忌まわしい。
許さない。
[漢字]吉原[/漢字][ふりがな]この世界[/ふりがな]で生きていくには、太客を捕まえるしかないのに。
それなのに、あいつが奪った。
私のお客なのに。
恨めしい。許さない。
爪が食い込んで血が出るくらい、強く手を握り締めた。
気を落ち着かせようと、お付きの禿にお茶を入れさせて一気に飲み干した。
それでも気は収まらなくて、廊下に飛び出して喚いてしまった。
「どうして?!どうして私じゃないの?!」
部屋の中から禿が飛び出してきて、私の背中をさすりながら「大丈夫ですよ、お客様も涼暮姐さんのところに必ず帰ってきますよ」と言ってくれた。
客や他の遊女が部屋から顔を出してこちらの様子を伺っていた。
好奇の視線に耐えられなくて、部屋に引っ込んだ。
部屋に入る直前、一人の禿と目が合った。
冷たく、突き刺すような視線だった。
「お前と朝霧花魁を比べるだなんて、愚鈍の極みだ」と言わんばかりの目つきでこちらを見ていた。
否、睨んでいると言った方が正しかった。
暗い部屋の中、行燈を灯すこともせず、一人思考を巡らせた。
私とあいつの何が違う?
京都から来た朝霧は江戸に来ても京都での作法を守り続けていた。
その姿が、新しい物好きな江戸っ子に受けたのだろう。
だとしても、あの太客は江戸っ子の花魁が一番好きだと言っていた。
だから、私は江戸の花魁の典型例を目指したってのに。
あいつに惚れるだなんて。
朝霧から、また手紙が届いた。
「ごめんなさい。あなたのところのお客様が、昨日私のところに来たの。言い訳がましいけれど、決して私が誑かしたりしたわけではないけど、あなたはきっと傷ついたでしょうから、時間があれば会って謝りたい。何度謝ったって許してはくれないでしょう。本当にごめんなさい」
……私はこいつのこんなところが嫌いなのだ。
自分は悪くないのに、まるで酷いことをしたかのように謝り続ける。
こうもされると、私を責め立てられているようで苛立つ。
返事が来ないのを分かっていながら、何度も何度も手紙を送ってくる。
読むには読むけど、返事を送る気は全く無かった。
手紙を読み終えて、折りたたんで箱に仕舞う。
返事を送ろうと筆を取っても、書く気は起きなかった。
返事の文を書く気が無くなって筆を置くたび、心を締め付けるのはなんなんだろうか。
許さない。
[漢字]吉原[/漢字][ふりがな]この世界[/ふりがな]で生きていくには、太客を捕まえるしかないのに。
それなのに、あいつが奪った。
私のお客なのに。
恨めしい。許さない。
爪が食い込んで血が出るくらい、強く手を握り締めた。
気を落ち着かせようと、お付きの禿にお茶を入れさせて一気に飲み干した。
それでも気は収まらなくて、廊下に飛び出して喚いてしまった。
「どうして?!どうして私じゃないの?!」
部屋の中から禿が飛び出してきて、私の背中をさすりながら「大丈夫ですよ、お客様も涼暮姐さんのところに必ず帰ってきますよ」と言ってくれた。
客や他の遊女が部屋から顔を出してこちらの様子を伺っていた。
好奇の視線に耐えられなくて、部屋に引っ込んだ。
部屋に入る直前、一人の禿と目が合った。
冷たく、突き刺すような視線だった。
「お前と朝霧花魁を比べるだなんて、愚鈍の極みだ」と言わんばかりの目つきでこちらを見ていた。
否、睨んでいると言った方が正しかった。
暗い部屋の中、行燈を灯すこともせず、一人思考を巡らせた。
私とあいつの何が違う?
京都から来た朝霧は江戸に来ても京都での作法を守り続けていた。
その姿が、新しい物好きな江戸っ子に受けたのだろう。
だとしても、あの太客は江戸っ子の花魁が一番好きだと言っていた。
だから、私は江戸の花魁の典型例を目指したってのに。
あいつに惚れるだなんて。
朝霧から、また手紙が届いた。
「ごめんなさい。あなたのところのお客様が、昨日私のところに来たの。言い訳がましいけれど、決して私が誑かしたりしたわけではないけど、あなたはきっと傷ついたでしょうから、時間があれば会って謝りたい。何度謝ったって許してはくれないでしょう。本当にごめんなさい」
……私はこいつのこんなところが嫌いなのだ。
自分は悪くないのに、まるで酷いことをしたかのように謝り続ける。
こうもされると、私を責め立てられているようで苛立つ。
返事が来ないのを分かっていながら、何度も何度も手紙を送ってくる。
読むには読むけど、返事を送る気は全く無かった。
手紙を読み終えて、折りたたんで箱に仕舞う。
返事を送ろうと筆を取っても、書く気は起きなかった。
返事の文を書く気が無くなって筆を置くたび、心を締め付けるのはなんなんだろうか。