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運命の天秤

#7

5 グラン・グリモワール

突然現れたサタナは、ゆっくりと口を開いた。

「サタン様からの伝言だ。グラン・グリモワールが行われるらしい」

グラン・グリモワール。皇帝サタン、君主ベルゼビュート、大公爵アスタロトの三柱と、アガリやサタナをはじめとする六柱で行われる会議のことだ。

「ほう、最後にあったのは半世紀も前であったな。だがそんなこと、ブエルに任せればいい話だろう。わざわざお前が出向かなくても」

大将という地位にいるサタナが伝令係の様に走り回っているなど、前代未聞だ。そういった仕事は配下や、眷属たちに任せることであって、本人が来ることはない。

「そうもいかなくなったのさ。何があったのか知らないけど、皆走り回ってる」

サタナとアガリは首をかしげた。

「全員で払ってるのか?余程のことでもあったんだろうな。何か無くなったとか?」
「案外いい線言ってるかもな。悪魔城の地下金庫に、何人か出入りしてたから」

アガリは側近たちを見た。

「悪いが俺は依頼の途中。というか終わりかけなんだが…」

サタナが側近たちを一瞥し、続きを促した。

「この体は対価として手に入れたものだ。が、悪魔城に入るには元の姿に戻らなくてはいけない。もったいないとは思わないか」
「所詮人間の身体だ。後のことはこいつらに任せればいい。国王は急死したとか、適当な理由でも言っておけばいいだろう」

なるほどな。とアガリは頷いた。「あとは任せた」側近たちに言い残し、姿を変える。金髪に青い目をした、知的な眼差しの青年へと。

「この姿は久しぶりだ」

アガリは手を握ったり開いたりして具合を確かめている。背中の翼を軽く動かし、細い尾を持ち上げた。

「これは…?」

側近たちは初めて見る悪魔の姿に驚きを隠せないでいた。足元には国王の身体が転がっている。

アガリはニヤリと笑って翼を広げた。


作者メッセージ

ご拝読、ありがとうございましたm(_ _)m

~補足情報~
グラン・グリモワール…大奥義書のこと。作中では悪魔たちの会議の名称として使用。

2024/04/22 20:03

月乃 彩 ID:≫upOl1A1CKsX22
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