鈴side

「もう仕事来るんですか…………………？」
「さぁね。依頼なんていつ来るかわかんないよ。でも、巡回警備ぐらいはやってもらわないとねぇ」
「巡回警備って何ですか？」
「グループで自分たちの担当地区を夜に警備するの。鈴ちゃんに会ったのは、警備のパトロール中にたまたまね」
たまたまで助けられるのか。
動きなれているんだなぁと思った。
「まー最近は消し屋になりたいっていう子も少なくってねぇ。鈴ちゃんみたいに助けた子を勧誘するか、家が消し屋一族か、何かしら繋がってないと厳しくてね。人手不足で最近はグループというより２人で警備してるね」
なるほど。夜曇さんと２人だったのはそういうわけだったのだ。
「で、その専用武器ってやつなんだけどね。ボク、最初刀持ってたでしょ？杏李ちゃんは斧みたいな」
「あぁ、あの威圧感のあるやつですか……………？」
「そうそう！女の子に斧なんて似合わないよね～～、ボクもどうかと思うわ。まぁ、武器は１人ずつ違うわけよ。使用者に合わせて、一番相性の合う形のものを創っていくんだよ。といっても、ボクはそんな大層なもの創れないからねぇ。なんか刃物っぽいの持ってない？」
刃物……………………………？
いきなりの物騒ワードだったが、まぁこれからそういうこともあるのだろう。
「刃物ですか………うーん、カッターナイフとかぐらいなら持ってるんですけど、ただの文房具ですし……………」
「いいよいいよ、身近なものから探すのが一番だからねぇ。っていうか結構身長あるよね、大型なのもいけちゃうかな？」
「あ……………………いや、物凄く非力なものでして。まぁ、足ちょっと速いくらいです…………、あ、あと手が器用だってよく言われます。折り紙とか、糸通しとか、あのこまごまとしたやつです」
「折り紙ってさ、よくハサミ使ったりしない？」
「あー……………そうですね。作るものによっては」
「じゃあ、今日はここまで！また３日後ぐらいに呼ぶと思うから、それまでは何ができるかお楽しみタイムね。箕月先輩も頑張って創るから。じゃねっ」
「はい、よろしくお願いします！」

～…～…～…～…　・　…～…～…～…～

あれからきっかり３日後、箕月先輩から連絡が来た。
『よ、鈴ちゃん元気してるー？できたから来てほしいんだけど、今ボク手が離せなくてね、電車で来てね☆地図貼っとくからそれ見て来てね！路地狭くていっぱいあるけど間違えないようにねー』
「うぁっ………………………………」
思わずマヌケな声が出てしまった。
僕は極度の方向音痴、１つ角を曲がればもう終わりレベルなのだ。
それに電車？普段乗らないし、しかも反対側に行く電車に乗って気づかず県外まで出ていたことさえある。
不安すぎる!!
「どうしよ……でもついてきてくれる人とか………行くか、１人で…………」
これも何かの試練なのかも！

～…～…～…～…　・　…～…～…～…～

１時間後。
「は………………………っ、辿り着いた…っ！」
駅ではちゃんと駅員さんに行き先を聞いたり、いちいち地図を確認したり。
っていうか、どんだけ道入り組んでんだ……っ…！
まぁ、着いたから良しとしよう。上出来だ。
「う…じゃなくて箕月先輩、今着きました……！遅くなってすみませんん!!」
『あ、鈴ちゃん？今着いた？はは、頑張ったねぇ！ということでこの間来た部屋に入ってきてもらいたいんだけど…………さすがにボクがナビしようか』
そのあと左、右、次左～など家の中をナビしてもらい、無事部屋についた。
コンコン、とノックをしてドアを開く。
「失礼します………………………どぅえ!?」
またしてもマヌケな声が出てしまったが、部屋のその奥には大きなハサミが立てかけられていた。
「よぉよぉ鈴ちゃん。ビックリした？ちょっと大きいの作ってみたんだけど、どうかなー。ま使い方はまんまハサミなんだけどねぇ、あっはっは」
「でも………………これ大きい敵に不利なのでは？一応夜奇も首ちょんぱとかしないとダメなんじゃ………？僕そんな飛べませんし……」
「大丈夫大丈夫。そういうと思ってこちらもご用意いたしました。じゃーん、包丁～」
「包丁っ!?そそそんな物騒な」
「あは、大丈夫だって。こっちのほうが小回りきくと思うし、ハサミはボタンを押すとちっさくなるようになってるよ」
ボタンを押してみると、手のひらサイズのいつも使うやつになった。
「まぁ、というわけでコイツが今日から鈴ちゃんの相棒だよ」
相棒…………………！
少しばかり胸が躍った鈴だった。