大正貯古齢糖
#1
第一話 優しい金平糖
私のお母様は、私を産んで亡くなった…
元々体が弱かった人だったらしい…
父はその時、もう昭子お義母様に情が移っていて、お母様のことは気にも欠けていなかったそう…
そんな中生まれた私は乳母である美江さんがお世話を焼いてくれた
ご飯もちゃんともらえたし、いい子にしていれば折檻もされない…
でも、お父様とお義母様に愛されている木葉が羨ましいと少しばかり思っていた
「ちょっと沙彩!洗濯はまだなの!?」
「は、はいただいま…」
冬の洗濯は憂鬱だ
手が悴んで霜焼けになる
特に最近は連日のように雪が降っている
私はそんな手をいたわるように白い息をかけ、残りの洗濯物に取り掛かった
「お洗濯…終わりました…」
「あらそう、邪魔だからどこかに行ってちょうだい」
「はい…」
怒号、折檻、無視は当たり前
今日はいいほうだったかもしれない…
平手打ちで済んだから…
そっとまだ赤みの残る頬を触る
手は酷く冷えているのに頬は暖かい
外を見ると、今朝は小ぶりだった雪が本腰を入れたのかどんどん降ってくる
空は灰色で太陽が厚い雲に隠れている
「…これじゃあ、お外の掃き掃除はできないわね…」
毎日の楽しみは外掃除の時、塀を隔てて隣の道場の蒼志さんに会うことだった
あれは、私がお義母様の手鏡を破ってしまった時…
『も、うしわけ『お黙り!!!』
その日は運悪くお義母様の機嫌が悪く、外に締め出された
ちょうど季節はこのくらいで、雪が降っていた
『もうしわけありません…許してください…』
目が熱くなりポロポロと涙が溢れる
袖口で拭うが涙は止まらない
『うぅ…クスン…エッグぅう…』
嗚咽混じりに泣いていると
『お嬢さん、そんなに目を擦っては赤くなってしまいますよ』
浅葱色の和傘を刺した蒼志さんに出会ったのだ
今でもよく覚えている
あの太陽のような優しさに私は救われたのだ
あの日から私は外掃除の時に蒼志さんとお話しするようになった
『はい、沙彩さん、金平糖です』
『そ、そんな、いただけません…』
『沙彩さんのために買ってきたのに…』
『あ、ああぁ…い、いただきます!』
「ふふ…」
少しだけ口角が上がる
会いたいなぁ…蒼志さん…
次の日は、昨日の雪から打って変わってカラッとした晴天だった
「沙彩さん!」
外の掃除の時間、いつも通り蒼志さんが塀の外で待っていた
「蒼志さん、今日は道着なんですね」
蒼志さんはいつもの袴ではなく、白い道着を着て片手には竹刀を持っていた
似合っていると伝えると蒼志さんは心底嬉しそうに
「そ、そうですか?」
と照れ笑いをした
蒼志さんの艶々の黒髪が太陽に照らされ、輝いていた
その後も他愛のない話をし、蒼志さんは道場へ戻って行った
たったこの十分ばかりのひとときが私の幸せなのだ…
それはそうと、お掃除のために箒を手に持って、枯れ葉を履き始めた
こんな日がいつまでも続くとよかったのに…
元々体が弱かった人だったらしい…
父はその時、もう昭子お義母様に情が移っていて、お母様のことは気にも欠けていなかったそう…
そんな中生まれた私は乳母である美江さんがお世話を焼いてくれた
ご飯もちゃんともらえたし、いい子にしていれば折檻もされない…
でも、お父様とお義母様に愛されている木葉が羨ましいと少しばかり思っていた
「ちょっと沙彩!洗濯はまだなの!?」
「は、はいただいま…」
冬の洗濯は憂鬱だ
手が悴んで霜焼けになる
特に最近は連日のように雪が降っている
私はそんな手をいたわるように白い息をかけ、残りの洗濯物に取り掛かった
「お洗濯…終わりました…」
「あらそう、邪魔だからどこかに行ってちょうだい」
「はい…」
怒号、折檻、無視は当たり前
今日はいいほうだったかもしれない…
平手打ちで済んだから…
そっとまだ赤みの残る頬を触る
手は酷く冷えているのに頬は暖かい
外を見ると、今朝は小ぶりだった雪が本腰を入れたのかどんどん降ってくる
空は灰色で太陽が厚い雲に隠れている
「…これじゃあ、お外の掃き掃除はできないわね…」
毎日の楽しみは外掃除の時、塀を隔てて隣の道場の蒼志さんに会うことだった
あれは、私がお義母様の手鏡を破ってしまった時…
『も、うしわけ『お黙り!!!』
その日は運悪くお義母様の機嫌が悪く、外に締め出された
ちょうど季節はこのくらいで、雪が降っていた
『もうしわけありません…許してください…』
目が熱くなりポロポロと涙が溢れる
袖口で拭うが涙は止まらない
『うぅ…クスン…エッグぅう…』
嗚咽混じりに泣いていると
『お嬢さん、そんなに目を擦っては赤くなってしまいますよ』
浅葱色の和傘を刺した蒼志さんに出会ったのだ
今でもよく覚えている
あの太陽のような優しさに私は救われたのだ
あの日から私は外掃除の時に蒼志さんとお話しするようになった
『はい、沙彩さん、金平糖です』
『そ、そんな、いただけません…』
『沙彩さんのために買ってきたのに…』
『あ、ああぁ…い、いただきます!』
「ふふ…」
少しだけ口角が上がる
会いたいなぁ…蒼志さん…
次の日は、昨日の雪から打って変わってカラッとした晴天だった
「沙彩さん!」
外の掃除の時間、いつも通り蒼志さんが塀の外で待っていた
「蒼志さん、今日は道着なんですね」
蒼志さんはいつもの袴ではなく、白い道着を着て片手には竹刀を持っていた
似合っていると伝えると蒼志さんは心底嬉しそうに
「そ、そうですか?」
と照れ笑いをした
蒼志さんの艶々の黒髪が太陽に照らされ、輝いていた
その後も他愛のない話をし、蒼志さんは道場へ戻って行った
たったこの十分ばかりのひとときが私の幸せなのだ…
それはそうと、お掃除のために箒を手に持って、枯れ葉を履き始めた
こんな日がいつまでも続くとよかったのに…