逆花火
「ヒュゥー、ドンッ」
花火の咲く音が美しい夜空に響く。
夏祭りの真っ只中。
ここに来ている人たちは皆一斉に足を止め、空の方に視線を向けた。
赤、青、つつじ色、黄金色。
光り輝いて、私たちを照らした。
一緒に来ている彼は目を大きく見開いて花火を見つめていた。
「綺麗でしょ、ここの花火。この町の名物なんだよ」
少し得意げに説明すると、彼はこちらを向いて興味深げな反応を見せた。
「へえ、そうなんだ!素敵だなぁ」
私と彼は中学の同級生。
彼は最近この町に引っ越してきたばかりで、ここについては何も知らなかった。
親の都合で越してきて、急に学校に入れられたら困惑するだろうし、なにより友達ができるかの不安が大きいはずだ。
上手くクラスメイトと馴染めなかった彼に、私は声をかけたのだ。
そして、「町の人と仲良くなるため」と称し、彼を夏祭りに連れ出した。
彼は目を輝かせて夏祭りを随分楽しんでいる様子だった。
実を言うと、私は初めて彼に会った瞬間一目惚れしてしまったのだ。
彼の見た目、所作、声全てが私の理想通りだった。
何が何でも彼に近づきたくて無理を言った。
花火に目を輝かせ、屋台のご飯を頬張り幼い笑顔を浮かべる彼に更に惹かれてしまった。
……やはり今日にしよう。
学校でも祭りをやっていてよかった。
「ねえ、今日うちの学校でもお祭りやってるんだって!ちょっと覗いてみようよ」
彼に声をかける。
「いいね。楽しそう。さ、行こ!」
そう言って私に手を差し出してくれた。
嬉しさと照れが入り混じって少し熱を帯びた顔を少し隠しながら彼の手を取った。
学校の校舎は熱気を帯びていて、少し暑苦しさを覚える程だった。
彼の手を引いて屋上に向かった。
「ね、ねぇ…。本当に入っていいの?」
不安げな彼に無言で笑いかけ、腕をくいっと少し引いた。
深い緑の浴衣の裾が少し揺れた。
屋上に辿り着き、重い戸を開け、外の涼しい風を浴びる。
扉の近くにある彼に手招きしてこちらに来させた。
これから何が起こるのかわからず困惑する彼に心の底から笑いかけた。
「ね、私が最後に打ち上げる花火、よく見といてね」
言葉の意味を理解していない彼を横目に、私は柵の向こう側に立った。
「逆花火。逆さに咲く花火のこと言うんだけどね、他の意味もあるんだよ。知ってた?今から、私が教えたげる。人生で一回しか教えらんないから、よぉく目に焼き付けとくんだよ」
それだけ言うと、私は満足した。
大切な人の記憶に残れるのなら、私は幸せ者だ。
後ろに倒れこみ、ふわりと風を感じた。
徐々に速くなる風を感じつつ、夜空を見上げた。
青と紫の混ざった、星の輝く空。
そこに、一輪の花火が凛と咲いた。
花火の咲く音が美しい夜空に響く。
夏祭りの真っ只中。
ここに来ている人たちは皆一斉に足を止め、空の方に視線を向けた。
赤、青、つつじ色、黄金色。
光り輝いて、私たちを照らした。
一緒に来ている彼は目を大きく見開いて花火を見つめていた。
「綺麗でしょ、ここの花火。この町の名物なんだよ」
少し得意げに説明すると、彼はこちらを向いて興味深げな反応を見せた。
「へえ、そうなんだ!素敵だなぁ」
私と彼は中学の同級生。
彼は最近この町に引っ越してきたばかりで、ここについては何も知らなかった。
親の都合で越してきて、急に学校に入れられたら困惑するだろうし、なにより友達ができるかの不安が大きいはずだ。
上手くクラスメイトと馴染めなかった彼に、私は声をかけたのだ。
そして、「町の人と仲良くなるため」と称し、彼を夏祭りに連れ出した。
彼は目を輝かせて夏祭りを随分楽しんでいる様子だった。
実を言うと、私は初めて彼に会った瞬間一目惚れしてしまったのだ。
彼の見た目、所作、声全てが私の理想通りだった。
何が何でも彼に近づきたくて無理を言った。
花火に目を輝かせ、屋台のご飯を頬張り幼い笑顔を浮かべる彼に更に惹かれてしまった。
……やはり今日にしよう。
学校でも祭りをやっていてよかった。
「ねえ、今日うちの学校でもお祭りやってるんだって!ちょっと覗いてみようよ」
彼に声をかける。
「いいね。楽しそう。さ、行こ!」
そう言って私に手を差し出してくれた。
嬉しさと照れが入り混じって少し熱を帯びた顔を少し隠しながら彼の手を取った。
学校の校舎は熱気を帯びていて、少し暑苦しさを覚える程だった。
彼の手を引いて屋上に向かった。
「ね、ねぇ…。本当に入っていいの?」
不安げな彼に無言で笑いかけ、腕をくいっと少し引いた。
深い緑の浴衣の裾が少し揺れた。
屋上に辿り着き、重い戸を開け、外の涼しい風を浴びる。
扉の近くにある彼に手招きしてこちらに来させた。
これから何が起こるのかわからず困惑する彼に心の底から笑いかけた。
「ね、私が最後に打ち上げる花火、よく見といてね」
言葉の意味を理解していない彼を横目に、私は柵の向こう側に立った。
「逆花火。逆さに咲く花火のこと言うんだけどね、他の意味もあるんだよ。知ってた?今から、私が教えたげる。人生で一回しか教えらんないから、よぉく目に焼き付けとくんだよ」
それだけ言うと、私は満足した。
大切な人の記憶に残れるのなら、私は幸せ者だ。
後ろに倒れこみ、ふわりと風を感じた。
徐々に速くなる風を感じつつ、夜空を見上げた。
青と紫の混ざった、星の輝く空。
そこに、一輪の花火が凛と咲いた。
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