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君にベールを掛けよう。

#2

第2話

渓谷街の誰もが寝静まる真夜中____
リリーはこっそり寝床を離れて渓谷にある渓谷街の中でも深い位置にある小さな広場へとやって来ていた。
ここは採掘場で死んだ男の悪霊が出てくるという噂で街子供達は寄りつかないし、大人達にもあまり知られていないので、人と関わるのが苦手なリリーは静かなこの場所を気に入っていた。
それに、誰もいないので思う存分自分の“趣味”を楽しむ事ができる…………と、思っていたが広場にはまさかの先客がいた。
リリーはそれがわかった途端に引き返そうとクルッと振り返って歩き出そうとしたが、


[中央寄せ][大文字]ドン![/大文字][/中央寄せ]


足を滑らせ、背中で大きな音を立てながら転んでしまった。
リリーはジリジリとした焼くような痛みを背中に感じながら、美しい夜空を見上げた。つまり、痛みのせいで起き上がるやる気を無くして、現実逃避の一環で上を向いているだけである。
しかし、大きな音を聞いてやってきた先客の顔が夜空を遮ったことで現実に引き戻される。

「リリーじゃん、こんな夜中にどうしてこんな所に?」
「こんばんは、ミカエルくん。そのセリフそっくりそのまま返すね」
「……俺はガブリエルだ」
「そうだったけ?」

先客__ガブリエルはリリーの双子、ルイスと同い年の友達であるが、リリーにとってはただの顔見知りなので[漢字]態々[/漢字][ふりがな]わざわざ[/ふりがな]この広場に来た理由(リリーの趣味について)を教えてやる義理はない。
それに笑い方がちょっと胡散臭いかた苦手……と、リリーはノロノロと立ち上がって広場を出て行こうと歩き出した。

「どこ行くんだ」
「家に帰るだけだよ」
「何で?」

「寒いし、君が[漢字]広場[/漢字][ふりがな]こんなとこ[/ふりがな]に居るからだよ。」という言葉は飲み込んで、

「寒いの」

とだけ答えた。
いつも元気に話をするルイスよは違い、随分ぶっきらぼうに答えるリリーをどう思ったのかガブリエルは「もうちょっと話そうぜ」と砕けた口調で誘う。
しかし口調とは裏腹にリリーの手をしっかり掴み、逃がさないという意志を感じるのは気のせいだろうか……

「話すことは何もないでしょ。手、離して」
「そう言わずに」

良く言えば完璧、悪く言えば胡散臭い笑みを浮かべたままガブリエルはリリーを見つめる。
リリーはガブリエルの手を解こうともがくが、一ミリも動かない。


そんな状況が暫く程続いて、先に根負けしたのはリリーだった。

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2024/04/14 16:22

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