担任である「九条零」は、あの時私を助けようとしてくれた男性だった。私は目を丸くして、彼をまじまじと見る。気まずい状況を見られた人に、これから毎日関わっていくとは…。私は運が悪いと常々感じる。
「僕も教師になりたての新人だから、一緒に頑張っていこうね~」
彼はさっきの出来事を忘れたかのように、明るく振る舞う。女子は彼にキャーキャーと黄色い歓声を浴びせ、男子はこれからの楽しい高校生活を想像し、再び盛り上がっている。気がつけば、乗り気じゃないのは私だけになっていた。
「式も終わったことだし、明日の連絡をします」
担任である「九条零」は、あの時私を助けようとしてくれた男性だった。私は目を丸くして、彼をまじまじと見る。気まずい状況を見られた人に、これから毎日関わっていくとは…。私は運が悪いと常々感じる。
「僕も先生になりたての新人だから、一緒に頑張っていこうね~」
彼はさっきの出来事を忘れたかのように、明るくふるまう。女子は彼にキャーキャーと黄色い歓声を浴びせ、男子はこれからの楽しい高校生活を想像し、再び盛り上がっている。気がつけば、乗り気じゃないのは私だけになっていた。
「式も終わったことだし、明日の連絡をします」
彼ー九条先生は、周囲の声に惑わされずに、のほほんとした雰囲気のまま話を進める。
九条先生によると、
・明日は3時限目まで、12時以降下校予定
・1~3時限は全て学活。クラス活動で、1時限目は自己紹介
・部活動見学が始まる。なお、テニス部、弓道部は明後日以降
・筆記用具、事前に配布された課題、ノート一冊を持参すること
だそうだ。自己紹介、という言葉が先生の口から出たとき、私はビクッとし手が微かに震えるのが分かった。
「高校生だし、気引き締めて明日も頑張ろう。忘れ物ないように。じゃあ、下校の指示があるまで待機で」
九条先生はそう言い残し、教室を静かに出て行った。瞬間、
「めっちゃカッコよくなかった⁉」
クラス内の誰かが、静寂を切り裂いた。その言葉を合図に、次々と言葉が放り出される。
「それな!イケメンすぎ…。」
「なんか、ノリよさそうじゃね?」
「俺、あの先生と今日話してみよっかな」
徐々に騒がしくなっていく。私はこの場面が嫌いだ。嫌だと思っているのに何もできない自分が嫌いだ。自分だけが輪に入れないような気がして嫌いだ。
「おう、ちょっと騒がしいぞ。廊下に声響いてる」
音を立てることもなく、九条先生がいつの間にか教室に帰ってきていた。生徒たちは驚いた様子で先生の方を見た。
「もう下校して良いそうなので、荷物まとめて」
九条先生が一言そういうと、先程の騒がしさが嘘のように、みんなが一斉に自分のかばんに手をかける。
「じゃあ、さようなら。明日しっかり来いよ。」
「はい!」
先生の問いかけにみんなは各々返事をする。どうやらみんなは九条先生を気に入ったようだ。私はどうも乗り気になれなかった。私は一人でのろのろと教室を後にしようとした。
「ちょっといい?」
後ろから声をかけられる。嫌な予感がして、振り返るのをしばらく躊躇う。しかし、この沈黙を自分が作っていると感じて、意を決して向き直る。
「な、何ですか…?」
自分の声とは思えないくらい、今発せられた声は酷く小さく、震えていた。九条先生は私の返事が聞こえなかったのか、戸惑う顔をした後、
「さっき会ったとき、きつそうだったから。大丈夫?」
と私に聞いてくれた。まさかまだ心配してくれているのかと思い、再び申し訳なさがこみ上げてくる。
「大丈夫?」という優しい問いかけに自分の頬が緩むのを感じた。安心したのか、私の口からは深いため息が出ていた。
「だ、大丈夫です…。し、心配してくださって、あ、ありがとうございます…。」
出会って間もない人とこんなに長く話したのは初めてだ。緊張と、もう少し話しても良いかもという気持ちが入り混じる。しかし、九条先生は、
「そう。気をつけてね。また明日」
ときっぱりと話を切り上げた。私は予想外の反応に恐怖を覚えた。私、何か間違っていた?先生は、私の何を求めていた?また自問自答に陥る。それでも九条先生は教室の鍵を手に扉に近づいてきたので、
「さ、さようなら」
と、私もさっさと帰ることにした。少し期待した私が恥ずかしかった。明日も会うなんて、顔から火が出そうだ。教室に誰もいなくてよかった。
私は九条先生が鍵を閉める音を背に、そそくさと高校を後にした。
「僕も教師になりたての新人だから、一緒に頑張っていこうね~」
彼はさっきの出来事を忘れたかのように、明るく振る舞う。女子は彼にキャーキャーと黄色い歓声を浴びせ、男子はこれからの楽しい高校生活を想像し、再び盛り上がっている。気がつけば、乗り気じゃないのは私だけになっていた。
「式も終わったことだし、明日の連絡をします」
担任である「九条零」は、あの時私を助けようとしてくれた男性だった。私は目を丸くして、彼をまじまじと見る。気まずい状況を見られた人に、これから毎日関わっていくとは…。私は運が悪いと常々感じる。
「僕も先生になりたての新人だから、一緒に頑張っていこうね~」
彼はさっきの出来事を忘れたかのように、明るくふるまう。女子は彼にキャーキャーと黄色い歓声を浴びせ、男子はこれからの楽しい高校生活を想像し、再び盛り上がっている。気がつけば、乗り気じゃないのは私だけになっていた。
「式も終わったことだし、明日の連絡をします」
彼ー九条先生は、周囲の声に惑わされずに、のほほんとした雰囲気のまま話を進める。
九条先生によると、
・明日は3時限目まで、12時以降下校予定
・1~3時限は全て学活。クラス活動で、1時限目は自己紹介
・部活動見学が始まる。なお、テニス部、弓道部は明後日以降
・筆記用具、事前に配布された課題、ノート一冊を持参すること
だそうだ。自己紹介、という言葉が先生の口から出たとき、私はビクッとし手が微かに震えるのが分かった。
「高校生だし、気引き締めて明日も頑張ろう。忘れ物ないように。じゃあ、下校の指示があるまで待機で」
九条先生はそう言い残し、教室を静かに出て行った。瞬間、
「めっちゃカッコよくなかった⁉」
クラス内の誰かが、静寂を切り裂いた。その言葉を合図に、次々と言葉が放り出される。
「それな!イケメンすぎ…。」
「なんか、ノリよさそうじゃね?」
「俺、あの先生と今日話してみよっかな」
徐々に騒がしくなっていく。私はこの場面が嫌いだ。嫌だと思っているのに何もできない自分が嫌いだ。自分だけが輪に入れないような気がして嫌いだ。
「おう、ちょっと騒がしいぞ。廊下に声響いてる」
音を立てることもなく、九条先生がいつの間にか教室に帰ってきていた。生徒たちは驚いた様子で先生の方を見た。
「もう下校して良いそうなので、荷物まとめて」
九条先生が一言そういうと、先程の騒がしさが嘘のように、みんなが一斉に自分のかばんに手をかける。
「じゃあ、さようなら。明日しっかり来いよ。」
「はい!」
先生の問いかけにみんなは各々返事をする。どうやらみんなは九条先生を気に入ったようだ。私はどうも乗り気になれなかった。私は一人でのろのろと教室を後にしようとした。
「ちょっといい?」
後ろから声をかけられる。嫌な予感がして、振り返るのをしばらく躊躇う。しかし、この沈黙を自分が作っていると感じて、意を決して向き直る。
「な、何ですか…?」
自分の声とは思えないくらい、今発せられた声は酷く小さく、震えていた。九条先生は私の返事が聞こえなかったのか、戸惑う顔をした後、
「さっき会ったとき、きつそうだったから。大丈夫?」
と私に聞いてくれた。まさかまだ心配してくれているのかと思い、再び申し訳なさがこみ上げてくる。
「大丈夫?」という優しい問いかけに自分の頬が緩むのを感じた。安心したのか、私の口からは深いため息が出ていた。
「だ、大丈夫です…。し、心配してくださって、あ、ありがとうございます…。」
出会って間もない人とこんなに長く話したのは初めてだ。緊張と、もう少し話しても良いかもという気持ちが入り混じる。しかし、九条先生は、
「そう。気をつけてね。また明日」
ときっぱりと話を切り上げた。私は予想外の反応に恐怖を覚えた。私、何か間違っていた?先生は、私の何を求めていた?また自問自答に陥る。それでも九条先生は教室の鍵を手に扉に近づいてきたので、
「さ、さようなら」
と、私もさっさと帰ることにした。少し期待した私が恥ずかしかった。明日も会うなんて、顔から火が出そうだ。教室に誰もいなくてよかった。
私は九条先生が鍵を閉める音を背に、そそくさと高校を後にした。