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彼女だけのピルエット

バレエ。
私が唯一、輝けるところ。
明るい舞台の上で、くるくると回る。
観客の歓声を聞きながら。
幼い頃に母と観に行ったバレエの舞台に魅せられて、私はバレリーナになりたいと思った。

私の在籍する高校では、バレエ部があった。
そこで私はバレエの腕を磨いた。
だけど、バレエ部には私より才能のある子が何人もいた。私には無いような才能を持つ子達が。

私は理想と現実に打ちひしがれながらも、頑張って部活を続けた。
でも、どうしても、踊れない。
どうしても彼女たちのように上手く踊れないのだ。
コーチ達は上手だと言うけれど、どうしても納得がいかなかった。

何もかも嫌になった。
上手く踊れない自分が嫌になった。
だから、そんな気持ちを振り払うように、同級生の男子と夜を過ごした。
周りは私を何も知らない少女だと思ってるけど、そんなのは夢見事だ。
私は何人もの人と夜を過ごした。

2年生になったある日、文化祭の出し物でバレエ部が「白鳥の湖」を披露することになった。
みんなプリマドンナになりたくて先輩にアピールしていた。私もその中の一人だった。
だけど、私は選ばれなかった。
代わりに、才能が全くないあの子が選ばれた。
先輩は「貴女がプリマドンナよ!頑張って!」と言っていた。あの子も「精一杯頑張ります!」と返事をしていた。

……羨ましい。
どうしてあの子が?私の方が上手なのに。綺麗に踊れるのに。
私はあの子に対して、妬みの感情が湧いてきた。
あんなに頑張って練習したのに。

本格的な練習が始まった。
プリマドンナのあの子はオデット姫を、私はオディールを演じることになった。
オディールの演技は、私に合っていた。

トウシューズを脱ぐ。
つま先を潰して履くから、指先がじくじくと痛む。
心が限界を迎えそうだった。いや、もう迎えていたのかもしれない。

文化祭の日がやってきた。
あの子は見事に、オデット姫を演じきった。
文化祭終わった後、私は一人で校舎に残り、屋上でぼんやりと考えていた。
どうして、あの子は選ばれたのか。
どうして、私は選ばれなかったのか。

ふと気づいた。
あの子は私に無いものを持っていた。
オデット姫の持つ、純粋さ。
人を妬み、何人もの人と夜を過ごした私には、無いものだった。

それに気づいた瞬間、チャイコフスキーが流れた気がした。

いつの間にか、私は白鳥の湖を踊っていた。

私が飛びつきたいほど望んでいた、オデット姫の振り付けを。

2024/10/16 21:00

月町 桔梗
ID:≫ 7r5tHLeuz1RfY
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