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異食章

#1

髪の毛

ああ、うるさい。
赤ん坊の泣き声がぎゃあぎゃあと耳をつんざく。
まだ生まれて一ヶ月ほどしかないこの子。
泣くくらいしか感情表現が無いのだろうけど、私にとっては苦痛以外の何者でも無い。


ふらふらと立ち上がり、寝室に閉じこもる。
足りない頭を必死で回転させながらベットに腰掛ける。
ここにいてもまだ泣き声が聞こえて発狂しそうだ。
イライラして髪の毛を乱雑に掴み、強く引きちぎる。
ぶつっと嫌な音を立てて髪の毛が抜け落ちた。
焦茶色の髪の束。銀色の白髪も混じってる。
髪の束を見つめ、口に運んだ。

じゃく、じゃく、じゃく。
いやな感じ。
じゃく、じゃく、じゃく。
なんの味もしない。
じゃく、じゃく、じゃく。
皮脂のにおいが汚らしい。

吐き出しそうになるのを堪えながら、ゆっくりと嚥下した。
ぞわりと喉を撫でる感触が気持ち悪い。
少し前、私は病院に連れて行かれた。
夫が私が髪を食べているところを見たから。
「ストレスですね。少し休んでください」と医者は言った。
でも夫は仕事で忙しいし、家族は頼れない。
私一人で、頑張るしかなかった。

私がどれだけ頑張っても赤ちゃんは泣き止まないし、私が泣きたくなってもなだめちゃくれない。
叫びたくなっても、赤ちゃんの声がそれを掻き消す。
何度も髪を引きちぎって口に運んだ。
嫌な感触が口の中を支配して、私を壊した。
今も、髪の毛を食いちぎっている。
赤ちゃんの泣き声が、虚しい部屋に響いた。
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2025/05/04 08:51

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
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