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凪と風【130回閲覧ありがとう✨】

#6

4.芽生える感情

 その日は放課後まで、ずっと水瀬律について考えていた。
 水瀬が放った、「かっこいい」という言葉。やけに胸に響いた気がした。日向里に言われた時とは違う、心から嬉しいと思えた。
 「颯太!」
 日向里の声。俺は思わず聞いてみる。 
 「日向里さ、水瀬についてなんか知ってる?」
 日向里は呆れた顔をして、俺の机に腕をつく。 
 「また水瀬君?私は何も知らないよ!」
 日向里はふくれっ面で俺を見る。それどころか、
 「ねえ、それより聞いてよ!」
 と普通に話を変えてくる。俺が何も言わないのを良いことに、
 「見てよ、外。雨降ってるんですけど⁉」
 と話を続ける。俺は窓の外を見る。朝、お天気キャスターが言っていた通り、「所により雨が降った」ようだ。傘、持ってきといて良かった。
 「颯太さ、傘持ってる?」
 日向里は首を傾げて尋ねる。俺は頷くと、
 「あっそ、」
 と言い残し、俺から離れた。と思ったのも束の間、友達に紛れて教室を出て行ってしまった。
 「なんだよ、あいつ。」
 俺がそう吐き捨てると、後ろの方で席を立つ音が聞こえた。俺はチラッと見る。水瀬が席を立ったようだ。
 気が付くと、俺と水瀬以外教室にいないことに気が付いた。帰りのHRも終え、みんな各自解散したようだ。
 いい機会だ。もう一度話しかけてみることにするか。さっきのことも気になるし。

 「よお、水瀬。」
 俺は偶然を装って水瀬に話しかけた。水瀬はあからさまに混乱しているような顔をして、
 「な、何でしょう?」
 と返してきた。
 「外、凄い雨だな。傘、持ってるか?」
 普通に話しかけてみる。内心は何を話そうか焦っているが、とりあえず天気の話題でも。
 「雨、凄いですね。か、傘、持ってないです…。」
 水瀬は恥ずかしそうに俯く。
 「そうか、じゃあ俺の使えよ。」
 「えっ…!でも、そしたら一条さんが…」
 水瀬はアワアワし出した。その様子につい、吹き出しそうになってしまう。
 「俺はいいよ、別に。それか、一緒に入るか?」
 冗談交じりでそう付け加えた。「使えよ」。そう言おうとした瞬間、
 「い、一緒に、か、帰りましょう。」
 水瀬は顔を真っ赤にしながら答えた。予想外の答えに呆気にとられる。
 マジか、俺、水瀬と相合傘しながら帰るのか?
 「ま、まぁいいけど…」
 俺は動揺しながら、水瀬と一緒に教室を出た。

 昇降口にはもう誰もいなく、ただ雨の音だけが響いていた。
 「狭いかもしれないけど、入れよ。」
 俺は傘の片方に避け、水瀬を入れた。水瀬は肩身が狭そうに入ってきたが、傘の柄をぎゅっと握り締めていた。
 
 学校を離れてしばらくしたとき、俺は無言の時間に耐えられなくなった。信号待ちをした時、
 「水瀬はさ、何で昨日試合来てたんだ?」
 と聞いてみた。水瀬はより赤くなり、
 「ただ、ちょっと興味があって…」
 とだけ答え、黙り込んでしまった。俺はもっと質問してみようと思った。
 「興味?だってお前、弓道部じゃん?何でバスケに?」
 水瀬は眼鏡をかけ直すと。
 「べ、別に…」
 と言い、顔を手で覆った。そしてこう言った。
 [大文字]「一条さんが、いたから…」[/大文字]
 思わず立ち止まってしまう。俺が、いたから?どういう理由だよ、それ?
 「えっと、それってどういう…」
 聞いてみたが、水瀬は黙ったまま。俺も口を[漢字]噤[/漢字][ふりがな][/ふりがな]んでしまう。
 
 しばらく無言のまま歩き、分かれ道に着いた。
 「ぼ、僕、家こっちなんで。わ、わざわざありがとうございました。」
 水瀬はそう言うと、雨に濡れながら走って行ってしまった。何なんだよあいつ、ますます分かんねぇよ。

________________________________________________________
 言ってしまった、言ってしまった、言ってしまった、言ってしまった、言ってしまった。
 [斜体]「一条さんが、いたから。」[/斜体]
 自分の言葉が頭の中で響いている。一条さんー颯太君の顔が思い浮かぶ。あの、困惑したような顔。
 言うつもりはなかった。けど、言ってしまった。ー後悔はしていない。伝えられたから。
 僕は今来た道を振り返る。もちろんそこに颯太君の姿はなく、少し小降りになった雨が僕を打っているだけだ。
 「明日も、話せるかな…?」
 そう呟いて、僕は家まで走った。
 

作者メッセージ

こんばんは、月白灑苑(つきしろ しおん)です。
2人の会話シーン、書いてみました!
もう少し上手に表現したいのですが、どうすればいいと思いますか?

2026/02/23 01:36

月白灑苑
ID:≫ 5pplVSwPOVTKw
コメント

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