HRが終わり、生徒達は羽を伸ばしていた。俺はチラッと、水瀬律の方を見る。水瀬は自分の席で静かに本に目を落としている。ページをめくる毎に、水瀬の眼鏡が白く揺れる。紙が眼鏡に反射してるせいだ。
俺はいつ水瀬に話しかけに行こうか迷う。俺はどちらかと言うと誰とでも話せる、フレンドリーな性格だとは思うが、水瀬にはその性格が発動しない。水瀬には、どこか近寄りがたいオーラを感じる。遠慮してしまうというか、「近寄らないでください」という雰囲気があふれ出ている気がする。俺自身も、水瀬がクラスの誰かと話している様子は見たことがない。
「颯太~!」
机に向き直ると、またしても日向里が近寄ってくる。別に、話すことなんてないのに。
「なんだよ、さっきから。」
日向里の方は見ず、時計を見ながら言う。1時限目が始まるまであと10分か、とかなんとか考えていると、
「何でさっきから、水瀬君のこと見てるの?」
日向里が冷静な声で言ってくる。俺はビクッとして日向里の方を見る。
「なんだよ、いきなり…。別に見てないし」
「颯太って、分かりやすよね。すぐ表情に出てる」
日向里はじっと俺のことを見る。俺は再び目をそらす。
「何もないから。もう向こう行けよ」
俺は日向里とこれ以上話したくなかった。別に、水瀬と話したい理由なんてない。話したい理由なんて…。
一時限目が終わった。みんなは口々に騒ぎ始める。
そんな中、俺は水瀬に話しかける機会を狙っていた。水瀬の席には、相変わらず人は寄っていなく、日向里も友達との会話で取り込み中だ。話しかけるなら、今ー。
「あ、あのさ」
俺は水瀬の席まで行き、話しかけた。水瀬は昨日のように困惑したような顔をして、
「な、何ですか?」
と短く返事する。水瀬の顔はみるみるうちに赤くなり、口が歪んでいる。
「えっと、昨日試合見に来てたよな。何でかなって思って…」
俺ももじもじとしゃべってしまう。水瀬は俺と目を合わせずに、眼鏡をかけ直してから
「べ、別に、理由はないです、けど…」
と言った。俺は「そうか」とだけ言い、自分の席に戻ろうとした。言いかけたとき、
「あ、あの…!」
今度は水瀬の方から話しかけてくる。俺は思わず目を丸くしてしまった。
「き、昨日、かっこよかった、です」
俺は自分の鼓動が跳ねていることに気が付く。跳ねている、なんてものじゃない。心臓が飛び出てきそうだった。
「な、なんて…?」
思わず聞き返す。しかし水瀬は何も言わずに席を立ち、
「す、すみません…!わ、忘れてください…!」
と急いで言い、廊下へ飛び出していった。残された俺は、一人ボーっと突っ立っていた。
水瀬が、俺に、「かっこいい」って言った?なんで?昨日って試合のことか?俺の頭は混乱している。
とりあえず、席に戻ろう。落ち着け。予想外の相手に褒められただけじゃないか。何を混乱しているんだ、俺は。
________________________________________________________
言ってしまった。だって、相手から話しかけてくるとは思ってなかったから。
ー改めて見ると、背高かったな。僕が座ってたのもあるけど、見上げないといけなそうだった。まぁ、目も合わせてないけど。
また話せたらいいな。今度はちゃんと話したい。僕からは話しかけられないけど。
俺はいつ水瀬に話しかけに行こうか迷う。俺はどちらかと言うと誰とでも話せる、フレンドリーな性格だとは思うが、水瀬にはその性格が発動しない。水瀬には、どこか近寄りがたいオーラを感じる。遠慮してしまうというか、「近寄らないでください」という雰囲気があふれ出ている気がする。俺自身も、水瀬がクラスの誰かと話している様子は見たことがない。
「颯太~!」
机に向き直ると、またしても日向里が近寄ってくる。別に、話すことなんてないのに。
「なんだよ、さっきから。」
日向里の方は見ず、時計を見ながら言う。1時限目が始まるまであと10分か、とかなんとか考えていると、
「何でさっきから、水瀬君のこと見てるの?」
日向里が冷静な声で言ってくる。俺はビクッとして日向里の方を見る。
「なんだよ、いきなり…。別に見てないし」
「颯太って、分かりやすよね。すぐ表情に出てる」
日向里はじっと俺のことを見る。俺は再び目をそらす。
「何もないから。もう向こう行けよ」
俺は日向里とこれ以上話したくなかった。別に、水瀬と話したい理由なんてない。話したい理由なんて…。
一時限目が終わった。みんなは口々に騒ぎ始める。
そんな中、俺は水瀬に話しかける機会を狙っていた。水瀬の席には、相変わらず人は寄っていなく、日向里も友達との会話で取り込み中だ。話しかけるなら、今ー。
「あ、あのさ」
俺は水瀬の席まで行き、話しかけた。水瀬は昨日のように困惑したような顔をして、
「な、何ですか?」
と短く返事する。水瀬の顔はみるみるうちに赤くなり、口が歪んでいる。
「えっと、昨日試合見に来てたよな。何でかなって思って…」
俺ももじもじとしゃべってしまう。水瀬は俺と目を合わせずに、眼鏡をかけ直してから
「べ、別に、理由はないです、けど…」
と言った。俺は「そうか」とだけ言い、自分の席に戻ろうとした。言いかけたとき、
「あ、あの…!」
今度は水瀬の方から話しかけてくる。俺は思わず目を丸くしてしまった。
「き、昨日、かっこよかった、です」
俺は自分の鼓動が跳ねていることに気が付く。跳ねている、なんてものじゃない。心臓が飛び出てきそうだった。
「な、なんて…?」
思わず聞き返す。しかし水瀬は何も言わずに席を立ち、
「す、すみません…!わ、忘れてください…!」
と急いで言い、廊下へ飛び出していった。残された俺は、一人ボーっと突っ立っていた。
水瀬が、俺に、「かっこいい」って言った?なんで?昨日って試合のことか?俺の頭は混乱している。
とりあえず、席に戻ろう。落ち着け。予想外の相手に褒められただけじゃないか。何を混乱しているんだ、俺は。
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言ってしまった。だって、相手から話しかけてくるとは思ってなかったから。
ー改めて見ると、背高かったな。僕が座ってたのもあるけど、見上げないといけなそうだった。まぁ、目も合わせてないけど。
また話せたらいいな。今度はちゃんと話したい。僕からは話しかけられないけど。