次の日。今日は遅刻せずに済んだ。登校にはバスを使うので、早めの時間に移動しないと混雑して遅れてしまう。
しかし、本当は今日は学校に行きたくなかった。まだ高校生活が始まったばかりなのに何を言っているのか、と言われそうだが、今日は自己紹介をしなければならないのだ。あの生徒達と先生の前で。考えただけで、背中に冷や汗が伝う。
みんなは完ぺきでみんなに興味を持ってもらえるような自己紹介をするだろう。しかし、私にはみんなに自慢できる特長や、今まで頑張ってきたこと・習い事などは一切なく、自分自身を誇れるどころか、いつも周りより醜く劣っていると感じている。紹介するものなんて何もないのに、と愚痴は溜まっていくばかりだが、仕方がない。そうやって折り合いをつけた。
「じゃあ、出席番号が前の奴から自己紹介をしていこう」
九条先生は明るく生徒へ話しかける。出席番号1番の男子がその場に立ち、名前や趣味、出身中学校名を言った。言い終わった後にはクラス全員で拍手を送り、次の人が話し始める。初めの人と同じようなことを言った後、また拍手を送られ、次の人にバトンを渡す。それの繰り返し。
私の出席番号は40番中25番。きりがいいのか悪いのか分からない、微妙な数字だ。
と、順番のことを気にしていると、一人の女子が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「早乙女亜紀です。花岡中学校出身です。中学生の時はバレー部に所属していました。おしゃべりが好きなので、いっぱい話しかけてください!」
圧倒された。他の人とは違う、はきはきとした口調。自身に満ち溢れる表情。彼女がどれだけたくさんの人と関わってきたかが、この一瞬にして分かった。
彼女の出席番号は10番らしい。着々と私の番が近づいていることに気付き、悪寒がする。手が震える。
失敗したらどうしよう。間違ったらどうしよう。誰も拍手してくれなかったらどうしよう。そんな不安が、私の頭や心を駆け巡っている。
「二階堂光喜です。5歳の時からサッカーやってます。勉強はできないけど、まぁ、仲良くしてください。」
20番の人が自己紹介を終えた。どうしよう。もうすぐ私の出番だ。何を言うかも、どう表現するかも決まっていない。
深呼吸する。とにかく、名前と出身中学校名を言おう。余裕があったら趣味を言おう。
ガタン。私の前の席の人が立ち上がる。次が私の番。
ついに私の番が来てしまう。やけに自分の引いた椅子の音が大きく感じる。
「え、えっと、柊木璃音です。み、宮奈中学校出身です。し、趣味は読書です。よろしく、お、お願いします。」
言い終えて座る。みんなは拍手をしてくれている。けれど、音が聞こえない。緊張してか、みんなの声も、先生の声も聞こえない。自分のはねるような心臓の音だけが誇張して聞こえる。
私、ちゃんと言えていた?変なこと、言ってない?期待には応えられた?ー分からない。
しばらくして、ざわめきが私の耳に戻った。今は「横山ゆき」という人の番らしい。もう38番目まで来ていたらしい。一体どのくらいの間、音が聞こえていなかったのか…。
「山中翔です。」
この一言で、クラス内はますます騒がしくなった。特に女子が山中という人の方を見ながらざわざわし始めた。
「今木中出身です。スポーツが好きです。よろしく。」
言い終えたとき、今までにないくらいの拍手が彼に送られた。私もつられて強く手を叩いてしまう。
「はい、ありがとう。」
九条先生が場を締める。これで自己紹介の時間が終わった。と思いきや、どこからともなく、
「先生も自己紹介してよ。」
という声が飛んできた。その声に便乗して、みんなは先生に「自己紹介して欲しい」という言葉を浴びせた。九条先生は一瞬困った顔をしたが、
「そんなに言うなら…」
と自信を紹介し始めた。
「九条零。今年教師になったばかりです。実は、この高校の卒業生でもある。担当教科は数学です。なれないことも多いと思うけど、1年間よろしく。」
ため息が出るほど完璧な答えに、一同はしばらく拍手できないでいた。教室内は静まり返り、誰も動く様子はない。
そんな様子を見かねた九条先生は、自分から
「はい。自己紹介は終わり。さあ、次の時間の準備をしてね。あ、筆記用具を使うから、その準備も」
と切り出す。ちょうどチャイムが鳴り、生徒達はまばらに席を立ち始める。
私はいまだに自分の自己紹介を後悔していた。あそこはあの表現で合っていただろうか?声は小さくなかった?みんなみたいに完璧に出来た?自問自答してみるが、答えは一つもわからなかった。
しかし、本当は今日は学校に行きたくなかった。まだ高校生活が始まったばかりなのに何を言っているのか、と言われそうだが、今日は自己紹介をしなければならないのだ。あの生徒達と先生の前で。考えただけで、背中に冷や汗が伝う。
みんなは完ぺきでみんなに興味を持ってもらえるような自己紹介をするだろう。しかし、私にはみんなに自慢できる特長や、今まで頑張ってきたこと・習い事などは一切なく、自分自身を誇れるどころか、いつも周りより醜く劣っていると感じている。紹介するものなんて何もないのに、と愚痴は溜まっていくばかりだが、仕方がない。そうやって折り合いをつけた。
「じゃあ、出席番号が前の奴から自己紹介をしていこう」
九条先生は明るく生徒へ話しかける。出席番号1番の男子がその場に立ち、名前や趣味、出身中学校名を言った。言い終わった後にはクラス全員で拍手を送り、次の人が話し始める。初めの人と同じようなことを言った後、また拍手を送られ、次の人にバトンを渡す。それの繰り返し。
私の出席番号は40番中25番。きりがいいのか悪いのか分からない、微妙な数字だ。
と、順番のことを気にしていると、一人の女子が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「早乙女亜紀です。花岡中学校出身です。中学生の時はバレー部に所属していました。おしゃべりが好きなので、いっぱい話しかけてください!」
圧倒された。他の人とは違う、はきはきとした口調。自身に満ち溢れる表情。彼女がどれだけたくさんの人と関わってきたかが、この一瞬にして分かった。
彼女の出席番号は10番らしい。着々と私の番が近づいていることに気付き、悪寒がする。手が震える。
失敗したらどうしよう。間違ったらどうしよう。誰も拍手してくれなかったらどうしよう。そんな不安が、私の頭や心を駆け巡っている。
「二階堂光喜です。5歳の時からサッカーやってます。勉強はできないけど、まぁ、仲良くしてください。」
20番の人が自己紹介を終えた。どうしよう。もうすぐ私の出番だ。何を言うかも、どう表現するかも決まっていない。
深呼吸する。とにかく、名前と出身中学校名を言おう。余裕があったら趣味を言おう。
ガタン。私の前の席の人が立ち上がる。次が私の番。
ついに私の番が来てしまう。やけに自分の引いた椅子の音が大きく感じる。
「え、えっと、柊木璃音です。み、宮奈中学校出身です。し、趣味は読書です。よろしく、お、お願いします。」
言い終えて座る。みんなは拍手をしてくれている。けれど、音が聞こえない。緊張してか、みんなの声も、先生の声も聞こえない。自分のはねるような心臓の音だけが誇張して聞こえる。
私、ちゃんと言えていた?変なこと、言ってない?期待には応えられた?ー分からない。
しばらくして、ざわめきが私の耳に戻った。今は「横山ゆき」という人の番らしい。もう38番目まで来ていたらしい。一体どのくらいの間、音が聞こえていなかったのか…。
「山中翔です。」
この一言で、クラス内はますます騒がしくなった。特に女子が山中という人の方を見ながらざわざわし始めた。
「今木中出身です。スポーツが好きです。よろしく。」
言い終えたとき、今までにないくらいの拍手が彼に送られた。私もつられて強く手を叩いてしまう。
「はい、ありがとう。」
九条先生が場を締める。これで自己紹介の時間が終わった。と思いきや、どこからともなく、
「先生も自己紹介してよ。」
という声が飛んできた。その声に便乗して、みんなは先生に「自己紹介して欲しい」という言葉を浴びせた。九条先生は一瞬困った顔をしたが、
「そんなに言うなら…」
と自信を紹介し始めた。
「九条零。今年教師になったばかりです。実は、この高校の卒業生でもある。担当教科は数学です。なれないことも多いと思うけど、1年間よろしく。」
ため息が出るほど完璧な答えに、一同はしばらく拍手できないでいた。教室内は静まり返り、誰も動く様子はない。
そんな様子を見かねた九条先生は、自分から
「はい。自己紹介は終わり。さあ、次の時間の準備をしてね。あ、筆記用具を使うから、その準備も」
と切り出す。ちょうどチャイムが鳴り、生徒達はまばらに席を立ち始める。
私はいまだに自分の自己紹介を後悔していた。あそこはあの表現で合っていただろうか?声は小さくなかった?みんなみたいに完璧に出来た?自問自答してみるが、答えは一つもわからなかった。