「日向君」
私が勝手につけたあだ名。
近所の原っぱに寝っ転がって日向ぼっこをしている男の子。
常に満足そうな表情を浮かべながら目を瞑っている。
多分、まだ小学校低学年くらい。
七、八歳くらいの見た目で、いつも紺色の短パンに薄黄色のTシャツを着ていた。
私から話しかけたことは無く、平日もいるにも関わらず不思議に思うことはなかった。
本名も知らないため、自分の中だけでも呼び名があったら楽しいかなと思い、「日向ぼっこしてるから[漢字]日向[/漢字][ふりがな]ヒナタ[/ふりがな]君でいいかな」という理由で日向君に決まった。
休みで暇な日はその野原に行って日向君を観察していた。
「親に構ってもらえないのかな」、「お友達はいないのかな」
そんな疑問ばかりが浮かんできた。
とはいえ私も学生なので、休みでも暇な日はそこまで多くなかった。
[水平線]
ある日曜日、私は意を決して日向君に話しかけてみることにした。
あの野原に行って、日向君を探した。
彼はいつも同じ場所にいるので探すのは容易かった。
日向君の隣に座って、一呼吸置いてから話しかけた。
「ねえ、君いつもここにいるけど、ここ好きなの?」
彼は目をうっすら開けてこちらに視線を向けた。
「うん。ここ、日向ぼっこにちょうどいいから。お日様の光浴びてると眠くなっちゃうんだ。お姉さんも好きなの?」
「私はちっちゃい頃ここでよく遊んでたの。鬼ごっこしたり、君みたいに日向ぼっこしたり」
そう答えると日向君は目を瞑って、「ふうん」とだけ言った。
「そういえば、名前、なんて言うの?」
会話に困った私は気になっていたことを聞いてみた。
「名前?」
不思議そうに聞き返された。
「そう、名前。なんて言うのかなって」
日向君は少し考え込むような仕草をした。
「覚えてないや」
参ってしまったように笑いながら、少しおどけた声音で言われた。
「そっかぁ……。じゃあさ、日向君って呼んでもいいかな?」
「うん、いいよ」
意外なほどにあっさりとした返事だった。
「ねえ。お姉さんって、お友達いる?」
唐突な質問に私は戸惑ってしまった。
「え…?いるけど、どうして?」
私がそう尋ねると、日向君は嬉しそうに笑った。
「お友達は多い?少ない?」
私は続けられた質問の意図を汲み取れなかった。
「うーん、どちらかと言うと少ない方かなぁ。あんまり大勢でわいわいするの苦手だし」
苦笑いすると、日向君は少し残念そうな顔をした。
「そっかぁ。じゃあ、僕と遊んでくれるのはお姉さんだけだね」
意味不明な言葉に私は嫌な予感がした。
「"遊んでくれるのはお姉さんだけ"ってどういうこと?」
すると、日向君は見たこともないくらいに口を吊り上げて笑った。
「だって……[漢字]死んでから[/漢字][ふりがな]あの世で[/ふりがな]遊んでくれるのはお姉さんだけなんだもん」
その不気味な発言に私は寒気がした。
「あの世って…どういうこと?!私だけってどうして?!」
喚き立てていると、日向君は呆れたような目で説明し始めた。
「お姉さん、お友達少ないんでしょ?それなら変に何人か連れてかないでお姉さんだけ連れてこうかなって。あの世ってのはね、僕、もう生きてないんだよ。何年も前に死んじゃって、それからずっと寂しいの」
自分がどんな目に遭うのか、想像しただけで恐ろしくなり、這う這うの体で逃げ出そうとした。
すると、髪を鷲掴みにされ、思わず転んでしまった。
「やっと一人じゃなくなる……」
口は裂けんばかり弧を描いていた。
いや、裂けていた。
口角が少しづつ切れて血が出ていて、私の髪を掴む腕にはあざと擦り傷があった。
「嫌だ…やめて、まだ、まだ死にたくない……。お願い、やめて、やめて……」
私の声は届かなかった。
[水平線]
「次のニュースです。先週、◯◯公園で15歳の女子高生が行方不明になりました。午前九時に家を出てから夜になっても帰って来ず、ご家族が警察に捜索願を提出しました。現在も、捜索は続いています。
行方不明になったのは鷹見高校一年、[漢字工藤 海月][/漢字][ふりがな]クドウ ミヅキ[/ふりがな]さん15歳、身長158cm、黒のTシャツにデニムを着用していました。工藤さんらしき人物を見かけた方は至急逾槫・亥キ晉恁隴ヲ縺ォ縺秘?」邨。荳九&縺??」
「海月…どこにいるの?」
私が勝手につけたあだ名。
近所の原っぱに寝っ転がって日向ぼっこをしている男の子。
常に満足そうな表情を浮かべながら目を瞑っている。
多分、まだ小学校低学年くらい。
七、八歳くらいの見た目で、いつも紺色の短パンに薄黄色のTシャツを着ていた。
私から話しかけたことは無く、平日もいるにも関わらず不思議に思うことはなかった。
本名も知らないため、自分の中だけでも呼び名があったら楽しいかなと思い、「日向ぼっこしてるから[漢字]日向[/漢字][ふりがな]ヒナタ[/ふりがな]君でいいかな」という理由で日向君に決まった。
休みで暇な日はその野原に行って日向君を観察していた。
「親に構ってもらえないのかな」、「お友達はいないのかな」
そんな疑問ばかりが浮かんできた。
とはいえ私も学生なので、休みでも暇な日はそこまで多くなかった。
[水平線]
ある日曜日、私は意を決して日向君に話しかけてみることにした。
あの野原に行って、日向君を探した。
彼はいつも同じ場所にいるので探すのは容易かった。
日向君の隣に座って、一呼吸置いてから話しかけた。
「ねえ、君いつもここにいるけど、ここ好きなの?」
彼は目をうっすら開けてこちらに視線を向けた。
「うん。ここ、日向ぼっこにちょうどいいから。お日様の光浴びてると眠くなっちゃうんだ。お姉さんも好きなの?」
「私はちっちゃい頃ここでよく遊んでたの。鬼ごっこしたり、君みたいに日向ぼっこしたり」
そう答えると日向君は目を瞑って、「ふうん」とだけ言った。
「そういえば、名前、なんて言うの?」
会話に困った私は気になっていたことを聞いてみた。
「名前?」
不思議そうに聞き返された。
「そう、名前。なんて言うのかなって」
日向君は少し考え込むような仕草をした。
「覚えてないや」
参ってしまったように笑いながら、少しおどけた声音で言われた。
「そっかぁ……。じゃあさ、日向君って呼んでもいいかな?」
「うん、いいよ」
意外なほどにあっさりとした返事だった。
「ねえ。お姉さんって、お友達いる?」
唐突な質問に私は戸惑ってしまった。
「え…?いるけど、どうして?」
私がそう尋ねると、日向君は嬉しそうに笑った。
「お友達は多い?少ない?」
私は続けられた質問の意図を汲み取れなかった。
「うーん、どちらかと言うと少ない方かなぁ。あんまり大勢でわいわいするの苦手だし」
苦笑いすると、日向君は少し残念そうな顔をした。
「そっかぁ。じゃあ、僕と遊んでくれるのはお姉さんだけだね」
意味不明な言葉に私は嫌な予感がした。
「"遊んでくれるのはお姉さんだけ"ってどういうこと?」
すると、日向君は見たこともないくらいに口を吊り上げて笑った。
「だって……[漢字]死んでから[/漢字][ふりがな]あの世で[/ふりがな]遊んでくれるのはお姉さんだけなんだもん」
その不気味な発言に私は寒気がした。
「あの世って…どういうこと?!私だけってどうして?!」
喚き立てていると、日向君は呆れたような目で説明し始めた。
「お姉さん、お友達少ないんでしょ?それなら変に何人か連れてかないでお姉さんだけ連れてこうかなって。あの世ってのはね、僕、もう生きてないんだよ。何年も前に死んじゃって、それからずっと寂しいの」
自分がどんな目に遭うのか、想像しただけで恐ろしくなり、這う這うの体で逃げ出そうとした。
すると、髪を鷲掴みにされ、思わず転んでしまった。
「やっと一人じゃなくなる……」
口は裂けんばかり弧を描いていた。
いや、裂けていた。
口角が少しづつ切れて血が出ていて、私の髪を掴む腕にはあざと擦り傷があった。
「嫌だ…やめて、まだ、まだ死にたくない……。お願い、やめて、やめて……」
私の声は届かなかった。
[水平線]
「次のニュースです。先週、◯◯公園で15歳の女子高生が行方不明になりました。午前九時に家を出てから夜になっても帰って来ず、ご家族が警察に捜索願を提出しました。現在も、捜索は続いています。
行方不明になったのは鷹見高校一年、[漢字工藤 海月][/漢字][ふりがな]クドウ ミヅキ[/ふりがな]さん15歳、身長158cm、黒のTシャツにデニムを着用していました。工藤さんらしき人物を見かけた方は至急逾槫・亥キ晉恁隴ヲ縺ォ縺秘?」邨。荳九&縺??」
「海月…どこにいるの?」