菖蒲屋の春滝と月志乃と言えば、江戸っ子なら知らない者はいなかった。
江戸っ子特有のド派手な化粧の春滝と、柔らかな雰囲気を纏った月志乃はまさに「月と太陽」だった。
そうは言っても二人はとても仲が良く、太客の話をよくしていた。
さて、春滝と月志乃の容姿について説明しよう。
春滝は凛々しい輪郭に、全体的にツンとした目鼻立ちだった。
高い鼻に切れ長の目尻を紅く縁取って、牡丹の花にも負けぬ色の口紅を塗っていた。
一方月志乃はと言うと、鼻が高いわけではなく、目は丸みを帯びていた。
確かに目元を縁取ってはいたが、桜色の紅も相まって優しげな印象を与えた。
また、月志乃は目が悪く、その時代には珍しい眼鏡をかけていた。
菖蒲屋はこんなに美人な花魁を二人も抱えてさぞ幸せだろうと思うのは少しお門違いだ。
何しろ、二人の花魁の予約を取ろうと毎日のように来る客の相手に楼主たちは必死なのだ。
そんな店の人間たちの様子を見て、二人は煙管を吸いながらけらけらといたずらっぽく笑っていた。
二人は話も上手く、禿達からも慕われていた。
「ねえ花魁、またあの話をしてよ」と言われれば、二人は十八番の話を出してくれる。
春滝は幼い頃に兄と蝉捕りに行った話を、月志乃は父に眼鏡をもらった時の話をしてくれた。
禿たちは大人しく座って話を聞いていた。
二人は話し終わると、決まってこう締めくくった。
「あの頃は楽しかったよ。今も楽しいけどね」
江戸っ子特有のド派手な化粧の春滝と、柔らかな雰囲気を纏った月志乃はまさに「月と太陽」だった。
そうは言っても二人はとても仲が良く、太客の話をよくしていた。
さて、春滝と月志乃の容姿について説明しよう。
春滝は凛々しい輪郭に、全体的にツンとした目鼻立ちだった。
高い鼻に切れ長の目尻を紅く縁取って、牡丹の花にも負けぬ色の口紅を塗っていた。
一方月志乃はと言うと、鼻が高いわけではなく、目は丸みを帯びていた。
確かに目元を縁取ってはいたが、桜色の紅も相まって優しげな印象を与えた。
また、月志乃は目が悪く、その時代には珍しい眼鏡をかけていた。
菖蒲屋はこんなに美人な花魁を二人も抱えてさぞ幸せだろうと思うのは少しお門違いだ。
何しろ、二人の花魁の予約を取ろうと毎日のように来る客の相手に楼主たちは必死なのだ。
そんな店の人間たちの様子を見て、二人は煙管を吸いながらけらけらといたずらっぽく笑っていた。
二人は話も上手く、禿達からも慕われていた。
「ねえ花魁、またあの話をしてよ」と言われれば、二人は十八番の話を出してくれる。
春滝は幼い頃に兄と蝉捕りに行った話を、月志乃は父に眼鏡をもらった時の話をしてくれた。
禿たちは大人しく座って話を聞いていた。
二人は話し終わると、決まってこう締めくくった。
「あの頃は楽しかったよ。今も楽しいけどね」