[漢字]狐坂初九[/漢字][ふりがな]こさかはつく[/ふりがな]。それはクラスの中心にいる存在だった。成績も運動もそこそこの彼女だったが、優しく元気でクラスを一つにまとめることができるのが彼女だった。しかし、彼女にたくさんの友達がいるのは、珍しい容姿からなのだと思う。綺麗な白髪にぱっちりと開いた目。整った顔立ちが彼女を沸き立たせているように感じる。まさに僕と正反対だった。唯一似てるのは運動神経ぐらいだろうか。頭はいい方だが、僕も運動は苦手だ。僕の外見は酷いものだ。伸びすぎた前髪で外からは目が見えず、さらにはメガネをしている。顔も平凡で、アニメでよく顔を描かれるのをカットされるモブと同じくらいだ。自分からは声をかけられず、また誰からも声をかけられず、教室では隅で一人ぼっち。休み時間中はいつも机の傷を眺めている。眺めていて楽しいと僕は思う。人の顔のような傷があったりする。僕は時々その人に向けて心の中で喋ったことがある。その日からゆいちゃん(傷の名前)とは唯一無二の友となった。ゆいちゃん…僕は一回君と会ってみたいよ。
　学校が終わった。僕は人よりいち早く下校した。僕は塾に行っているので早めに帰らなければならない。家に帰り、制服から私服に着替えた。そして、あらかじめ用意をしていた鞄を持ってすぐに出発した。僕が塾に行くまでの道のりは普通とは少し違う。僕は途中にある立ち入り禁止の大きなビルの中を通っていく。ビルの反対側の入り口を行くまでは少し大変だが慣れれば全然余裕に行くことができる。この中を通っていくことで遠回りの道を通った時より15分早く着くことができる。これで遅刻をしなくなった。今日も人目を気にしながらビルの中へ入る。中に入ると僕の目の前を素早く走り去っていく白い物体が目に入った。僕は気になってしまった。そして、塾のことも忘れて無我夢中にそれを追いかけた。それは急に一つの会議室で立ち止まった。僕はそっと隠れながら白い物体を見た。白い物体の正体は狐だった。普通の狐は橙色に輝いた黄金の色をしているはずだが、この狐は真っ白な綺麗な狐だった。しっぽの先が青色になっている奇妙な狐だった。僕は目が離せなくなり、その白い狐をずっと眺めていた。するとみるみるうちに狐が見たことのある人間に変化した。その人は狐坂初九だった。