「だからなんなんだよ！　果実って！？」

果実、それはケイトにとって聞き覚えのない言葉だった。

「…オレはトボけてるヤツが嫌いなんだよ……今から全部話してやる…0から100まできっちりとな…」

男は聞く耳を持たない。

「三ヶ月前……オマエはオレたちの住処から、果実を1個奪った。どうだ？　まだトボけるつもりか？」

おそらく、男は勘違いをしているのだろう。

「……あんたに色々話してもらったけど、1つ言わせてもらう…ボクは弟だ…『赤砥練冶』の弟だ！」

しかし、ケイトが言ったことは男に否定されてしまう。

「弟？　一体どこまでトボけるつもりなんだよ？　『弟』なんかいないって言っていたじゃねぇか…自分で言ったことも忘れるなんてとんだトボけ野郎だ…」

ケイトは男の言葉が理解することができなかった。
なぜ、兄のレンヤは弟であるケイトの存在を否定したのか。
しかし、男が言ってることが本当とは限らない。

「…何はともあれ…果実を返さないというのなら、始末する…」

しびれを切らした男は腕を振り払った。すると！

「うっ…なんだ…熱い！」

突如、強烈な熱風がケイトを襲う。

「これがオレの能力……例えるのならば、勝利の風だ…」

ケイトは、顔に向かってくる熱風を防ぎながら考えていた。

（…なんなんだよ…こいつは……風が吹いた…そしてなんでレンヤを追ってるんだ？　とにかく…こいつは普通の人じゃない…でも…どうすればいいんだ？……）

圧倒的なピンチのその時…

ケイトは頭の中から、声が聞こえ始めた。



[太字]（少年…決意を持て…決意を持たなければ先には進めない…そして…すでにそなたは『能力』を持っている…決意を持ったならば、向かうべき方向に拳を振るえ）[/太字]

どこから聞こえたのか、それは誰にも分からない。
聞こえたケイト自身でも。
だからこそ、ケイトは聞こえた言葉を信じるしかなかった。

（…すでに『能力』を持っているだって？　信じられないけどもう時間はない……防いでる時間がもったいない！　ならばあいつに拳を向けてやる！）

ケイトは、決意に染まった拳を男に振るった！

[大文字]「うおおォォーッ！！」[/大文字]

そのとき、ケイトの拳から[太字]『水の弾丸』[/太字]が発射された！

水は音を立て、男に衝突する。

「…何ッ！？　『[漢字]能力[/漢字][ふりがな]シン[/ふりがな]』だとッ！？」

勢いで男はのけぞる。


「これが、[太字]『能力』[/太字]…！？」

男は苦しい表情を見せる。

「くそっ！　まさか能力を持っているとは……」

そういうと、男はマンションの窓を突き破って部屋から飛び降りた。

ここはマンションの8階、普通の人間が飛び降りれば命は無い。

だがしかし…

あの男は無傷で、逃走していった。