「朝霧花魁、いらっしゃいますか」
一階からそんな声が聞こえて、私は何事かと階段を駆け降りた。
「お初お目に掛かります。私、舞鶴屋の禿です。本日は涼暮花魁からの伝言をお伝えしに参りました」
目の前には、髪を肩につくくらいまでに切った女の子が真っ直ぐに立っていた。
その細い身体で耐えられるかも分からないような重そうな着物を着て、黄金色の帯を締めていた。
「あら、ありがとう。それで、なんて言ってたの?」
私はその女の子にお礼を言って、伝言の内容を尋ねた。
「その…「私はアンタを許す気は無い。あと、いちいち手紙送ってくんじゃないよ、返事書く気失せるんだからさァ」とのことです」
その言葉に、ずきりと心が疼いた。
「そう、わざわざありがとう。そうね、お礼と言ってはなんだけれど、お菓子をあげましょうか!」
あんころ餅を箱に入れて、その女の子に持たせた。
「ありがとうございます。それでは」
短く礼を言って、彼女は帰って行った。
彼女が帰ってから、私はその子の名前を聞き忘れたことを思い出した。
誰か知っていないかと、お付きの禿に尋ねてみた。
「ああ、夜桜のことですか?あの子は可哀想な身の上なんですよ。知らない内に親に売り飛ばされて、こんなところに……」
ここに来るのは皆、似たような境遇のはずなのに、誰もが彼女に同情した。
彼女…夜桜の容姿を思い出す。
肩につくくらいまでに切った黒髪、白粉を塗っているようには見えないが、透き通るように白い肌、紅をぼかしたような頬、まだ幼さの見える切長の目、紅をのせたように赤い蕾のような唇。
豪華絢爛な刺繍を施された着物、黄金色の帯。
彼女はどうして、あんなにも覚悟を決めた目をしていたのだろう。
別に、取って食われるわけでもないというのに。
まるで、死を目の当たりにしたかのような……。
私には理解の及ばぬ存在なのだろうか。
見た目はまだ七つか八つになったばかりにしか見えないというのに。
考えるだけ無駄なのだろうか。
もう少しだけ、夜桜について知りたいという欲求が湧いてきた。
妹から返事は来ないだろうが、一度聞いてみよう。
[漢字]夜桜[/漢字][ふりがな]あの子[/ふりがな]について。
一階からそんな声が聞こえて、私は何事かと階段を駆け降りた。
「お初お目に掛かります。私、舞鶴屋の禿です。本日は涼暮花魁からの伝言をお伝えしに参りました」
目の前には、髪を肩につくくらいまでに切った女の子が真っ直ぐに立っていた。
その細い身体で耐えられるかも分からないような重そうな着物を着て、黄金色の帯を締めていた。
「あら、ありがとう。それで、なんて言ってたの?」
私はその女の子にお礼を言って、伝言の内容を尋ねた。
「その…「私はアンタを許す気は無い。あと、いちいち手紙送ってくんじゃないよ、返事書く気失せるんだからさァ」とのことです」
その言葉に、ずきりと心が疼いた。
「そう、わざわざありがとう。そうね、お礼と言ってはなんだけれど、お菓子をあげましょうか!」
あんころ餅を箱に入れて、その女の子に持たせた。
「ありがとうございます。それでは」
短く礼を言って、彼女は帰って行った。
彼女が帰ってから、私はその子の名前を聞き忘れたことを思い出した。
誰か知っていないかと、お付きの禿に尋ねてみた。
「ああ、夜桜のことですか?あの子は可哀想な身の上なんですよ。知らない内に親に売り飛ばされて、こんなところに……」
ここに来るのは皆、似たような境遇のはずなのに、誰もが彼女に同情した。
彼女…夜桜の容姿を思い出す。
肩につくくらいまでに切った黒髪、白粉を塗っているようには見えないが、透き通るように白い肌、紅をぼかしたような頬、まだ幼さの見える切長の目、紅をのせたように赤い蕾のような唇。
豪華絢爛な刺繍を施された着物、黄金色の帯。
彼女はどうして、あんなにも覚悟を決めた目をしていたのだろう。
別に、取って食われるわけでもないというのに。
まるで、死を目の当たりにしたかのような……。
私には理解の及ばぬ存在なのだろうか。
見た目はまだ七つか八つになったばかりにしか見えないというのに。
考えるだけ無駄なのだろうか。
もう少しだけ、夜桜について知りたいという欲求が湧いてきた。
妹から返事は来ないだろうが、一度聞いてみよう。
[漢字]夜桜[/漢字][ふりがな]あの子[/ふりがな]について。