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君にベールを掛けよう。

#3

第3話

「……何の話をするの」
「喋ってくれんの?」
「話せる範囲の話なら。」
「そっ」

「めんどくさい…」という気持ちが滲み出た表情だが、リリーはガブリエルの話を聞く事にした。根負けしたとも言う。
ガブリエルはそのままリリーの手を引いて一緒に広場のベンチに座った。リリーが便所の[漢字]蛞蝓[/漢字][ふりがな]ナメクジ[/ふりがな]を見るような目見て来たのは割愛。

「話せる範囲ってどのくらい?」
「私が話さなくなったら範囲外ってところかな。」
「ふーん、じゃあ好きな食べ物は?」
「強いて言うならポトフかな」
「へー意外。じゃあ好きな遊びは?」
「読書」
「ソレって遊びに入んだ。お勉強とかそっちの方じゃねの」

そんな何が好き、嫌いとかいう質問をガブリエルがして淡々とリリーが答えるだけの大凡会話とは言えない歪なコミュニケーション。
ガブリエルが質問をしてリリーが返す、これを繰り返すこと7回。8回目でついに変化が生まれる。

「リリーはなんでポトフが好き?」
「野菜が甘くて美味しいから。そういう君はどんな食べ物が好き?」

リリーがガブリエルに質問をした。
いきなりの変化にガブリエルは一瞬戸惑ったが、それ以上に自分には好きな食べ物が無いのでどう返せばいいのかわからなかった。
リリーは言葉数こそは少ないが、質問には嘘偽りなく答えてくれるので嘘の回答を答えるのは少し罪悪感を感じる。
どうしようかと悩んでからこの前ルイスがパスタが好きと言っていたのを思い出したので、リリーやルイスには悪いが答えを真似ようと考えてから口を開く。

「俺はパスタが、」

[中央寄せ]好き[/中央寄せ]

その言葉が出かかったとき、リリーと目が合った。
リリーの瞳はルイスと同じキラキラと輝くアメジストの瞳。リリーとルイスは双子なのに全然似てない。
でも、その瞳だけはそっくりでガブリエルは一瞬だけルイスとリリー、どっちと話しているのかを忘れかけて、
そして3秒の間を開けてからカブリエルは本当のことを言った。

「好きな食べ物は特に無いかな」

リリーは「そうなんだ」とだけ返してベンチから立ち上がる。
あれだけしっかりリリーの腕を握っていたガブリエルの手は会話も間にゆるくなっていて、リリーが腕を動かすだけで簡単に外れた。

「じゃあ、私が君の好きな食べ物候補の一つを推薦するよ」
「ポトフ?」
「いや、ローストビーフ。美味しいから機会があれば食べてみて」
「ふーん。あんがと」
「じゃあ寒いから帰るね」

ガブリエルはリリーの背中に向かって話しかけた。

「なぁ、またお前と話せる?」
「さぁ、どうだろ。分からないわ。」

こちらを見つめるアメジストの瞳は何処までも澄んでいて純粋に美しいが、一体何をどう感じているのかという感情は一切読み取れない。
人を映すが、寄せ付けない瞳はルイスとは似ても似つかないリリーだけが持つ瞳。

「じゃあ俺から会いに行くよ」
「私じゃなくてルイスと遊んだら」
「じゃあ3人で遊ぼうぜ」
「気が向いたらね」

そんな瞳にガブリエルは恋をした。

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2024/04/14 16:23

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