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運命の天秤

#6

4 小さな綻び

アドニア王国は新たな危機に面していた。

多額の借金を負い、税を引き上げ、民衆の生活は苦しくなるばかり。見かねた者たちは、早いうちから国を移っていった。

「国王、このままでは…」
「我は敵国の侵略を阻止した。ほかに頼みがあるなら対価を差し出せ」

国のために自らの命をかける者はいなかった。悪魔は久しぶりの身体を楽しみ、些細なことにいちいち驚いていた。

だが、悪魔は遊びにふけっていたばかりではない。

(人間とは欲の塊だ。我はこの愚かな者たちを滅さなければいけない)

悪魔が国王の身体を意のままに動かせるようになった頃。悪魔は人間としての振る舞いを一通り身に着けた。

「国王、そろそろ民衆の暴動がおこります…対応を…」
「はあ⤵」

「これだから人間は苦手なのだ」
「何かおっしゃいましたか?」

悪魔は何でもないと手を振った。

(まあ、その人間がいなければ私たちの存在意義がなくなってしまうのか…)

悪魔たちは世界中に散らばり、人間の欲望に付け込んでいる。彼らが仕えているのは”サタン”という名の悪魔だ。サタンは天から堕ち、悪魔となった堕天使で、悪魔の総元締めをしている。

「よお、久しぶりだな。アガリアレプト」

どこからともなく聞こえてくる声に、側近は身を震わせた。アガリアレプトと呼ばれる悪魔(国王の姿をした)は、ゆっくりと口を開く。

「サタナキア、か?」

「ピンポーン」と、間の抜けた音が鳴る。途端に濃紺のコートに身を包んだ男が姿を現した。灰色の髪と、同じ色の瞳。誰が見ても美しいと思う顔立ち。

「元気か?最近見なかったから」
「私は元気だ。いついかなる時でも」

この[漢字]二柱[/漢字][ふりがな]ふたり[/ふりがな]は、サタンの忠実な配下であり、人間でいう友人のような仲だった。お互い、「”サタナ”」「”アガリ”」と呼び合っている。

「早く本題に入れ」

アガリは足を踏みかえ、問いかける。サタナは肩をすくめ、口を開いた。

「サタン様からの伝言だー」




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作者メッセージ

ご拝読、ありがとうございましたm(_ _)m

~補足情報~
サタナキア…あらゆる女性を意のままに操れる(らしい)
アガリアレプト…秘密を暴ける(らしい)

2024/04/13 13:59

月夜の番人(月乃彩) ID:≫upPBVAJwaUclE
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