文字サイズ変更

静かな声を拾う人【190回閲覧ありがとう✨】

#7

6.2人きりの放課後

 朝美琴音。なんと響きの美しい名前だろう。これから私の先輩となる人。

 翌日。私は九条先生に入部届を提出した。九条先生は何も言わずにそれを受け取り、私も何も言わずに自分の席へ戻る。今日もあの準備室へ行き、顧問と呼ばれる人に会おうと思っている。何でか分からないけれど、胸が躍り出しそうな気分でいた。

 放課後。今日も九条先生に話しかけられないうちに教室を出る。今日も朝美先輩に会って、昨日は会えなかった顧問の先生と会う。何とも楽しみだ。
 準備室は昨日と同じように暗く、中には誰もいないようだった。昨日のように廊下で朝美先輩を待って居よう。そう思った瞬間、
 「あれ、柊木さんじゃん。部活見学?」
 背後から声をかけられる。聞いたことある、嫌な声。恐る恐る振り返る。そこにはー案の定九条先生が笑顔を浮かべて立っていた。
 「そ、そうですけど…。せ、先生はなぜここに?」
 朝美先輩、早く来てください、と思いつつ聞いてみる。九条先生は驚いたような顔をして
 「何でって、僕、今年からこの部活の顧問だから。」
 と淡々と言った。私は呆気にとられる。九条先生が「新聞・文藝部」の顧問?何でよりによって九条先生が顧問なの?頭が混乱する。こうなったら、朝美先輩に頼るしかー。
 「ちなみにだけど、」
 九条先生は話を続ける。
 「朝美さんは、今日休みみたいだよ。」
 ガーン、という音が聞こえた気がした。唯一の頼りである先輩がいないなんて、私がここに来た意味ないじゃん…。
 「部活動見学は今日までだけど、柊木さんはもう入部届出したよね?」
 「は、はい。昨日は顧問の先生がいらっしゃらなくて、明日もおいでって、朝美先輩に言われて…。」
 昨日の状況を説明する。けれど、頭が回っていないのか、何を言っているかちんぷんかんぷんだ。
 「そうか。じゃあ今日、僕がこの部活の顧問だって知ったわけだね。」
 私は頷いておく。九条先生が顧問なんて、入るんじゃなかったと思う。けれど、あの朝美先輩の笑顔を見てしまった今、考えを変えることはできない。私はあの先輩のもとで活動したいと心から思ったのだ。
 「今日って何かすることある?朝美さんから何か聞いてる?」
 私は首を振る。
 「そうか、じゃあ今日はもう帰っていいんじゃない?目的は達成したわけだし。」
 九条先生は少し首を傾げながら言う。私もどうしていいか分からず、
 「じ、じゃあ、失礼します。」
 と言ってその場を後にした。さっと帰ろうと思ったが、「あ、そうだ」と九条先生に引き留められる。
 「これからよろしくね、柊木さん?」
 九条先生は小悪魔のように笑みを浮かべた。「柊木さん」という言い方に、少しトクンとした。
 我に返り、私は頭を下げると急いで昇降口まで向かった。九条先生に話しかけられると、なんだか胸がざわざわする。

 昇降口で靴を履き替えていると、外から多分バレー部であろう声がした。見学とはいえ、1年生ももう走りこみや声出しを行っているらしい。その中に早乙女さんの姿があった。みんなの中に紛れて、チームの一人として活動している姿に、胸がチクチクと痛んだ。私にはそんなことできない。チームなんて好きじゃない。そう思った。私のできないことを、難なくこなせるみんなが嫌いで、そんなことを思ってしまう自分が嫌いだった。
 「バレー部、気になるの?」
 ふいに声をかけられる。九条先生の声だ。
 「せ、先生?どうしてここに?」
 九条先生を少し睨んでから言う。
 「いや、別に。君いつも一人だから見送ってあげようと思って」
 つまり、これは九条先生のやさしさ。そう思うことにする。
 「わざわざありがとうございます。私は大丈夫なので…」
 言いかける。
 「大丈夫、じゃないでしょ。無理しないで、なんかあったらすぐいいなよ。」
 九条先生が私の耳元で囁く。私は驚いて飛びのき後ずさる。そんな私の様子を見て、九条先生は満足したかのように、
 「じゃ、また明日。」
 と言い、廊下の奥に消えてしまった。
 「な、何…?今の…」
 しばらく私はその場を動けないでいた。

作者メッセージ

 こんばんは、月白灑苑(つきしろ しおん)です!
 50回閲覧、本当にありがとうございます!嬉しい限りです(o*。_。)oペコッ
 これからも投稿頑張りますので、よろしくお願いいたします。
 まだ読んだことないよって人は、ぜひぜひ1話だけでも読んでいただけると幸いです(*^-^*)
 応援&アドバイスされると、私は喜びます‼

2026/02/25 01:37

月白灑苑
ID:≫ 5pplVSwPOVTKw
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は月白灑苑さんに帰属します

TOP