間の他に、何もいらないとさえ思っていた。
「お前はいい女だよ」
「うふふ」
おうのも笑う。
その笑い声は、春空に吸い込まれそうなほど透き通っていた。
おっとりとした口調で、枕元に座り込むのは、高杉の妾、おうのである。
「何だ」
「庭にちょうちょうが止まっておりますよ」と、ふふと笑って指を指してみせた。
彼女は高杉さん、と呼ぶ。
高杉が芸妓であったおうのに一目惚れした時、高杉がそう命じたのだ。
なぜかは、分からない。
「なぁおうの」
敷布団の上にあぐらをかいて座り、高杉は呼びかけた。
「なんです」
「俺が死んだらーーー、」
おうのが目を見開いて、高杉の目を見つめた。
血の気がさあっと引き、目が潤んでいる。
「高杉さ…」
「まあ最後まで話を聞け。俺が死んだら、俺の姓を継いでくれないか」
「姓を継ぐ?」
「高杉のほうの名は、俺の息子が継ぐから、谷のほうを」
おうのはきょとんと首を傾げた。
「どうして、急に?」
高杉は、手を握ったり開いたりして逡巡した後、照れたように言った。
「お前に遺せるようなものがないな、と思って…。俺の女だって、証拠も……」
歯切れの悪い口調で、高杉はおうのから目を逸らす。それが面白くて、おうのはきゃらきゃらと声を立てて笑った。この独特の笑い声が、おうののいた花街では評判だった。笑って細くなった目尻が、とても愛らしかった。
「わかりました。[漢字]私[/漢字][ふりがな]わたくし[/ふりがな]、高杉さん以外に、絶対に男の人は作りません」
「いや、そこまでは言ってな…」
「ずっとずっと、高杉さんをお慕い致します」
おうのは微笑んでいるように見えたが、目は真剣そのものだった。
「ありがとう」
高杉は、以前と比べてだいぶん血の気の失せた頬を緩ませた。
この時間の他に、何もいらないとさえ思っていた。
「お前はいい女だよ」
「うふふ」
おうのも笑う。
その笑い声は、春空に吸い込まれそうなほど透き通っていた。