色がない世界で
瑞希視点
瑞「はぁ…。」
まぁ、一人殺したくらいじゃあだめか。
じゃあ、もう[漢字]牢獄[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]にいる意味がないよね。
じゃあ、もう[漢字]牢獄[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]から出ていこう。
意味がないんだから。
瑞「好都合だな…。」
今なら、監視官もいない。
周りに人もいない。
やっぱり俺は運がいいのかも。
牢獄の小さな窓に手を掛ける。
その窓からはいつもきれいな満月が見えていた。
でも今日は俺を照らす、小さなスポットライトのようだった。
瑞「よいしょっと…。」
結構簡単に窓から通り抜けることができた。
瑞「それじゃあね。湊。これでさよならだ。」
ばいばい。
散々君のことを利用した、僕からの最後の言葉。
面と向かって言えないけれど、うれしかったんだ。
君という話し相手がいてくれたから、この生活も楽しめた。
素直になれない、俺の最後のわがままだから。
許してほしい。
俺は、その代わり全部を背負うから。
まどから出る前、とあるものを落としていった。
湊などの人に向けた、手紙だ。
警察なら、俺の知り合いにもわたしてくれるだろって思って。
だが、その手紙の中から一つを除いた。
その手紙は、面と向かって渡したかったから。
瑞「懐かしい…」
久しぶりに土鈴街に帰ってきた。
なんだか少し変わったような変わってないような。
でも根本は一つも変わっていない、俺の大好きな街だった。
俺の居場所だった、町だ。
俺は誘われるように、一番の居場所へ向かった。
あの”2人”と行っていた、俺のちっぽけな幸せだった時間が残っている場所へ。
瑞「ここも変わってなかったな…。」
俺の思い出が全部詰まっている、あの事務所。
[漢字]弟[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]が死んだ後からなにも変わらない、
ちょっと埃が舞っている事務所。
瑞「…ふふっ。」
あぁ、久しぶりに笑った。
俺、楽しかったな。あの時。
あの時、幸せだったな。
一緒にゲーセンいって、一緒になんか食べて、一緒になんかゲームして。
ただくだらないことだけど、ただそれだけだけど。
すっごい幸せだった。
瑞「はぁ…ッ楽しかったな…ッ」
いつの間にか、涙が溢れ出てきた。
もう、泣かないって決めてたのに。
止まらなくて。
喉がきゅって苦しくて。
ただただ苦しくて。
その場にうずくまった。
瑞「なんでこうなったんだよ…ッ」
ハッピーエンドが欲しかった。
[太字]キレイゴト[/太字]で全部埋めても良いから。
全部、うすっぺらくてもいいから。
ただただ、普通に生きて、普通に楽しんで、普通に幸せになりたかっただけ。
瑞「…だめだ。俺は…。」
めちゃくちゃな心をこの事務所に置いて、はやく出ていこう。
”俺”が、俺じゃなくなる前に。
純粋だった少年の俺に、戻る前に。
ふらふらと街を歩きだす。
瑞「最後に君に会いに行かなきゃ。」
そういってまた歩き出す。
どこにいくかって?
そんなの決まってるじゃないか。
[漢字]弟[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]が眠っている墓だ。
そして彼の墓に手を合わせた。
一呼吸置きながら、[漢字]墓[/漢字][ふりがな]きみ[/ふりがな]へ話し始めた。
瑞「…ねぇ、さっき俺土鈴街に行ってきたんだ。事務所にも行ってきたよ。」
瑞「街は、変わったようで変わってなくて…あの時と似たような感じだったよ。」
瑞「事務所は…埃がかぶっちゃってたけど、変わらない姿だったよ。」
瑞「…俺の人生、大変なことになっちゃった。でもさ、責任はとるよ。」
瑞「一応、手紙も書いたんだ。お世話になった人全員に。」
瑞「だから、リーダーにもあげるね。」
そうして墓の目の前に手紙を置いた。
瑞「…ちゃんと見てね。”あっち”で。」
瑞「ばいばい。…またね。」
彼の墓に手を振り、その場を後にした。
次は、俺の入社した会社の前を通った。
瑞「まぁ…こんな深夜だし、そりゃあ電気ついてないか。」
でも、そこら辺のビルより高くて、さすがだなと思った。
瑞「…俺も、普通に生きれたら、成功した社長の息子として生きていけたのかな。」
バカらしいな、なんて自分で思って。
瑞「はぁ…つくづく救いようがないや…。」
瑞「…。」
そして、最後の目的地に向かった。
そこは海が見える高台だ。
夜の海はきれいで、でも何かが襲ってきそうな雰囲気もあって。
瑞「…今だけは、犯罪者の[太字]”九条神楽”[/太字]じゃなくて、少年の瑞希に戻らせてよ。」
誰に向かって言っているのかわからない、独り言をつぶやく。
瑞「俺ね、結構我慢してきたんだ。つらくても、泣かないようにしようって。」
瑞「できるだけ、”普通”になろうとしたんだ。」
瑞「みんな耐えてるから、俺も耐えなきゃって。」
瑞「でもさ、無理だったんだ。」
瑞「現代社会にいるような、普通の人になんかなれないよ。」
瑞「でもそうでしょ?大人になるって、基準はなんなの?」
瑞「お酒を飲めるようになるのは20歳からだけど、そっから大人なわけないよね?」
瑞「じゃあ、悪ふざけしてる大学生はどうなるのって話だし。」
瑞「まぁ、話を戻して…。でもね、この人生も案外悪くなかったかもね。」
瑞「[太字]”最期”[/太字]にわがまま言わせて。」
瑞「…もし、生まれ変われたら。」
[明朝体]普通の家で普通に育って普通に幸せに生きたい________。[/明朝体]
その瞬間、俺はその高台から身投げをした。
あぁ、本当だ。
落ちるときって、本当にスローに感じるのか。
確かに堕ちるのも一瞬だしな。
あぁ、でもこれでまた君に会えるね。
怒られちゃうかな。まだ来るには早すぎるって。
それも殺害までして…って。
仕方ないじゃないか、俺がしたかったんだし。
でも、もうなにも考えたくないや。
ただ潮風がふく。
俺の髪や服がなびく。
どんどん高台の地面が遠くなっていく。
その瞬間、俺は冷たい海に放り投げだされた。
冷たくて、でもなんでか幸せで。
やっと、本当の自分になれた気がして。
どんどん沈んでいく。
俺の意識と共に。
[明朝体]ごめん、今逝くから。[/明朝体]
瑞「はぁ…。」
まぁ、一人殺したくらいじゃあだめか。
じゃあ、もう[漢字]牢獄[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]にいる意味がないよね。
じゃあ、もう[漢字]牢獄[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]から出ていこう。
意味がないんだから。
瑞「好都合だな…。」
今なら、監視官もいない。
周りに人もいない。
やっぱり俺は運がいいのかも。
牢獄の小さな窓に手を掛ける。
その窓からはいつもきれいな満月が見えていた。
でも今日は俺を照らす、小さなスポットライトのようだった。
瑞「よいしょっと…。」
結構簡単に窓から通り抜けることができた。
瑞「それじゃあね。湊。これでさよならだ。」
ばいばい。
散々君のことを利用した、僕からの最後の言葉。
面と向かって言えないけれど、うれしかったんだ。
君という話し相手がいてくれたから、この生活も楽しめた。
素直になれない、俺の最後のわがままだから。
許してほしい。
俺は、その代わり全部を背負うから。
まどから出る前、とあるものを落としていった。
湊などの人に向けた、手紙だ。
警察なら、俺の知り合いにもわたしてくれるだろって思って。
だが、その手紙の中から一つを除いた。
その手紙は、面と向かって渡したかったから。
瑞「懐かしい…」
久しぶりに土鈴街に帰ってきた。
なんだか少し変わったような変わってないような。
でも根本は一つも変わっていない、俺の大好きな街だった。
俺の居場所だった、町だ。
俺は誘われるように、一番の居場所へ向かった。
あの”2人”と行っていた、俺のちっぽけな幸せだった時間が残っている場所へ。
瑞「ここも変わってなかったな…。」
俺の思い出が全部詰まっている、あの事務所。
[漢字]弟[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]が死んだ後からなにも変わらない、
ちょっと埃が舞っている事務所。
瑞「…ふふっ。」
あぁ、久しぶりに笑った。
俺、楽しかったな。あの時。
あの時、幸せだったな。
一緒にゲーセンいって、一緒になんか食べて、一緒になんかゲームして。
ただくだらないことだけど、ただそれだけだけど。
すっごい幸せだった。
瑞「はぁ…ッ楽しかったな…ッ」
いつの間にか、涙が溢れ出てきた。
もう、泣かないって決めてたのに。
止まらなくて。
喉がきゅって苦しくて。
ただただ苦しくて。
その場にうずくまった。
瑞「なんでこうなったんだよ…ッ」
ハッピーエンドが欲しかった。
[太字]キレイゴト[/太字]で全部埋めても良いから。
全部、うすっぺらくてもいいから。
ただただ、普通に生きて、普通に楽しんで、普通に幸せになりたかっただけ。
瑞「…だめだ。俺は…。」
めちゃくちゃな心をこの事務所に置いて、はやく出ていこう。
”俺”が、俺じゃなくなる前に。
純粋だった少年の俺に、戻る前に。
ふらふらと街を歩きだす。
瑞「最後に君に会いに行かなきゃ。」
そういってまた歩き出す。
どこにいくかって?
そんなの決まってるじゃないか。
[漢字]弟[/漢字][ふりがな]あいつ[/ふりがな]が眠っている墓だ。
そして彼の墓に手を合わせた。
一呼吸置きながら、[漢字]墓[/漢字][ふりがな]きみ[/ふりがな]へ話し始めた。
瑞「…ねぇ、さっき俺土鈴街に行ってきたんだ。事務所にも行ってきたよ。」
瑞「街は、変わったようで変わってなくて…あの時と似たような感じだったよ。」
瑞「事務所は…埃がかぶっちゃってたけど、変わらない姿だったよ。」
瑞「…俺の人生、大変なことになっちゃった。でもさ、責任はとるよ。」
瑞「一応、手紙も書いたんだ。お世話になった人全員に。」
瑞「だから、リーダーにもあげるね。」
そうして墓の目の前に手紙を置いた。
瑞「…ちゃんと見てね。”あっち”で。」
瑞「ばいばい。…またね。」
彼の墓に手を振り、その場を後にした。
次は、俺の入社した会社の前を通った。
瑞「まぁ…こんな深夜だし、そりゃあ電気ついてないか。」
でも、そこら辺のビルより高くて、さすがだなと思った。
瑞「…俺も、普通に生きれたら、成功した社長の息子として生きていけたのかな。」
バカらしいな、なんて自分で思って。
瑞「はぁ…つくづく救いようがないや…。」
瑞「…。」
そして、最後の目的地に向かった。
そこは海が見える高台だ。
夜の海はきれいで、でも何かが襲ってきそうな雰囲気もあって。
瑞「…今だけは、犯罪者の[太字]”九条神楽”[/太字]じゃなくて、少年の瑞希に戻らせてよ。」
誰に向かって言っているのかわからない、独り言をつぶやく。
瑞「俺ね、結構我慢してきたんだ。つらくても、泣かないようにしようって。」
瑞「できるだけ、”普通”になろうとしたんだ。」
瑞「みんな耐えてるから、俺も耐えなきゃって。」
瑞「でもさ、無理だったんだ。」
瑞「現代社会にいるような、普通の人になんかなれないよ。」
瑞「でもそうでしょ?大人になるって、基準はなんなの?」
瑞「お酒を飲めるようになるのは20歳からだけど、そっから大人なわけないよね?」
瑞「じゃあ、悪ふざけしてる大学生はどうなるのって話だし。」
瑞「まぁ、話を戻して…。でもね、この人生も案外悪くなかったかもね。」
瑞「[太字]”最期”[/太字]にわがまま言わせて。」
瑞「…もし、生まれ変われたら。」
[明朝体]普通の家で普通に育って普通に幸せに生きたい________。[/明朝体]
その瞬間、俺はその高台から身投げをした。
あぁ、本当だ。
落ちるときって、本当にスローに感じるのか。
確かに堕ちるのも一瞬だしな。
あぁ、でもこれでまた君に会えるね。
怒られちゃうかな。まだ来るには早すぎるって。
それも殺害までして…って。
仕方ないじゃないか、俺がしたかったんだし。
でも、もうなにも考えたくないや。
ただ潮風がふく。
俺の髪や服がなびく。
どんどん高台の地面が遠くなっていく。
その瞬間、俺は冷たい海に放り投げだされた。
冷たくて、でもなんでか幸せで。
やっと、本当の自分になれた気がして。
どんどん沈んでいく。
俺の意識と共に。
[明朝体]ごめん、今逝くから。[/明朝体]
このボタンは廃止予定です