バタバタと駆け足の足音が聞こえる。
繋いだ手を離さぬよう、必死になりながら走る音が。
息を切らしながら走る花椿と寿造は、側から見るとかなり目立った。
それでも、誰かが近衛に告げ口をするようなことはなかった。
ようやく目指した河辺に着いて、二人は少し休憩した。
花街の騒がしさとは打って変わって、夜の河辺は冷ややかに思えるほど静かだった。
紺色の空に星が浮かんでいた。
真夜中の静寂の中、花椿が口を開いた。
「ねェ、旦那」
震えた声が寿造の耳を打った。
「死んでも私と一緒になるって、約束してくれるかい?」
声は悲哀と恐怖が入り混じって震えていた。
「ああ。必ず、来世でもお前さんを見つけ出すよ」
震える花椿とは裏腹に、寿造はけらけらと笑った。
「なら、よかった。そう言ってくれると安心できるねェ……。寿造さん」
花椿はふふっと笑うと、寿造の手を両の手でぎゅっと握った。
「私が今着てるやつの柄を見てごらん。桔梗の花なんだよ、これ。桔梗の花言葉、知ってるかい?」
「確か…変わらない愛、だったかね」
「その通り。私のあんたに対する愛も、あんたの私に対する愛も、永遠に変わらない。そうだろう?」
花椿が悪戯っぽく笑うと、寿造は困ったような笑みを浮かべた。
「参ったなぁ。俺の負けだ。お前さんの言う通りだ。俺のお前さんへの愛は、死んだって変わらないよ。誓ったっていい」
そう言うと、二人はお互いを見つめ合って、笑い合った。
「それじゃあ、そろそろかな」
寿造が呟くと、花椿は頷いた。
手を握りしめ、一歩ずつ川の中に近づいた。
一歩進むごとに着物に冷たい水が染み込んだ。
遊女の着物は、何着も重ね着するため水を吸うとずっしりと重くなり、入水をした時にはほとんど助からない。
「こんな時期に川に入ったら凍え死ぬって、子供の頃はよく手伝いの婆さんに叱られてたなぁ」
寿造の冗談に、花椿は声を上げて笑った。
「そんなら、後から風邪をひかないようにしなくちゃだね」
なかなかに上手い返しをされた寿造。
二人は徐々に、徐々に水の中へと浸かっていった。
冷え切った水が身体に重く纏わりついた。
それでも、二人は手を離さなかった。
思い切って深いところに飛び込むと、上を向いた瞬間に満天の星空が浮かんだ。
沈んでいく意識の中でも、二人は互いを想って合っていた。
繋いだ手を離さぬよう、必死になりながら走る音が。
息を切らしながら走る花椿と寿造は、側から見るとかなり目立った。
それでも、誰かが近衛に告げ口をするようなことはなかった。
ようやく目指した河辺に着いて、二人は少し休憩した。
花街の騒がしさとは打って変わって、夜の河辺は冷ややかに思えるほど静かだった。
紺色の空に星が浮かんでいた。
真夜中の静寂の中、花椿が口を開いた。
「ねェ、旦那」
震えた声が寿造の耳を打った。
「死んでも私と一緒になるって、約束してくれるかい?」
声は悲哀と恐怖が入り混じって震えていた。
「ああ。必ず、来世でもお前さんを見つけ出すよ」
震える花椿とは裏腹に、寿造はけらけらと笑った。
「なら、よかった。そう言ってくれると安心できるねェ……。寿造さん」
花椿はふふっと笑うと、寿造の手を両の手でぎゅっと握った。
「私が今着てるやつの柄を見てごらん。桔梗の花なんだよ、これ。桔梗の花言葉、知ってるかい?」
「確か…変わらない愛、だったかね」
「その通り。私のあんたに対する愛も、あんたの私に対する愛も、永遠に変わらない。そうだろう?」
花椿が悪戯っぽく笑うと、寿造は困ったような笑みを浮かべた。
「参ったなぁ。俺の負けだ。お前さんの言う通りだ。俺のお前さんへの愛は、死んだって変わらないよ。誓ったっていい」
そう言うと、二人はお互いを見つめ合って、笑い合った。
「それじゃあ、そろそろかな」
寿造が呟くと、花椿は頷いた。
手を握りしめ、一歩ずつ川の中に近づいた。
一歩進むごとに着物に冷たい水が染み込んだ。
遊女の着物は、何着も重ね着するため水を吸うとずっしりと重くなり、入水をした時にはほとんど助からない。
「こんな時期に川に入ったら凍え死ぬって、子供の頃はよく手伝いの婆さんに叱られてたなぁ」
寿造の冗談に、花椿は声を上げて笑った。
「そんなら、後から風邪をひかないようにしなくちゃだね」
なかなかに上手い返しをされた寿造。
二人は徐々に、徐々に水の中へと浸かっていった。
冷え切った水が身体に重く纏わりついた。
それでも、二人は手を離さなかった。
思い切って深いところに飛び込むと、上を向いた瞬間に満天の星空が浮かんだ。
沈んでいく意識の中でも、二人は互いを想って合っていた。