文字サイズ変更

見据えた瞳のその先に

#3

月志乃

「ああ。愛おしゅうござりんすね」
月志乃は恍惚のため息をついた。

「あんなに顔を赤うして、固まっちまって。
すこうし悪戯を仕掛けただけだっていうのに、あの春滝さんにも、初心なところがあるもんなんでありんすねぇ」
月志乃は春滝の表情を思い出し、小さく口元だけで笑った。

「そうだ。春滝さんの様子でも見にきんしょうかね」
月志乃はすたすたと歩きながら、春滝の部屋へと向かった。








[水平線]



「春滝さん。いるかい?」
月志乃は襖に手をかけながら尋ねる。
何も返事はなくて、月志乃は不思議に感じた。
そのまま襖を勢いよく開けると、春滝が寝っ転がっていた。

「つ、月志乃?!部屋を開ける時は声をかけておくんなんしとあれほど……!」
「あちきは声をかけんしたよ。
しかし、返事がのうござりんしたものでありんすから。
心配になって戸を開けんした」

月志乃はあっけらかんとした表情で答える。
「だとしてもだめなものは……」
春滝はここまで言いかけて、月志乃の姿が無いことに気づいた。
「月志乃?」
呟いた瞬間、後ろから首筋に触れる温もりに驚いた。
「キャッ!驚かさないでおくんなんし!」
春滝が怒鳴ると、月志乃は春滝の肩に顎を乗せてにやにやと笑った。

「これ春滝さん。着物をはだけさせるんじゃありんせんよ。お客に見られたらどうするでありんすか?」
小言を言いながら、月志乃は春滝のはだけた着物の裾へ手を這わせた。

いよいよ恥ずかしさが頂点に達した春滝は、思わず強い口調で怒った。
「いい加減にしておくんなんし!まだ仕事中だというのに!
それに、こんなにはしたないことして恥ずかしゅうないんでありんすか?!」

月志乃は申し訳なさそうな表情をしながらも、悦びを隠しきれていない笑顔を見せた。
「失礼しんした。
それでは、あちきはこれで」
そう言うと、月志乃は部屋を後にした。



廊下を歩きながら、月志乃は心の中で呟いた。
「春滝さんは幼さが残って愛らしゅうござりんす。絶対に、あちきのものにしてみせんす」

2025/05/06 15:43

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
コメント

この小説につけられたタグ

花魁百合悲恋桔梗先生

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は月町 桔梗さんに帰属します

TOP