枝垂れ桜が滝のように咲き誇っている。
少し散歩をしていた春滝はその下をゆったりと歩いていた。
「いくら太客とは言え、なんだかねぇ……」
春滝は桜を見上げながら呟く。
遊女には太客が欠かせないが、春滝は自身の太客を良くは思っていないのだ。
「わっちを想ってくれているのは嬉しいけど、何だいあの目つきは。
わっちをお人形みたく扱って……あれだから禿も懐かないんでありんしょうに」
春滝のところに足繁く通うその客は金貸し業をしているため金持ちなのだが、いつでも春滝の肉体を求め、脳天から爪先まで嘗めまわすような目つきでこちらを見てくる。
春滝にとって、その客に会うことは不快で堪らないのだ。
「あんな客の相手してないで、とっととお[漢字]店[/漢字][ふりがな]たな[/ふりがな]に帰って月志乃に会いたいねぇ」
そう思って、はたと気づく。
「何故お付きの禿に会いたいと思うのではなく、わざわざ月志乃に会いたいと思うのだろう」
不思議と心の内がほんのり温かくなり、くすぐったくなった。
はしっと両手で頬を挟み、首をぶんぶんと横に振る。
「いけない、いけない。まさかわっちが……」
春滝は小走りで店に戻った。
[水平線]
「おや、おかえり。そんなに急いでどうしたのさ」
店に戻ると、月志乃が出迎えた。
そして、春滝の顔を見て「おや」と呟いた。
春滝の方にしずしずと歩み寄り、すうっと手を伸ばして春滝の額に触れた。
「なっ、何をするでありんすか?!」
「何って……顔が赤いから、熱でもあるのかと思いんしてね。
まあ、何とも無さそうで安心しんしたよ。」
月志乃は妖しく笑いながら答える。
「もうっ!次からこんなお遊びはやめておくんなんし!」
春滝が頬を膨らせながら怒ると、月志乃は笑った。
「ああ、そう怒らないで。
そう怒っては、せっかくの愛らしさが台無しでありんすよ」
そう言いながら月志乃は春滝の頬を撫でた。
春滝が頬を赤く染めながらぼんやりしている間に、ひらひらと手を振りながら、月志乃は二階へと戻っていった。
春滝は頬に触れながら、感情の名前を探し続けた。
少し散歩をしていた春滝はその下をゆったりと歩いていた。
「いくら太客とは言え、なんだかねぇ……」
春滝は桜を見上げながら呟く。
遊女には太客が欠かせないが、春滝は自身の太客を良くは思っていないのだ。
「わっちを想ってくれているのは嬉しいけど、何だいあの目つきは。
わっちをお人形みたく扱って……あれだから禿も懐かないんでありんしょうに」
春滝のところに足繁く通うその客は金貸し業をしているため金持ちなのだが、いつでも春滝の肉体を求め、脳天から爪先まで嘗めまわすような目つきでこちらを見てくる。
春滝にとって、その客に会うことは不快で堪らないのだ。
「あんな客の相手してないで、とっととお[漢字]店[/漢字][ふりがな]たな[/ふりがな]に帰って月志乃に会いたいねぇ」
そう思って、はたと気づく。
「何故お付きの禿に会いたいと思うのではなく、わざわざ月志乃に会いたいと思うのだろう」
不思議と心の内がほんのり温かくなり、くすぐったくなった。
はしっと両手で頬を挟み、首をぶんぶんと横に振る。
「いけない、いけない。まさかわっちが……」
春滝は小走りで店に戻った。
[水平線]
「おや、おかえり。そんなに急いでどうしたのさ」
店に戻ると、月志乃が出迎えた。
そして、春滝の顔を見て「おや」と呟いた。
春滝の方にしずしずと歩み寄り、すうっと手を伸ばして春滝の額に触れた。
「なっ、何をするでありんすか?!」
「何って……顔が赤いから、熱でもあるのかと思いんしてね。
まあ、何とも無さそうで安心しんしたよ。」
月志乃は妖しく笑いながら答える。
「もうっ!次からこんなお遊びはやめておくんなんし!」
春滝が頬を膨らせながら怒ると、月志乃は笑った。
「ああ、そう怒らないで。
そう怒っては、せっかくの愛らしさが台無しでありんすよ」
そう言いながら月志乃は春滝の頬を撫でた。
春滝が頬を赤く染めながらぼんやりしている間に、ひらひらと手を振りながら、月志乃は二階へと戻っていった。
春滝は頬に触れながら、感情の名前を探し続けた。