「琵琶法師ッて……、誰もいないじゃねえか!お前は誰と会話してるんだ?ほら、もう夜遅いから帰ろう」
旦那さんは奥さんの着物の袖を引っ張ります。
しかし奥さんは頑として動こうとしません。
無理矢理立たせ、奥さんを引っ張って帰りました。
「────それで?お前は琵琶法師の歌を聴いていたと。やましいことはねえんだな?」
家に帰った旦那さん、奥さんに再三確認します。
「そうだってさっきから言ってるじゃないのサ。やましいことなんざないよ。いいところだったってェのに、邪魔するんじゃないよゥ」
奥さんは怒り気味でございます。
それもそのはず。
現代風に言えば、推しのライブで盛り上がってるというのに、お父さんに無理やり連れて帰られるようなものでございます。
奥さんは優しいので助かりましたが、人によっちゃ殺されかねません。
「お前は琵琶法師と会ってたと言うけどな、夜中に、しかも墓場で会うやつがどこにいる?俺が見たときは誰もいなかった。幽霊とでも会ったんじゃねえか?」
「はぁ?アンタ目ェ腐ってんのかい⁈目の前にいたじゃないか!あんな美形だっつうのに」
このままでは埒があきません。
謎を解くはずが、余計に謎が増えてしまいました。
旦那さんもやけっぱちでございます。
ガサツに筆と紙を取り、手紙を書き始めました。
「拝啓、紅月花魁。
先日手紙を送ったものです。
助言通り妻の後をつけてみたのですが、たどり着いたのは墓地でした。
妻は墓石の前に座り、何やら楽しそうにしていました。妻の笑い声に重なるように、琵琶の音色と美しい歌声が聞こえてきたのです。
最初は琵琶法師と密会でもしているのかと考えましたが、こんなところで会うのはおかしいと考え直しました。
妻の向かい側を見ると、そこには誰もいなかったのです。
暗くて見えなかったわけでもなく、墓石があるだけでした。
私は恐ろしくなり、妻を連れて帰りました。
家に帰り妻を問い詰めても、琵琶の弾き語りを聴いていただけだとしか言いません。
妻は嘘をつくような人ではありませんし、私も妻を信じています。
どうか、事件の謎を解決してくださいませ。
常盤兵衛」
[水平線]
手紙を読んだ姐さんは頭を抱えてしまいました。
今までならある程度情報が揃っていたので推理することができたのですが、今回ばかりはわかりません。
琵琶法師は結局誰で、何のために墓場で会っていたのか───。
「姐さん、そんなに考えてたら脳みそがはち切れますよ」と雪華ちゃんに言われるほど考えましたが、分からないものは分かりません。
結局、分からなかったと伝えるための文を書き始めました。
「文をありがとうございます。
申し訳ございません。今回ばかりは私にも解決できませんでした。
奥様は何故琵琶法師の姿が見えていたのか、旦那様はどうして音色と歌声だけが聞こえたのか、何故墓場で会っていたのか……。謎が多すぎて、私には考えきれませんでした。
ご期待に添えず、申し訳ございません。
別の事案でしたら、解決できるかもしれません。
紅月」
「姐さんも、今回ばかりはお手上げですか」
雪華ちゃんが残念そうに呟きます。
「いやぁ……今回は情報が少なすぎた。それに、不可解な現象が主体の事件だったからね。私も人智を超えたことにゃお手上げさ」
姐さんが悔しそうに語ります。
「まっ!そんな顔しないで、姐さんも人の子ですからね。できないことの一つや二つくらいありましょう。ああそうだ、伊織さんのお店でお団子買ったんです。一緒に食べましょう」
雪華ちゃんに慰められながら、姐さんはお団子を頬張るのでした。
旦那さんは奥さんの着物の袖を引っ張ります。
しかし奥さんは頑として動こうとしません。
無理矢理立たせ、奥さんを引っ張って帰りました。
「────それで?お前は琵琶法師の歌を聴いていたと。やましいことはねえんだな?」
家に帰った旦那さん、奥さんに再三確認します。
「そうだってさっきから言ってるじゃないのサ。やましいことなんざないよ。いいところだったってェのに、邪魔するんじゃないよゥ」
奥さんは怒り気味でございます。
それもそのはず。
現代風に言えば、推しのライブで盛り上がってるというのに、お父さんに無理やり連れて帰られるようなものでございます。
奥さんは優しいので助かりましたが、人によっちゃ殺されかねません。
「お前は琵琶法師と会ってたと言うけどな、夜中に、しかも墓場で会うやつがどこにいる?俺が見たときは誰もいなかった。幽霊とでも会ったんじゃねえか?」
「はぁ?アンタ目ェ腐ってんのかい⁈目の前にいたじゃないか!あんな美形だっつうのに」
このままでは埒があきません。
謎を解くはずが、余計に謎が増えてしまいました。
旦那さんもやけっぱちでございます。
ガサツに筆と紙を取り、手紙を書き始めました。
「拝啓、紅月花魁。
先日手紙を送ったものです。
助言通り妻の後をつけてみたのですが、たどり着いたのは墓地でした。
妻は墓石の前に座り、何やら楽しそうにしていました。妻の笑い声に重なるように、琵琶の音色と美しい歌声が聞こえてきたのです。
最初は琵琶法師と密会でもしているのかと考えましたが、こんなところで会うのはおかしいと考え直しました。
妻の向かい側を見ると、そこには誰もいなかったのです。
暗くて見えなかったわけでもなく、墓石があるだけでした。
私は恐ろしくなり、妻を連れて帰りました。
家に帰り妻を問い詰めても、琵琶の弾き語りを聴いていただけだとしか言いません。
妻は嘘をつくような人ではありませんし、私も妻を信じています。
どうか、事件の謎を解決してくださいませ。
常盤兵衛」
[水平線]
手紙を読んだ姐さんは頭を抱えてしまいました。
今までならある程度情報が揃っていたので推理することができたのですが、今回ばかりはわかりません。
琵琶法師は結局誰で、何のために墓場で会っていたのか───。
「姐さん、そんなに考えてたら脳みそがはち切れますよ」と雪華ちゃんに言われるほど考えましたが、分からないものは分かりません。
結局、分からなかったと伝えるための文を書き始めました。
「文をありがとうございます。
申し訳ございません。今回ばかりは私にも解決できませんでした。
奥様は何故琵琶法師の姿が見えていたのか、旦那様はどうして音色と歌声だけが聞こえたのか、何故墓場で会っていたのか……。謎が多すぎて、私には考えきれませんでした。
ご期待に添えず、申し訳ございません。
別の事案でしたら、解決できるかもしれません。
紅月」
「姐さんも、今回ばかりはお手上げですか」
雪華ちゃんが残念そうに呟きます。
「いやぁ……今回は情報が少なすぎた。それに、不可解な現象が主体の事件だったからね。私も人智を超えたことにゃお手上げさ」
姐さんが悔しそうに語ります。
「まっ!そんな顔しないで、姐さんも人の子ですからね。できないことの一つや二つくらいありましょう。ああそうだ、伊織さんのお店でお団子買ったんです。一緒に食べましょう」
雪華ちゃんに慰められながら、姐さんはお団子を頬張るのでした。