「うう、やっぱ夜は嫌だなぁ……。近頃は野犬も多いって話だし、さっさと嫁さん連れて帰ろう」
前回姐さんにアドバイスをもらった旦那さんは、奥さんの後をつけてきました。
少し前には奥さんの姿が。
今すぐに連れ帰りたい気持ちを抑えて歩いていくと、不意に奥さんの姿が消えました。
旦那さんが慌てて辺りを見渡しますと、墓場の奥から奥さんの声が聞こえてきました。
奥さんの声をたどると、一人で墓場の中に座って笑っていると来たから驚きです。
奥さんの笑い声に重なり、平家物語の一節が聞こえてきました。
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」
その美しい声に、旦那さんも思わず引き込まれそうになりました。
歌声と同時に、琵琶の音色も聞こえてきます。
聞き惚れていると、はっとして自分の頬を叩きました。
「いけないいけない、俺は嫁さんを連れて帰らにゃならねぇんだ」
旦那さんは覚悟を決め、足を踏み出しました。
「おい初、帰るぞ!」
旦那さんが声をかけると、奥さんはゆっくりと振り向きますな。
「なんだいアンタぁ?あんたも聞いていきなよゥ、いい声だろ?」
奥さんの目はうつろで、今にも死にそうです。
旦那さんは肩を揺すります。
「おいっ、お前は誰と話してるんだ?」
「誰とって…この琵琶法師さんだよゥ」
決まってるじゃないのサ、と奥さんは笑いました。
前回姐さんにアドバイスをもらった旦那さんは、奥さんの後をつけてきました。
少し前には奥さんの姿が。
今すぐに連れ帰りたい気持ちを抑えて歩いていくと、不意に奥さんの姿が消えました。
旦那さんが慌てて辺りを見渡しますと、墓場の奥から奥さんの声が聞こえてきました。
奥さんの声をたどると、一人で墓場の中に座って笑っていると来たから驚きです。
奥さんの笑い声に重なり、平家物語の一節が聞こえてきました。
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」
その美しい声に、旦那さんも思わず引き込まれそうになりました。
歌声と同時に、琵琶の音色も聞こえてきます。
聞き惚れていると、はっとして自分の頬を叩きました。
「いけないいけない、俺は嫁さんを連れて帰らにゃならねぇんだ」
旦那さんは覚悟を決め、足を踏み出しました。
「おい初、帰るぞ!」
旦那さんが声をかけると、奥さんはゆっくりと振り向きますな。
「なんだいアンタぁ?あんたも聞いていきなよゥ、いい声だろ?」
奥さんの目はうつろで、今にも死にそうです。
旦那さんは肩を揺すります。
「おいっ、お前は誰と話してるんだ?」
「誰とって…この琵琶法師さんだよゥ」
決まってるじゃないのサ、と奥さんは笑いました。