おや、[漢字]芳花[/漢字][ふりがな]よしはな[/ふりがな]。
また来たのかい?
アンタのことだ、また怖い話でも聞きに来たんだろ?
いいよ、私のとっておきを話してあげよう。
[水平線]
これは私が[漢字]禿[/漢字][ふりがな]かむろ[/ふりがな]の時に起きたことだ。
当時、この店からもっと奥に行ったところにある店に、[漢字]喜久春[/漢字][ふりがな]きくはる[/ふりがな]という遊女がいたんだよ。
その人はえらく美人だったんだが、完璧主義だったのさ。
何事も完璧でないと気が済まない性格でね、稼ぎも店一番じゃないと怒り狂っていたんだよ。
そんなある日のことだ。
店の裏に何かが落ちているのを禿が見つけたんだよ。
最初は猫か人形かと思ったらしいんだが、毛もあまり生えていないし、やけに血色がよかったと言うんだ。
そこで他の遊女たちが見に行ったら、それは人間の赤ん坊だったんだよ。
もっとも、息はなかったそうだ。
可哀想に思った店主が寺に連れていって供養して墓に入れてもらったそうなんだが、店中の遊女に聞いても「知らない」と言うばかりなんだ。
その店では、もし子供が生まれたらみんなで育てて、裕福な家の養子に出すなりする決まりだったから、子殺しなんて滅多になかったんだ。
だから店主や女将さんはあんなことが起きたのが悲しくて悲しくて、「子供の霊に母親を聞いてみよう」ということにしたそうなんだ。
子供を埋葬した日の夜、店主は女将さんと降霊術を試してみたんだと。
ほら、よくあるだろ?
なんか…紙に絵を描いてさ、そこに祈るやつだよ。
とにかく、それを試したらしい。
そしたら、本当にその赤ん坊がその場に現れたと言うんだ。
そして、「お前さんの母親は誰なんだ?」と聞くと、とんでもない答えが返ってきたのさ。
赤ん坊は、「きく」とだけ答えて消えたらしい。
きくってのは、喜久春の本名だね。
驚いた二人は喜久春を問い詰めたんだが、喜久春は知らぬ存ぜぬで何も答えなかったらしい。
結局、店主たちは母親探しを諦めた。
ただね、ここからがこの話の一番怖いところさ。
赤ん坊の遺体が見つかった三日後、喜久春は死んじまった。
下半身から大量の血を流して、部屋の中に倒れていたらしい。
他の遊女たちはみんな、「あの赤ん坊の母親は喜久春で、殺された恨みを晴らしたのだ」って噂してるよ。
え?
「どうして喜久春は母親だと認めなかったか?」
それはねぇ、子供が生まれたら、仕事に専念できなくなるからだよ。
私もこの話を聞いてから、何日かは一人で寝れなくなったもんだよ。
アンタは私みたいにならないように気をつけなよ。
また来たのかい?
アンタのことだ、また怖い話でも聞きに来たんだろ?
いいよ、私のとっておきを話してあげよう。
[水平線]
これは私が[漢字]禿[/漢字][ふりがな]かむろ[/ふりがな]の時に起きたことだ。
当時、この店からもっと奥に行ったところにある店に、[漢字]喜久春[/漢字][ふりがな]きくはる[/ふりがな]という遊女がいたんだよ。
その人はえらく美人だったんだが、完璧主義だったのさ。
何事も完璧でないと気が済まない性格でね、稼ぎも店一番じゃないと怒り狂っていたんだよ。
そんなある日のことだ。
店の裏に何かが落ちているのを禿が見つけたんだよ。
最初は猫か人形かと思ったらしいんだが、毛もあまり生えていないし、やけに血色がよかったと言うんだ。
そこで他の遊女たちが見に行ったら、それは人間の赤ん坊だったんだよ。
もっとも、息はなかったそうだ。
可哀想に思った店主が寺に連れていって供養して墓に入れてもらったそうなんだが、店中の遊女に聞いても「知らない」と言うばかりなんだ。
その店では、もし子供が生まれたらみんなで育てて、裕福な家の養子に出すなりする決まりだったから、子殺しなんて滅多になかったんだ。
だから店主や女将さんはあんなことが起きたのが悲しくて悲しくて、「子供の霊に母親を聞いてみよう」ということにしたそうなんだ。
子供を埋葬した日の夜、店主は女将さんと降霊術を試してみたんだと。
ほら、よくあるだろ?
なんか…紙に絵を描いてさ、そこに祈るやつだよ。
とにかく、それを試したらしい。
そしたら、本当にその赤ん坊がその場に現れたと言うんだ。
そして、「お前さんの母親は誰なんだ?」と聞くと、とんでもない答えが返ってきたのさ。
赤ん坊は、「きく」とだけ答えて消えたらしい。
きくってのは、喜久春の本名だね。
驚いた二人は喜久春を問い詰めたんだが、喜久春は知らぬ存ぜぬで何も答えなかったらしい。
結局、店主たちは母親探しを諦めた。
ただね、ここからがこの話の一番怖いところさ。
赤ん坊の遺体が見つかった三日後、喜久春は死んじまった。
下半身から大量の血を流して、部屋の中に倒れていたらしい。
他の遊女たちはみんな、「あの赤ん坊の母親は喜久春で、殺された恨みを晴らしたのだ」って噂してるよ。
え?
「どうして喜久春は母親だと認めなかったか?」
それはねぇ、子供が生まれたら、仕事に専念できなくなるからだよ。
私もこの話を聞いてから、何日かは一人で寝れなくなったもんだよ。
アンタは私みたいにならないように気をつけなよ。