ケイク・アローズ様は、私へ近づいてきた。

ヘアンナ『あら、ケイク様。お久しぶりですわね。』

ケイク『突然でごめんね。でも急に君の顔が思い浮かんだからさ。』

私は何もしていないのに私の顔が急に思い浮かんだ…想像すると気味が悪い。

ケイク様は、少し疲れた表情だったが、構わず私に喋りかけてくれた。

ケイク『客室に行く？廊下で話すのもあんまり礼儀正しいことじゃないからね。』

この人に礼儀という言葉が使えたんだ…と少々驚いた。私は客室にケイク様を招いた。また人と話さなければならないとなると気が重くなる。

一体何をするのか…と思いながら、私は客室の椅子に座った。ケイク様もそれと同時に椅子に座った。

ケイク『随分座り心地がいいね。やっぱりペペロンチーノ家は豪華で実に素敵だ。』

早速ペペロンチーノ家について褒めてくれた。転生前だったら、誰も褒めてくれるはずなかったなぁ。飾り付けを頼まれても、飾りについては何も褒めてくれなかった。

友達と呼べるものがそもそもいなかったのが一つの原因である。

ケイク『そういえば、僕が来る前に一体何をしていたの？』

客室から出てきたし、聞きたくなるのは仕方がないだろう。私は正直にケイク様に話すことにした。

ヘアンナ『客人を招いていたんですよ。丁度お話ししたいことがあったらしく。』

ケイク『へえ。でも噂によると、ヘアンナは客人を招いて一緒にお喋りするという機会は少ないと聞いたけど、今日は気分転換？』

もしかすると、ヘアンナ様はご自由すぎて、どんなに大事なことでも拒否してしまうのかもしれない。それが重要だったことも知らずに。

私はヘアンナ様のことを知らない。だから地道にヘアンナ様がどうだったかを知るしかない。

ヘアンナ『たまにはいいと思いまして。それに客人は私のことを褒めてくださった。とてもいい人でしたわよ。』

褒めることがいいことだったが、反社会派という立場はあまり良くないが…と感じた。

そしてケイク様は私にこう言った。

ケイク『ヘアンナとじっくりお話がしたいんだ。実は色々あって。』

ヘアンナ『色々って、なんですの？』

ケイク『…あまり恥ずかしいから言えないんだけど…。』

まっ、まさか、告白！？
…って、流石にないか…。そしてケイクはこう言った。

ケイク『僕の父上が、ヘアンナを僕の婚約者候補に入れているんだ。』

やっぱり婚約系ですか〜…と少し嫌な雰囲気を感じた。でもケイク様は順社会派だ。まあユーマ様も順社会派だったが、あれはあれで性格が終わっていたから…。

でもケイク様は私のことが好きなの？父上から強引に婚約されるのかしら。私は質問してみた。

ヘアンナ『ケイク様がお好きな方はいらっしゃるの？』

ケイク『え、いないよ。』

と、即答で言われた。どうやら恋愛経験は未経験と感じる。私のことは好きじゃないようだ。ただの知り合いとして見ているのかな？と感じる。

ケイク『そもそも結婚したくないんだ。子は、姉に任せればいい。』

ヘアンナ『姉様が？』

ケイク『嗚呼、政治家だ。今はとある男性と付き合っているらしい。そのまま婚約をすればいいのに…。』

ケイク『ヘアンナは僕のことが好き？』

姉様がいるとは知らなかった驚きでいっぱいだが、もっと驚きなのは、ケイク様がそんな質問をしないと思っていた私が馬鹿だったということにとても驚きを感じた。

私もケイク様に即答で返した。

ヘアンナ『あら、友人だと思っていますわよ。』

すると、急に太陽の光が明るく光った。そしてケイク様は少し真面目な顔で私に話しかけた。

ケイク『…それでお願いがあるんだ。』

ケイク『ヘアンナに頼みがある。』