刃。
鋭く肉を切り裂き、鈍く光る。
俺はその魔力に魅せられてしまった。
本来ならば刀の刃が望ましいが、普段は包丁で我慢していた。
今、俺の腕の内側には包丁で切った傷がいくつも並んでいる。
俺自身の欲望を満たす為に自分で切ったものだが、人に見られては面倒なことになりそうなので人前では腕の内側を見せないようにしていた。
まるで細い赤い糸のように何本も並んでいて、側から見たら異様だろう。
でも、俺はこれで満足している。
俺を魅了したものを使って、俺に印を刻み込む。
愛しているという印を。
思い返せば、きっかけはとても些細なことだった気がする。
中二の時に俺の学年では「リスカ」や「オーバードーズ」が流行っていた。
よく病みアピしたがっている女子がストーリーにリスカをしたフリやオーバードーズをしたフリをして写真を載せていたのを思い出す。
厨二病男子の心もくすぐられたのか、男子も真似するようになった。
その異常な「お遊び」が教師にばれて、学年集会が開かれた。
その時のきつ〜いお説教でそのお遊びは収まったと思われていたが、実際は教師の目の届かないところでずっと行われていた。
俺もその遊びにハマって、包丁でよく手首を切っていた。
鋭く鈍く光る刃に、赤黒い鮮血がほんのりとこびりついている。
その光景にぞくりときた。
当時、どうしてそう感じたのか分からなかったが、今なら分かる。
興奮だ。よく研がれた刃が白い肌をぷつり、ぷつりと切り裂いて、どす黒い血が包丁についている。
その光景に興奮していたのだ?
カッターで切るときはもっと興奮した。
包丁に比べて切りやすさは劣るが、じわじわと切れていく感覚が俺の情欲を刺激した。
包丁と違って引っ掻き傷のようなものが多くできたが、それはそれで典型的な感じがあって嫌いでは無かった。
オーバードーズは友人に誘われて一度だけしてみたものの、薬を喉の奥に無理矢理押し込んで、胃に詰め込むような圧迫感が不快で、もう二度とやらないと決めた。
俺は学校で何か嫌なことが起こるたびに、包丁でリスカした。
刃を当てた手首に自分の無力さ、愚かさ、幼さへの恨みを込めて、強く引いた。
思いの外深く切れてしまって、俺は少し焦った。
親にばれたら終わりだ。
手首を伝う血を布巾で拭いながら、俺は傷を隠す方法をぐるぐると考えていた。
いつまでもいつまでも、刃で付いた傷のことが頭の中をぐるぐると巡り続けた。
傷がじんじんと痛み、何も考えられなくなっていった。
やはりあんなことはするべきでは無かったのだろうか?
そう思うのはよそう。
俺はいつまでも、刃を愛しているし、それでついた傷だって愛している。
鋭く肉を切り裂き、鈍く光る。
俺はその魔力に魅せられてしまった。
本来ならば刀の刃が望ましいが、普段は包丁で我慢していた。
今、俺の腕の内側には包丁で切った傷がいくつも並んでいる。
俺自身の欲望を満たす為に自分で切ったものだが、人に見られては面倒なことになりそうなので人前では腕の内側を見せないようにしていた。
まるで細い赤い糸のように何本も並んでいて、側から見たら異様だろう。
でも、俺はこれで満足している。
俺を魅了したものを使って、俺に印を刻み込む。
愛しているという印を。
思い返せば、きっかけはとても些細なことだった気がする。
中二の時に俺の学年では「リスカ」や「オーバードーズ」が流行っていた。
よく病みアピしたがっている女子がストーリーにリスカをしたフリやオーバードーズをしたフリをして写真を載せていたのを思い出す。
厨二病男子の心もくすぐられたのか、男子も真似するようになった。
その異常な「お遊び」が教師にばれて、学年集会が開かれた。
その時のきつ〜いお説教でそのお遊びは収まったと思われていたが、実際は教師の目の届かないところでずっと行われていた。
俺もその遊びにハマって、包丁でよく手首を切っていた。
鋭く鈍く光る刃に、赤黒い鮮血がほんのりとこびりついている。
その光景にぞくりときた。
当時、どうしてそう感じたのか分からなかったが、今なら分かる。
興奮だ。よく研がれた刃が白い肌をぷつり、ぷつりと切り裂いて、どす黒い血が包丁についている。
その光景に興奮していたのだ?
カッターで切るときはもっと興奮した。
包丁に比べて切りやすさは劣るが、じわじわと切れていく感覚が俺の情欲を刺激した。
包丁と違って引っ掻き傷のようなものが多くできたが、それはそれで典型的な感じがあって嫌いでは無かった。
オーバードーズは友人に誘われて一度だけしてみたものの、薬を喉の奥に無理矢理押し込んで、胃に詰め込むような圧迫感が不快で、もう二度とやらないと決めた。
俺は学校で何か嫌なことが起こるたびに、包丁でリスカした。
刃を当てた手首に自分の無力さ、愚かさ、幼さへの恨みを込めて、強く引いた。
思いの外深く切れてしまって、俺は少し焦った。
親にばれたら終わりだ。
手首を伝う血を布巾で拭いながら、俺は傷を隠す方法をぐるぐると考えていた。
いつまでもいつまでも、刃で付いた傷のことが頭の中をぐるぐると巡り続けた。
傷がじんじんと痛み、何も考えられなくなっていった。
やはりあんなことはするべきでは無かったのだろうか?
そう思うのはよそう。
俺はいつまでも、刃を愛しているし、それでついた傷だって愛している。