「帰り道の光」
駅前の銀杏並木は、もうほとんど葉を落としていた。風が吹くたび、乾いた葉が靴の先に触れて、誰かのために息のような音を立てる。
最後に彼女と歩いたのも、この道だった。
「またね」と言った声が、今でも耳の奥に残っている。あれは約束だったのか、ただの挨拶だったのか、今となっては確かめようがない。
彼女は遠くへ行った。夢のためだと笑っていた。その笑顔が眩しくて、引き止める言葉は喉の奥で溶けてしまった。応援するふりをして、僕は自分の弱さを守ったのだと思う。
季節がいくつも過ぎ、街は少しずつ変わった。新しい店はでき、古い建物は消え、それでもこの帰り道だけは同じ顔をしている。まるで、ここに立てば彼女が戻ってくるかもしれないと、僕を騙すために。
夕暮れのホームで電車を待ちながら、ふと窓に映る自分を見る。あの日より少し大人びた顔。でも、失ったものの重さだけは、変わらず胸に残っている。
電車が来る。ドアが開く。
僕は一歩踏み出して、振り返らなかった。
彼女のいない未来を選ぶことが、あの日できなかった「さよなら」なのだと、ようやく分かったから。
ホームに残った光が、静かに消えていった。
最後に彼女と歩いたのも、この道だった。
「またね」と言った声が、今でも耳の奥に残っている。あれは約束だったのか、ただの挨拶だったのか、今となっては確かめようがない。
彼女は遠くへ行った。夢のためだと笑っていた。その笑顔が眩しくて、引き止める言葉は喉の奥で溶けてしまった。応援するふりをして、僕は自分の弱さを守ったのだと思う。
季節がいくつも過ぎ、街は少しずつ変わった。新しい店はでき、古い建物は消え、それでもこの帰り道だけは同じ顔をしている。まるで、ここに立てば彼女が戻ってくるかもしれないと、僕を騙すために。
夕暮れのホームで電車を待ちながら、ふと窓に映る自分を見る。あの日より少し大人びた顔。でも、失ったものの重さだけは、変わらず胸に残っている。
電車が来る。ドアが開く。
僕は一歩踏み出して、振り返らなかった。
彼女のいない未来を選ぶことが、あの日できなかった「さよなら」なのだと、ようやく分かったから。
ホームに残った光が、静かに消えていった。
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