「ほら、あの人あの人。柳沢先輩と不倫してるらしいよ」
「えー!ほんとに?全然そうは見えないわ……どっちかというと清楚な感じするのにねー」
今日も会社で後ろ指をさされる。
確かに、柳沢先輩は既婚者だけど、私の方が大切だって言ってくれた。
だから、みんなに何か言われたって全く辛くなんかない。
今年28歳。
そろそろ女としての華が散りかけている。
家族は「早く結婚して孫の顔見せろ」って言うけど、なかなかに先輩が結婚してくれないもんだから困って仕方がない。
何度も何度も先輩に「いつになったら奥さんと離婚してくれるのか」と尋ねても、「いつかね」とはぐらかされてしまう。
私はそんな先輩の飄々とした掴みどころのないところが好きだった。
数ヶ月後、久しぶりに休みをもらえて、高校の同級生である華奈「カナ」と食事しに行くことになった。
談笑していると、お互いの恋人の話題になり、私の方から先に話すことになった。
「私の恋人ねぇ、既婚者なんだよね」
そう言った時の華奈の表情は一生忘れられない。
薄氷に覆われたかのように、目を見開いてこちらを凝視してきた。
「何回も言ってるんだけど、全然奥さんと別れてくれなくてさー。困っちゃうんだよねぇ。私も親から早く孫の顔見せろって言われてるしさぁ」
そこまで言うと、華奈は悍ましいモノを見るような目つきをしていた。
「香奈枝「カノエ」…あんたおかしいよ?!既婚者と付き合うだなんて、ただの不倫じゃん!別れなよ!奥さん可哀想だよ…」
そう言われて腹が立ち、自分の分の代金をテーブルに叩きつけ、店を飛び出した。
誰も、私の気持ちを理解してくれなかった。
孤独な私に寄り添ってくれるのは柳沢先輩ただ一人だけだった。
「香奈枝ちゃんも頑張ってるのにね〜。可哀想に。慰めたげるよ」
先輩はそう言いながら頭を撫でてくれた。
先輩に寄りかかると、一瞬だけ身を引かれた気がしたが、またすぐに体を預けさせてくれた。
先輩の本心にも気づかず、私は先輩に甘えていた。
先輩に、恋をしていた。
恋は盲目とはよく言ったもので、確かに私は盲目で、先輩に手を引かれて生きていた。
私の願いは、終ぞ叶わないことを知っていながら。
「えー!ほんとに?全然そうは見えないわ……どっちかというと清楚な感じするのにねー」
今日も会社で後ろ指をさされる。
確かに、柳沢先輩は既婚者だけど、私の方が大切だって言ってくれた。
だから、みんなに何か言われたって全く辛くなんかない。
今年28歳。
そろそろ女としての華が散りかけている。
家族は「早く結婚して孫の顔見せろ」って言うけど、なかなかに先輩が結婚してくれないもんだから困って仕方がない。
何度も何度も先輩に「いつになったら奥さんと離婚してくれるのか」と尋ねても、「いつかね」とはぐらかされてしまう。
私はそんな先輩の飄々とした掴みどころのないところが好きだった。
数ヶ月後、久しぶりに休みをもらえて、高校の同級生である華奈「カナ」と食事しに行くことになった。
談笑していると、お互いの恋人の話題になり、私の方から先に話すことになった。
「私の恋人ねぇ、既婚者なんだよね」
そう言った時の華奈の表情は一生忘れられない。
薄氷に覆われたかのように、目を見開いてこちらを凝視してきた。
「何回も言ってるんだけど、全然奥さんと別れてくれなくてさー。困っちゃうんだよねぇ。私も親から早く孫の顔見せろって言われてるしさぁ」
そこまで言うと、華奈は悍ましいモノを見るような目つきをしていた。
「香奈枝「カノエ」…あんたおかしいよ?!既婚者と付き合うだなんて、ただの不倫じゃん!別れなよ!奥さん可哀想だよ…」
そう言われて腹が立ち、自分の分の代金をテーブルに叩きつけ、店を飛び出した。
誰も、私の気持ちを理解してくれなかった。
孤独な私に寄り添ってくれるのは柳沢先輩ただ一人だけだった。
「香奈枝ちゃんも頑張ってるのにね〜。可哀想に。慰めたげるよ」
先輩はそう言いながら頭を撫でてくれた。
先輩に寄りかかると、一瞬だけ身を引かれた気がしたが、またすぐに体を預けさせてくれた。
先輩の本心にも気づかず、私は先輩に甘えていた。
先輩に、恋をしていた。
恋は盲目とはよく言ったもので、確かに私は盲目で、先輩に手を引かれて生きていた。
私の願いは、終ぞ叶わないことを知っていながら。