宵田は苦悩していた。
手元には招待状。
何度も招待状をひらひらさせながら、宵田は紙と睨めっこしていた。
この招待状は古い友人から届いたもので、友人は近くに結婚式を挙げるらしく、宵田にも来て欲しいとのことで招待状を送ったらしい。
しかし、友人の結婚は宵田にとってやや苦いことであった。
実を言うと、友人の結婚相手は宵田が学生時代に恋した相手───要は初恋の人なのだ。
宵田は過去の恋や失敗を延々と引きずるタイプの男だ。
本来ならば旧友の幸せを笑顔で祝いたい。
初恋の人の幸せだって、もちろん喜びたい。
しかし、甘く苦い心はずっとまとわりついてきた。
[水平線]
「───最後に、結婚おめでとう!幸せになれよコノヤロー‼︎」
宵田は友人代表スピーチを終え、テーブルに戻った。
「ナイススピーチ!にしても、お前悲しくねぇの?好きだった子が友達と結婚とか」
同じ席の友人が笑う。
にやにやとしながら宵田のグラスに酒を注ぐと、自分のグラスにも酒を注ぎ、一気に飲み干した。
宵田は勢いよく酒を喉に流し込み、「ああ、悲しいさ」と呟いた。
「でも友達の幸せを祝うのが、俺にできることなんだよ」
[水平線]
結婚式の帰り、宵田は土産片手にまたバーに足を運んだ。
マスターはいつものように微笑み、「ご注文は?」と尋ねてきた。
「マスター、俺は、器の小さい男なんでしょうか」
宵田は小さな声で尋ねた。
マスターは優しく話を聞いてくれた。
「いいえ、お客様。初めての恋焦がれたお相手のことを忘れられないのは、ごく当たり前のことでございます。それほどあなたはお相手を愛していらっしゃったということではありませんか?」
子供に噛んで含めるように言うような声で、マスターは言った。
「もし心からのお祝いができずとも、表面で喜んでいれば、それで良いのです」
マスターはシェーカーの蓋を開け、氷を入れ始めた。
そこへペパーミントリキュール、ホワイトカカオリキュール、生クリームを入れ、優しくシェイクした。
カクテルグラスに注がれたのは、とろりとした鮮やかな緑のカクテルだった。
「グラスホッパーでございます」
宵田が一口含むと、チョコミントによく似た味がした。
「グラスホッパーは「喜び」というカクテル言葉を持ちます。お客様がご友人の幸せを、心から祝える日が来るのをお待ちしていますよ」
マスターは目尻を下げて笑った。
手元には招待状。
何度も招待状をひらひらさせながら、宵田は紙と睨めっこしていた。
この招待状は古い友人から届いたもので、友人は近くに結婚式を挙げるらしく、宵田にも来て欲しいとのことで招待状を送ったらしい。
しかし、友人の結婚は宵田にとってやや苦いことであった。
実を言うと、友人の結婚相手は宵田が学生時代に恋した相手───要は初恋の人なのだ。
宵田は過去の恋や失敗を延々と引きずるタイプの男だ。
本来ならば旧友の幸せを笑顔で祝いたい。
初恋の人の幸せだって、もちろん喜びたい。
しかし、甘く苦い心はずっとまとわりついてきた。
[水平線]
「───最後に、結婚おめでとう!幸せになれよコノヤロー‼︎」
宵田は友人代表スピーチを終え、テーブルに戻った。
「ナイススピーチ!にしても、お前悲しくねぇの?好きだった子が友達と結婚とか」
同じ席の友人が笑う。
にやにやとしながら宵田のグラスに酒を注ぐと、自分のグラスにも酒を注ぎ、一気に飲み干した。
宵田は勢いよく酒を喉に流し込み、「ああ、悲しいさ」と呟いた。
「でも友達の幸せを祝うのが、俺にできることなんだよ」
[水平線]
結婚式の帰り、宵田は土産片手にまたバーに足を運んだ。
マスターはいつものように微笑み、「ご注文は?」と尋ねてきた。
「マスター、俺は、器の小さい男なんでしょうか」
宵田は小さな声で尋ねた。
マスターは優しく話を聞いてくれた。
「いいえ、お客様。初めての恋焦がれたお相手のことを忘れられないのは、ごく当たり前のことでございます。それほどあなたはお相手を愛していらっしゃったということではありませんか?」
子供に噛んで含めるように言うような声で、マスターは言った。
「もし心からのお祝いができずとも、表面で喜んでいれば、それで良いのです」
マスターはシェーカーの蓋を開け、氷を入れ始めた。
そこへペパーミントリキュール、ホワイトカカオリキュール、生クリームを入れ、優しくシェイクした。
カクテルグラスに注がれたのは、とろりとした鮮やかな緑のカクテルだった。
「グラスホッパーでございます」
宵田が一口含むと、チョコミントによく似た味がした。
「グラスホッパーは「喜び」というカクテル言葉を持ちます。お客様がご友人の幸せを、心から祝える日が来るのをお待ちしていますよ」
マスターは目尻を下げて笑った。