「それじゃあ、いってきます」
黎人「レイト」は床に直で座っている由香「ユウカ」に声をかけた。
「由香、床にそのまま座らないでソファに座った方がいいんじゃない?」
「やあだ。ここあったかいもん」
そう言いながら由香はテディベアを抱きしめ直した。
赤いリボンを首に結んだテディベア。
由香は金茶色の柔らかい毛の肌触りが大好きだった。
これは黎人が与えたもので、「一人じゃ寂しいだろうから」と買ってきたものだった。
由香はいつも床暖房の効いた部屋の中で、テディベアと遊んで黎人が帰ってくるのを待っていた。
「ただいま。ごめんね、待ったでしょ?今ご飯作るからね」
黎人は由香に謝りながら夕飯の支度を始めた。
由香は床の上に転がった絵本のページをめぐり始めた。
「由香、できたよ。一緒に食べよう」
そう言いながら黎人はテーブルの上に食事を並べた。
ローストビーフ、シーザーサラダ、シチュー、キャロットラペ、バゲット。
全部由香の好きなものだった。
「おいしい?」
バゲットにシチューをのせながら黎人は尋ねた。
「うん。おいしい」
由香はローストビーフを口に詰め込みながらこくこくと頷いた。
黎人は嬉しそうに笑うと、グラスに入れたワイン一気にを飲み干した。
「由香は可愛いねぇ。ずっとこのまま成長しないでほしいくらいだよ」
注ぎ直したワインをゆったりと回しながら黎人は恍惚とした表情で言った。
まるで偶像を崇拝するみたいに。
「わたしもいつかおとなになっちゃうかもしれないから、ずっとはむずかしいかなぁ」
由香はいかにも真面目な顔で答えた。
「でも、れいとさんがずっとこのままでいてほしいっておもうなら、このままでいられるかもしんないね」
由香はにこにこと笑った。
「そっかぁ……。じゃあ、僕がどうにかしてあげるよ。ずっとこのままでいられるように。一生僕といられるように」
黎人は妖しげな笑みを浮かべると、少し待つように由香に言った。
黎人はにこやかに由香を呼んだ。
「由香、おいで」
甘ったるい猫撫で声だった。
「んー?なあに?」
「おいで。一緒に遊ぼう」
遊ぼうという言葉に誘われて、由香は期待に胸を膨らませながら駆け寄った。
「これを飲んでから遊ぼうか」
そう言いながら、黎人は透明な液体を差し出した。
由香は不思議そうな顔をしながらその液体を口に含んだ。
「ん!あまい!」
喜びながら由香は液体を飲み干した。
……ケホッ。
ゴホッ、ゴバッ。
由香は唐突に血を吐き出した。
粘ついた赤黒いものに驚いた由香は目を見開いた。
助けを求めるように目をぐるぐると動かし、黎人の姿を目に留めた。
「これで、ずっと若いままの由香を眺められるよ」
喜んでいるような、興奮しているような、高揚した気持ちを押さえつけるような声で囁いた。
飲み干した毒と、黎人という名の毒に染まり切った由香。
彼女の声は、誰にも届かなかった。
黎人「レイト」は床に直で座っている由香「ユウカ」に声をかけた。
「由香、床にそのまま座らないでソファに座った方がいいんじゃない?」
「やあだ。ここあったかいもん」
そう言いながら由香はテディベアを抱きしめ直した。
赤いリボンを首に結んだテディベア。
由香は金茶色の柔らかい毛の肌触りが大好きだった。
これは黎人が与えたもので、「一人じゃ寂しいだろうから」と買ってきたものだった。
由香はいつも床暖房の効いた部屋の中で、テディベアと遊んで黎人が帰ってくるのを待っていた。
「ただいま。ごめんね、待ったでしょ?今ご飯作るからね」
黎人は由香に謝りながら夕飯の支度を始めた。
由香は床の上に転がった絵本のページをめぐり始めた。
「由香、できたよ。一緒に食べよう」
そう言いながら黎人はテーブルの上に食事を並べた。
ローストビーフ、シーザーサラダ、シチュー、キャロットラペ、バゲット。
全部由香の好きなものだった。
「おいしい?」
バゲットにシチューをのせながら黎人は尋ねた。
「うん。おいしい」
由香はローストビーフを口に詰め込みながらこくこくと頷いた。
黎人は嬉しそうに笑うと、グラスに入れたワイン一気にを飲み干した。
「由香は可愛いねぇ。ずっとこのまま成長しないでほしいくらいだよ」
注ぎ直したワインをゆったりと回しながら黎人は恍惚とした表情で言った。
まるで偶像を崇拝するみたいに。
「わたしもいつかおとなになっちゃうかもしれないから、ずっとはむずかしいかなぁ」
由香はいかにも真面目な顔で答えた。
「でも、れいとさんがずっとこのままでいてほしいっておもうなら、このままでいられるかもしんないね」
由香はにこにこと笑った。
「そっかぁ……。じゃあ、僕がどうにかしてあげるよ。ずっとこのままでいられるように。一生僕といられるように」
黎人は妖しげな笑みを浮かべると、少し待つように由香に言った。
黎人はにこやかに由香を呼んだ。
「由香、おいで」
甘ったるい猫撫で声だった。
「んー?なあに?」
「おいで。一緒に遊ぼう」
遊ぼうという言葉に誘われて、由香は期待に胸を膨らませながら駆け寄った。
「これを飲んでから遊ぼうか」
そう言いながら、黎人は透明な液体を差し出した。
由香は不思議そうな顔をしながらその液体を口に含んだ。
「ん!あまい!」
喜びながら由香は液体を飲み干した。
……ケホッ。
ゴホッ、ゴバッ。
由香は唐突に血を吐き出した。
粘ついた赤黒いものに驚いた由香は目を見開いた。
助けを求めるように目をぐるぐると動かし、黎人の姿を目に留めた。
「これで、ずっと若いままの由香を眺められるよ」
喜んでいるような、興奮しているような、高揚した気持ちを押さえつけるような声で囁いた。
飲み干した毒と、黎人という名の毒に染まり切った由香。
彼女の声は、誰にも届かなかった。