「それ」は、ある日突然私＿天野翼に襲い掛かった。
「っ…あ”ぁ…痛、い……！」
二次創作小説を愛読する私の脳裏にはとある病名が浮かんでいた。
天使病＿。
それは、背中に少しずつ、天使のような小さな羽が生えてくる、という病だった。羽が生えるに伴って、背中に激痛が走るようになるらしい。その羽は、持ち主の命、体を少しずつ蝕み、美しい羽に育っていくという。
そのため、致死率は100％。
そんな噓のような病は、本当に存在していたのだ。
現に鏡を見れば、私の背中からは小さな羽が姿を見せている。
「…隠さないと、な」
突然すぎる実質「余命宣告」を受けた私は、ひとり部屋で呟いた。

天使病になって、分かったことは3つ。
背中の激痛は、いつでもどこでも私を襲ってくるということ。
羽が育っていくことに比例して、食欲がないことや嘔吐してしまうことが増えるということ。
そして＿本当に致死率は100％なんだということ。
本当に、死にそうになることを何度も経験した。
授業中、休み時間、放課後、寝ている時でさえ、羽は気まぐれに背中に激痛を走らせる。
羽が大きく育っていくことを確認するたびに、食べることへの欲求が自分でもわかるほどに薄れた。
えずいてもえずいても出ない嘔吐物に何度苦しめられたことか。まあ食べていないから当然のことなのだが。
そして、いつの間にか倒れてしまうことが多くなった。
学校にいる間は何とか耐えているのだが、体がふらついてしまうのだ。家に帰ってから部屋に入るまでの記憶はあるのに、そこからの記憶は全くなく、目覚めると床に倒れ込んでいるということを何度も経験した。時間にすると眠っているのは1時間程度なので、家族にバレるということはまだないが。
「隠し通すのって、ほんとに大変…」
そんなの最初から分かっていたことだっただろうに、後悔の一言を私は今日も呟くらしい。