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偏愛

#6

球体関節人形ーーー鈴鹿 節華「スズカセツカ」

人形作家。
私の職業。
オーダーされた人形を作る。
マニアの方からビスク・ドールのように陶器で作られたものを作って欲しいと頼まれたり、孫のプレゼント用にと縫いぐるみのような柔らかい人形を作って欲しいとの注文もよく入る。

職業上、オーダーされた物は基本作るが、時々不思議なオーダーが入ったりする。
一番驚いたのは、「アナベル人形と同じものを作ってくれ」と言われた時だ。
まさかこれを再現しようとする人がいるとは思っていなかった。
オーダー通り一応作ったが。








今思い出せば、私が人形作家になった理由はとある人形のおかげだった。
私は高校生の時イラストレーター志望だったので美術部に入部していた。
美術部の活動でデッサンをした時球体関節人形を使用したのだが、人間に似ているのに関節の部分が不完全で人間になりきれなかったナニカのような人形に魅了されてしまった。


それ以来、私はイラストレーターではなく人形作家になることを決意した。
今は、その夢を叶えて静かに人形を作っている。
家には球体関節人形が大量にある。
別にデッサンをするわけでも、何かの装飾をするわけでもなく、ただただ集めて好きな時に眺めるだけだった。
たまに私も作ってみようかと考えるが、どうしても本気で作りたいとは思えなかった。

自分でも、何故作りたいと思えないのか不思議だった。







ある日、自宅に中学時代からの友人を招いた。
「やっぱり人形作家なら人形いっぱいあるの?」と聞いてきたので、「あるよ。基本オーダーされたやつ作ってるけど、オリジナルの作品も作ってるよ。家にあるやつは発売前のやつとか参考にしようとして買ったやつとか色々だね」と答えた。
「へえ〜。人形作家って忙しいの?人形いっぱいあると呪われそうで怖いなぁ…」と言っていたので、「別に怖くはないよ。怖いくらい忙しいことはあるけどね」

冗談混じりで答えると、友人は「なるほどなぁ」と言いながらしげしげとガラスケースに入った人形を眺めていた。

急に友人は私の後ろの一点を見つめて「え」と小さな声を上げた。
私が後ろを振り返ると、部屋のドアが少しだけ開いていた。
あの部屋には私が今まで集めてきた球体関節人形が大量に置いてあった。
デッサンに使うような物から等身大のものまで。

友人は真っ青な顔で「何…あれ」と言っていた。
私の趣味がバレたらまずい。
「ああ、あれ試作品だよ。お客さんから注文入った時に備えて練習で作ってるの」
必死に取り繕って、その場は何とかやり過ごした。



その後はあまり会話が続かず、一時間もせずに友人は帰ってしまった。
帰り際に、私は彼女にこう言った。
「ねえ。あの部屋のこと、他の人には言っちゃダメだからね?」
彼女は青白い血の気の失せた顔でこくりと頷いた。
「よかった。じゃあ、またおいで!いつでも大歓迎だよ」



友人が帰ってから私はあの部屋の扉を開けて、人形を一つ取り出した。
眺めながら人形を作って、完成したらお客さんに完成した旨を伝える。
私の、大切な大切な人形たち。
絶対に手放したりしないからね。

2024/11/17 11:51

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
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