電車の窓から覗く景色は、相変わらず濃紺の夜空と降り続く雨だった。
列車の中は薄暗く、小さな電灯で灯りを灯しているような状態だった。
まばらにいる乗客は皆青白い顔をしていて、眺め続けていると気が触れてしまいそうだった。
真横には男性が座っていた。
ワックスで撫でつけた髪がほつれ、青白い顔の目元には隈があり、くたびれたスーツを着ていた。
無言でぐったりと下を向いたまま、緩んだネクタイを直そうともしなかった。
真正面にはセミロングの女性が座っていて、長いスカートに七分袖の服を着ていた。
その女性はずっと俯いており、顔は見えないがさめざめと泣く声が聞こえてきた。
斜向かいの男性は誰かを探すように目をきょろきょろさせながらぶつぶつと人の名前らしきことを呟いていて、目がひっきりなしに動いていた。
痩せ細った腕は血管が浮いていて、骨張った指がよく目立った。
ここにいるのは全員死者だ。
それだけは確信している。
何故なら、僕は確実に飛び降りたからだ。
僕は長野の出身で、高校卒業を機に上京して大学に進学した。
都会の人の多さに辟易してしまったものの、大学の友人や両親からのメッセージなどで心を保っていた。
大学卒業後、僕は中小企業に就職した。
しかし、ノルマがかなりキツく、同期は続々と辞めていった。
そんな中で辞めたら殺されかねない雰囲気を感じ取り、辞めるに辞められなかった。
僕の心は徐々に壊れていった。
ずっと読書が好きだったはずなのに、いつの間にか、本を手に取る気にもなれなかった。
とうとう耐えられなくなって、僕は会社が入っているビルの屋上から飛び降りた。
今でも、落ちた時の感覚は嫌というくらい鮮明に身体に刻みつけられている。
ふわりと身体が浮いて、次の瞬間には身体の中身がが全部浮き上がるような感覚があった。
段々と地面が近づくにつれて、五臓六腑から恐怖が湧き出してきた。
地面すれすれでやっと、「死にたくない」と思ってしまった。
願いも虚しく、僕は頭が潰れてしまった。
そのせいか、僕は今、この列車に乗っている。
浮世に囚われたままだ。
今なら、何故死にたくないと思ったか分かる。
死ぬのが怖かったからじゃない。
「夢を叶えられなかったから」だ。
昔は小説家を志していた。
読書をこよなく愛していた文学少年にとって、小説家というのは神に等しかった。
しかし、才能があるのはほんの一握り。
僕には才能がなかった。
だから、夢を捨てた。
それ故に、浮世から離れられないのだろう。
そんなことを脳内で巡らせていると、向かいの女性の泣き声が大きくなっているのに気づいた。
啜り泣く声が更に大きくなって、人の名前を呟いていた。
ごめんねと繰り返しながら、顔を覆って泣いていた。
不気味に思いながら、僕は目を閉じた。
列車の中は薄暗く、小さな電灯で灯りを灯しているような状態だった。
まばらにいる乗客は皆青白い顔をしていて、眺め続けていると気が触れてしまいそうだった。
真横には男性が座っていた。
ワックスで撫でつけた髪がほつれ、青白い顔の目元には隈があり、くたびれたスーツを着ていた。
無言でぐったりと下を向いたまま、緩んだネクタイを直そうともしなかった。
真正面にはセミロングの女性が座っていて、長いスカートに七分袖の服を着ていた。
その女性はずっと俯いており、顔は見えないがさめざめと泣く声が聞こえてきた。
斜向かいの男性は誰かを探すように目をきょろきょろさせながらぶつぶつと人の名前らしきことを呟いていて、目がひっきりなしに動いていた。
痩せ細った腕は血管が浮いていて、骨張った指がよく目立った。
ここにいるのは全員死者だ。
それだけは確信している。
何故なら、僕は確実に飛び降りたからだ。
僕は長野の出身で、高校卒業を機に上京して大学に進学した。
都会の人の多さに辟易してしまったものの、大学の友人や両親からのメッセージなどで心を保っていた。
大学卒業後、僕は中小企業に就職した。
しかし、ノルマがかなりキツく、同期は続々と辞めていった。
そんな中で辞めたら殺されかねない雰囲気を感じ取り、辞めるに辞められなかった。
僕の心は徐々に壊れていった。
ずっと読書が好きだったはずなのに、いつの間にか、本を手に取る気にもなれなかった。
とうとう耐えられなくなって、僕は会社が入っているビルの屋上から飛び降りた。
今でも、落ちた時の感覚は嫌というくらい鮮明に身体に刻みつけられている。
ふわりと身体が浮いて、次の瞬間には身体の中身がが全部浮き上がるような感覚があった。
段々と地面が近づくにつれて、五臓六腑から恐怖が湧き出してきた。
地面すれすれでやっと、「死にたくない」と思ってしまった。
願いも虚しく、僕は頭が潰れてしまった。
そのせいか、僕は今、この列車に乗っている。
浮世に囚われたままだ。
今なら、何故死にたくないと思ったか分かる。
死ぬのが怖かったからじゃない。
「夢を叶えられなかったから」だ。
昔は小説家を志していた。
読書をこよなく愛していた文学少年にとって、小説家というのは神に等しかった。
しかし、才能があるのはほんの一握り。
僕には才能がなかった。
だから、夢を捨てた。
それ故に、浮世から離れられないのだろう。
そんなことを脳内で巡らせていると、向かいの女性の泣き声が大きくなっているのに気づいた。
啜り泣く声が更に大きくなって、人の名前を呟いていた。
ごめんねと繰り返しながら、顔を覆って泣いていた。
不気味に思いながら、僕は目を閉じた。