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そこの賢い姐さんや。

#4

狐憑き事件──その3

店にあげてもらった雪華ちゃんは、ガチガチに緊張していて、口から心臓がこんにちはするまで秒読みでございます。
「そんなに緊張するな」と店主に言われましたが、未だ石像のように固まっています。
後ろには奥さんが立っていまして、心配そうに雪華ちゃんを見つめています。

雪華ちゃんを見かねたのか、奥さんがお茶を出してくれました。
雪華ちゃんは小さくお礼を言い、ゆっくりお茶を飲みまして、本題に入りました。
「あの、狐憑きに関するお話なのですが……」
「ああ、今から話すよ」



少々長いので要約しますが、事の発端は斜向かいの店の旦那さんが助けを求めてきたことなのだそうです。
旦那さんが「女房がおかしくなった」と騒いでいたらしく、話を聞くとこんなことだったのだとか。

助けを求めてくる数日前、旦那さんは神社へお参りに行ったのだそう。
その神社はお狐さんをお祀りしているらしく、油揚げを供えて帰ろうとしたら、足下にあった石像に気づかず蹴っ飛ばしてしまったらしく、急いで元に戻し、謝って帰ったらしいのです。

その日の夜、奥さんが熱を出してしまってしばらく熱が下がらなかったそうなのですが、やっと熱が下がったと思えば「人影が見える」と言い出す始末。
旦那さんビビリ散らかし、そのことを近くの知り合いに話したのだとか。


数日後、話をした知り合いの奥さんも「人が見える」と言い出し、それが連鎖して身の周りにおかしくなった人が増えたとのこと。

「なるほど……あの、一つお聞きしたいのですが、狐憑きに遭ったのは女性のみですか?」
雪華ちゃんの質問に店主は少し考え、頷きました。
雪華ちゃんは丁寧にメモを取り、お礼を言って店を出ました。







[水平線]



さて、店に戻る前に雪華ちゃんはお土産を買おうと思い立ち、菓子屋に寄ることにしました。

すたすたと歩き、伊織さんの店に向かいます。
店に近づくと、ぐったりしている伊織さんの姿がありました。

「ああ、暇だ」
客が来ないのか、随分とお暇な様子でございます。
雪華ちゃんが駆け寄ると、伊織さんはびっくりしまして、「どうしたんだ、ゆき」と声を絞り出します。

「家族にお菓子を買いたくて。おはぎを四ついただけますか?あんこだけを二つと、きなことごまを一つづつ。あと、お団子も。三色団子とみたらしを二本づつ」
雪華ちゃんの注文に、伊織さんは手早く箱に詰め、菖蒲色の風呂敷を取り出しました。
「これはおまけだ」
そう言って笑いながら、伊織さんは袋にあんこ玉を入れ、風呂敷に一緒にくるんでくれました。
「ありがとうございます!」
雪華ちゃんはお礼を言うと、遊郭へ戻りました。







[水平線]



「おお、おかえり。無事に帰って来れたんだねェ。私のお付きなだけあるよ」
姐さんに褒められて嬉しい雪華ちゃん。
「さァ、早く着替えな」
着物を着替えて髪を下ろし、姐さんに記録を手渡しました。

「おや?その風呂敷なんだい?」
姐さん、めざとく気づきます。
「お、お菓子を買ってきまして……」
「中身は……おっ、私の好きなみたらしじゃないか!よく気づいたね」
ここだけの話、姐さんは甘いものが大好物でございまして、客からの贈り物は基本甘いものでございます。

二人で甘いものを食べながら姐さんは記録をめくっていましたが、ふと手を止めまして一言「なるほどねぇ」
姐さんは雪華ちゃんを呼び、真相を話し始めました。
「これはあくまで私の考えだ。恐らく、狐憑きは集団心理だよ。石像蹴っ飛ばして嫁の体調が悪くなんてことありえない。ただの偶然だ。
しかし、旦那さんは祟りを信じたんだろう。
それと、嫁さんが「人影が見える」って言ったのは熱で旦那の姿が二重に見えたんだろう。体調治れば見えなくなるさ」

ここまで聞いて、雪華ちゃんは首をかしげます。
「集団心理であんな風になるんですか?」
そこだよ、と姐さんは声を低くします。

「集団心理ってのは恐ろしいもんだよ。お狐さんの像を蹴って嫁さんの具合悪くなって、その上人影が見えるようになったなんて言われたら怖いだろ?
人間、怖いものほど信じるんだよ。
自分もああなったら嫌だ、とかそんな心理と、普段少しやらかしたことが結びついて、今回の事件に繋がったんじゃないか?」

現代風に言いますと集団ヒステリーというやつでございます。
お狐さんの祟りに対する恐怖心から生まれたものでございますね。


姐さんは筆をとり、手紙を書き始めました。
そして小間使いの男に手紙を渡し、店主に手紙を渡すように伝えました。



こうして、狐憑き事件は幕を閉じました。
また次の事件でお会いしましょう。

2025/08/08 14:05

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
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花魁謎解き微グロ

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