文字サイズ変更

愛情人形

私は幸せ。
夫と高校生の一人娘。
娘は反抗期なのか、ここ最近口を聞いてくれないけれどね。
私は夫と娘のために働いて、料理をして、洗濯をして、掃除をこなす。
そんな私を娘は化け物を見るかのような目で見てくる。
ある日、娘に「どうしてお母さんをそんな目で見るの?悲しいなぁ」と聞くと、娘は面倒臭そうな顔をしながら私にこう言った。
「お母さんさぁ…お父さんに尽くし過ぎなんじゃないの?そりゃ色々する気持ちは分かるけどさ…流石におかしいよ?なんでもかんでもお父さんの好みに合わせてさ、自分がないの?」
その言葉に、私は深く傷ついたと同時に、この子は何も分かっていない、そう思った。









俺の妻は、気が狂っている。
付き合い始めの頃は、「俺の好みをよく分かってくれてるな」としか思ってなかった。
同棲するようになってからは、こいつの異様なまでの従順さに鳥肌が立った。
俺が友人と電話してる時、何気なく「ボブ好きなんだよな〜」と言ったら、あいつは長かった髪をバッサリ切ってしまった。そして、笑顔で俺に言った。
「見て!これで、貴方好みになったでしょ?」
結婚してからも、異常さは変わらなかった。
料理の味が少し濃いと言えば料理を全部捨てて新しいものを作り直す。
服装が気に入らないと言えばどれだけ時間をかけても俺の好みに合わせた服を着てくる。
正直言って気味が悪くて仕方ない。
娘もそんな妻を気味悪がって近づかなかった。










私は、自分の母親が大嫌いだった。
肩につくくらいに伸ばした、艶のない、白髪の混じった不潔にしか見えない髪、安っぽい花柄のスカートに、古くなって毛玉だらけになったサーモンピンクのカーディガンに、シミだらけの顔。
そして、その汚い顔に浮かべる、気味の悪い笑顔。
気色が悪いほどに口角をめいっぱい吊り上げて、父に愛想を振りまく。
私は母を異常者だとしか思ってなかった。
幼い頃から、父に笑顔を振りまいて、全て父の好みに合わせて。
父がどんな無理を言っても、「はぁーい、分かりました」と間伸びした声で実行しようとする。
まるで人形のようだ。
父からの愛に飢えた、心のない人形。
私はそんな不気味な母と口を聞かなかった。
だって、あんな気持ち悪い人と話したい人なんているの?
父も、母のことを気味悪く思っているようで、母とは必要最低限の会話しか交わさなかった。






愛情人形。
個性もなく、誰かを模倣することしかできなかった人間の末路。
誰かに合わせることでしか、自分を表現できない。
見知らぬ誰かの真似をして、ままごとのような生活で自尊心を埋める。




























あなたも、そうでしょ?

2024/10/05 22:16

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
コメント

クリップボードにコピーしました

この小説につけられたタグ

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は月町 桔梗さんに帰属します

TOP