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百合、パラレル要素あり。
基本的にオリジナルストーリーです。
途中から原作とストーリーがズレます。特にのだ2以降の話とはリンクしません。アリナ以外の子と友達になった世界線というコンセプトなので。
ワラビモチ〜もし、アリナがそこにいなければ〜
#1
ああ歌姫よ、君を泣く
[斜体]昼休み。[/斜体]
「ねえ。カラオケ行こ!」
あの子は確か、隣の席の[太字][漢字]黒奈美都[/漢字][ふりがな]くろなみつ[/ふりがな][/太字]。
「あ、大丈夫です……」
残念ながら私は歌えない。今回はパスさせてもらう。
「行こう行こう行こうってば!」
「嫌です!」
私が断ると同時に、5時間目の始めのチャイムが鳴り始めた。
ひとまず、これでもうあのしつこい誘いも来ないだろう。
そう思って安心していたのだが、6時間目が終わった下校時間……。
「カラオケ行こうよぉぉぉぉぉー!」
黒奈美都に、思いっきり拉致された。
「ってか、君って、キナコ?」
名前も知らずに私をカラオケに誘ったのか? そう思って私は頷いた。
「わ、やっぱり! ぼくがキナコちゃんの声を聞き間違えるはずがないもんね!」
どこかリアクションがおかしい。
20分ほど走ってハッチポッチワンについた頃、やっと私はその真意を理解した。
——これ、私が【Kinaco】ってことを、気づかせずに自白させようとした!?
今さら気づいてももう遅い。予約はもう済ませていた。予約の個室に駆け込む。
美都は、魔女アニメの曲を選び、さっそく歌い始めた。甘く、澄んだ、不思議な声で。
「いつも迷惑ばっかりかけるけど、いつも散々困らせちゃうけど……」
その歌を、音源としてダウンロードし、すぐに公開し、次の歌を選ぶ。
2曲目、3曲目……。次々と歌った。ただ——。
「4曲目は、キナコちゃんと一緒に歌いたい!」
無理な相談をしてきた。私の反対を押し切って、美都は強引に決定した。
「じゃあ、『ポジティ部vsネガティ部』ね!」
そして、美都は歌い始めた。最初の鏡音リンのパートは美都が綺麗に歌い上げた。
問題は鏡音レンのパート。案の定、私は歌えなかった。
「すた……」
「——ND UP JAPAN POSITIVE PEOPLE! 精神と身体の調和!」
私の異変を察してか、美都は2人分のパートをすべて歌った。
85点だった。
歌い終わってから、やっと現状を察したように、美都は呟いた。
「そっか……。キナコちゃん、歌えなくなってたんだ……。それで、歌みたも出せなかったんだね……」
今にも泣き出しそうな美都を、私は何も言わずに見ていた。
美都は、手元のスマホで、「【Kinaco】」と検索して私に見せた。
「ずんだもんが真の【Kinaco】について解説するようです」というタイトルの動画だった。
内容は、ずんだもんと音無ムイが、
・音声ソフトの【Kinaco】は、本当の【Kinaco】ではないこと
・【Kinaco】は、フリー素材ではなく、歌い手であること
・【Kinaco】の中の人には、「ありのままがわからなくても、いいんだよ」と伝えたいこと
を解説する、という動画だった。
「よかったね」
美都が、一言だけ私に告げた。そして、またスマホを操作して、別の画面を開いた。
そこには、「黒奈美都」というアカウントの画面。下には、その人が投稿した「歌ってみた」のサムネたちと、チャンネル登録している人たち、そして、「黒奈美都」が登録している人たちが表示されている。
「これ、ぼくが歌い手のときに使ってるアカウントだよ」
画面の一番下をタップして開く。「登録しているチャンネル:7」という簡素なそれの下には、アイコンが7つ。それは、「たねまきP」——コラボ相手——、「アリナ」——声優——、それからゲーム実況者4人のアイコンが並び、最後のひとつには、なりすましでも音源を使用しているわけでもない、本物の【Kinaco】のチャンネルが表示されていた。
「え……? これ、私……?」
私がギリギリで紡ぎ出した言葉がそれだった。
「そう。ぼく、キナコちゃんに憧れて歌い手を始めたの。だから、ほら」
美都は、画面をアカウントの画面に戻して、投稿した「歌ってみた」のサムネを、最後までスクロールした。そこには、「ホシボシ★☆ 歌ってみた」という、最初の投稿があった。
「キナコちゃんが最初に歌ったのとおんなじ。でしょ?」
投稿を表示し、再生する。それは、歌のレベルは私よりは低いが、それでもかなり高く、そして一生懸命な歌声だった。
「キナコちゃん。ぼく、【Kinaco】に届いてほしかったから歌った。願い、やっと叶った」
それを言い終わってから、ふと思い出したように呟く。
「もう一個だけ、お願い言っちゃっても、いいかな?」
「何……?」
私の質問を聞くと、美都はふっと笑って言った。
「友達になって。キナコ」
私は、困惑しながらも、大きく頷いた。
(続く)
「ねえ。カラオケ行こ!」
あの子は確か、隣の席の[太字][漢字]黒奈美都[/漢字][ふりがな]くろなみつ[/ふりがな][/太字]。
「あ、大丈夫です……」
残念ながら私は歌えない。今回はパスさせてもらう。
「行こう行こう行こうってば!」
「嫌です!」
私が断ると同時に、5時間目の始めのチャイムが鳴り始めた。
ひとまず、これでもうあのしつこい誘いも来ないだろう。
そう思って安心していたのだが、6時間目が終わった下校時間……。
「カラオケ行こうよぉぉぉぉぉー!」
黒奈美都に、思いっきり拉致された。
「ってか、君って、キナコ?」
名前も知らずに私をカラオケに誘ったのか? そう思って私は頷いた。
「わ、やっぱり! ぼくがキナコちゃんの声を聞き間違えるはずがないもんね!」
どこかリアクションがおかしい。
20分ほど走ってハッチポッチワンについた頃、やっと私はその真意を理解した。
——これ、私が【Kinaco】ってことを、気づかせずに自白させようとした!?
今さら気づいてももう遅い。予約はもう済ませていた。予約の個室に駆け込む。
美都は、魔女アニメの曲を選び、さっそく歌い始めた。甘く、澄んだ、不思議な声で。
「いつも迷惑ばっかりかけるけど、いつも散々困らせちゃうけど……」
その歌を、音源としてダウンロードし、すぐに公開し、次の歌を選ぶ。
2曲目、3曲目……。次々と歌った。ただ——。
「4曲目は、キナコちゃんと一緒に歌いたい!」
無理な相談をしてきた。私の反対を押し切って、美都は強引に決定した。
「じゃあ、『ポジティ部vsネガティ部』ね!」
そして、美都は歌い始めた。最初の鏡音リンのパートは美都が綺麗に歌い上げた。
問題は鏡音レンのパート。案の定、私は歌えなかった。
「すた……」
「——ND UP JAPAN POSITIVE PEOPLE! 精神と身体の調和!」
私の異変を察してか、美都は2人分のパートをすべて歌った。
85点だった。
歌い終わってから、やっと現状を察したように、美都は呟いた。
「そっか……。キナコちゃん、歌えなくなってたんだ……。それで、歌みたも出せなかったんだね……」
今にも泣き出しそうな美都を、私は何も言わずに見ていた。
美都は、手元のスマホで、「【Kinaco】」と検索して私に見せた。
「ずんだもんが真の【Kinaco】について解説するようです」というタイトルの動画だった。
内容は、ずんだもんと音無ムイが、
・音声ソフトの【Kinaco】は、本当の【Kinaco】ではないこと
・【Kinaco】は、フリー素材ではなく、歌い手であること
・【Kinaco】の中の人には、「ありのままがわからなくても、いいんだよ」と伝えたいこと
を解説する、という動画だった。
「よかったね」
美都が、一言だけ私に告げた。そして、またスマホを操作して、別の画面を開いた。
そこには、「黒奈美都」というアカウントの画面。下には、その人が投稿した「歌ってみた」のサムネたちと、チャンネル登録している人たち、そして、「黒奈美都」が登録している人たちが表示されている。
「これ、ぼくが歌い手のときに使ってるアカウントだよ」
画面の一番下をタップして開く。「登録しているチャンネル:7」という簡素なそれの下には、アイコンが7つ。それは、「たねまきP」——コラボ相手——、「アリナ」——声優——、それからゲーム実況者4人のアイコンが並び、最後のひとつには、なりすましでも音源を使用しているわけでもない、本物の【Kinaco】のチャンネルが表示されていた。
「え……? これ、私……?」
私がギリギリで紡ぎ出した言葉がそれだった。
「そう。ぼく、キナコちゃんに憧れて歌い手を始めたの。だから、ほら」
美都は、画面をアカウントの画面に戻して、投稿した「歌ってみた」のサムネを、最後までスクロールした。そこには、「ホシボシ★☆ 歌ってみた」という、最初の投稿があった。
「キナコちゃんが最初に歌ったのとおんなじ。でしょ?」
投稿を表示し、再生する。それは、歌のレベルは私よりは低いが、それでもかなり高く、そして一生懸命な歌声だった。
「キナコちゃん。ぼく、【Kinaco】に届いてほしかったから歌った。願い、やっと叶った」
それを言い終わってから、ふと思い出したように呟く。
「もう一個だけ、お願い言っちゃっても、いいかな?」
「何……?」
私の質問を聞くと、美都はふっと笑って言った。
「友達になって。キナコ」
私は、困惑しながらも、大きく頷いた。
(続く)