次の日。僕はなぜかいち早く学校に行くことにした。学校に着き、鞄を席のところで下ろした。そして、いつも通りに席についた。昨日のことを僕はさっぱりと忘れることにした。そう、何もなかった。それでいい。僕のまたぼっちの日常が始まる。僕は自分の心を安心させる。徐々に教室に人が入っていった。何分かするとついにあいつがやってきた。
「みんなおはよ〜！」
笑顔でやってきたのは狐坂さんだった。狐坂さんが教室に入るとクラスの大体の人が彼女へ近づいていった。すると、彼女が僕の方へ駆け寄ってきた。僕は急に昨日あったことを思い出す。寒気がした。
「岩森くんも、おはよ？」
「ああ、うん。おはよ」
なぜ僕に話しかけたのかが不思議だった。周りにいた人たちも困惑してなにも言えてなかった。一人の男子生徒がその嫌な沈黙の中聞いた。
「なんでそんな空気みたいなやつに話しかけるんすか？」
彼女は顎に指を付けて少しだけ考える。
「私みんなにおはよって言ったのに、帰ってこない人がいるとなんか嫌な気分になっちゃうんだ。」
彼女の雰囲気は昨日とは全く違った。昨日は少し気が強目というかなんというか言いにくい感じの雰囲気を出していたが、今は優しく言うともう少し穏やかで乙女っぽかった。強めに言えば、自称天然ぶりっ子になる一歩手前ぐらいだ。
彼女の発言に周りの男子は「なんなら俺が2回言ってあげる」とか「明日言わないからあいつに言ったことと同じこと言って」などと言っていた。正直キモかった。彼女はまた、僕の席から離れ、いつもの定位置についた。僕はいつも通りゆいちゃんを見ようと机の上を見た。そこには手紙が置いてあった。この手紙が誰からなのかは一瞬で分かった。狐坂さんだ。あのタイミングで置けるのは彼女しかいない。僕はゆっくり手紙を読み始めた。
『岩森くんへ
昨日のことについて話したいことがある。うちに来て。来なかったら警察に訴えるから。』
いやいや狐坂ん家わかんねーよ！そもそも狐坂さんの家に入るなんて難易度が高すぎる。誰かに見られたら直ぐにクラス全員を敵にしてしまう。
僕は手紙の裏を見た。そこにまだ続きが書いてあった。
『あ、ごめん。そういや家の場所わかんなかったよね。じゃあ、私と一緒に帰ろっか。』
一気に難易度が上がってしまった。それならまだ、住所を書いといてもらって僕が行ったほうがよかった。
僕は手紙を怒りと共に鞄に閉まった。そして、僕は狐坂さんを睨みつけた。すると彼女はこちらを見て満足気にニヤッと笑った。僕の彼女への好感度はこの時に一気にマイナスへ下がった。