LOUP!!
#1
「猿ちゃん、今日はなんの日?なんの日だと思う?」
「知らねーよ」
「そんな事言わずに!」
ここはカリスマハウス。毎日のように謎の喧騒が起こる家。
そんな家の中、二人の青年が会話をしていた。
「今日はほら、大事な日でしょ?ねぇ、猿ちゃん!」
そう口にする青年は、[漢字]本橋依央利[/漢字][ふりがな]もとはしいおり[/ふりがな]といった。
もう片方の青年__[漢字]猿川慧[/漢字][ふりがな]さるかわけい[/ふりがな]は、彼の言葉に対し、怒り気味に反応をした。
「はぁ?ぜんっぜん大事じゃねーし!フツーの日だし!」
それに対し、依央利は「不思議の国のアリスじゃん」と呟く。
そう、今日は__猿川慧、彼の誕生日なのである。
「はぁ…。全くもう!今日は猿ちゃんの誕生日、でしょ?」
「はぁ?ちげーし!」
「そんな訳がないでしょ。そこまで反発するか?」
猿川、彼は"反発"のカリスマ。
カリスマに関する説明は省くが、一言で言ってしまうと「彼は何に対してもNOと言う」という感じだ。
依央利が今した発言にも、彼は反発してしまうのだ。反発してしまう理由はわからないが、強いて理由を付けるなら「カリスマだから」である。
「猿ちゃん、誕生日パーティーの準備したから来て?」
「行かねーよ、そんなもん」
「えぇー…主役がいないとダメだって!」
「じゃあダメでいろ!俺は行かねー!」
今この会話は、猿川慧の自室前で行われているが、もう自室のドアは、閉ざされようとしていた。
「来てよー!」
「行かねー!俺は行かねー!」
二人は、数十秒ほどこんな会話をしていた。このままじゃ埒が明かないと思った依央利は、どうにかして彼を呼び出す方法を考える。
そしてその時。依央利は一つのアイデアを思いついた。
__少し前のこと。カリスマハウスの住居者、テラと慧がしていた会話。
「ねぇ猿くん。絶対に、そこにある僕のバッグを取ってきて、僕に渡しちゃダメだからね?」
「ほらよ」
「ありがとー」
「…あっ!!クッソー!!まただー!」
二人のこの会話を、依央利はふと思い出した。
「…猿ちゃん」
「んだよ」
「誕生日会に絶対に参加しちゃダメだからね」
「おう、参加してやるよ」
「……」
上手く行かないことも、視点を変えれば上手くいくという事、人生で一回はあるだろう。依央利は今、それを体験している。
「なるほど、猿ちゃんの扱いはこうすれば良かったのか」
「…えっ、あっ!!」
「こっち来てねー」
「あー!!またかよー!
[太字]生きづれー!![/太字]」
[水平線]
「みなさーん、猿ちゃん連れてきましたよ」
「やっと来た!」
カリスマハウスには、依央利と慧を含め、今7人の住居者がいる。
彼らにも、慧の誕生日を祝う気持ちがあった。はたから見れば、他人の誕生日を祝うような性格なのか、と思えるような人もいるが。
「さて、ケーキは…」
「あ、俺が食った」
「えぇ!?」
「ふみやさん!人の誕生日なんですから、ケーキを食べないで!」
「大丈夫ですよみなさん。そんな事も予想して、もう一つケーキ用意してあったので!」
なぜか誕生日ケーキが食べられているが、カリスマハウスではこれは日常だ。
慧は皆の掛け合いを聞き、ただそこに立っていた。誕生日会だよな?俺一応主人公だよな?なんでなんかちょっと置き去りみたいになってんだ、と思っていた。
「猿川さん、誕生日おめでとうございます。いつもセクシーでいてくれて、ありがとうございます」
謎の祝いや感謝もそこそことなり、今やっと、誕生日会らしい事が行われた。
「さて、ロウソク差したし!猿ちゃん、ほら」
テーブルにあったのは、きれいに飾り付けされた誕生日ケーキだった。店で買ったのかと思われるが、依央利の手作りである。
「…おう」
「素直なんだ、すごーい」
「るっせぇな」
そう言って、ケーキのろうそくの火は、静かに消された。火が消えると同時に、クラッカーの破裂音が響く。
「おめでとー!!」
「おめでとうございます…」
「猿、おめでとう」
「猿呼びすんな!」
「本日の主役」と書かれたタスキを誰かに掛けられながら、猿川は怒り顔で皆の言葉に反発する。
「そうだ猿ちゃん、これは僕からの誕生日プレゼント」
依央利が、猿川に対しプレゼントを渡す。プレゼントは、清潔な包みの中にあって、猿川はそれを大雑把に開けた。
「これ…」
「ずっと欲しいって言ってたでしょ」
彼が渡したのは、猿川がずっと欲しがっていた、あるバンドの入手困難なCDだった。
「お、おう…」
依央利が渡したのを皮切りに、彼らは猿川に集まり、プレゼントを渡す。
ある者は絵、ある者は自らの写真集、ある者は謎の布面積が少ない下着…、といった具合に渡され、それはもう自分のあげたい物をあげてるだけじゃないか、と思われるプレゼントもあった。
「なんでこんなんばっかなんだ…?ってお前ら!離れろ!鬱陶しいわ!」
依央利がケーキを切り分けている間も、彼はプレゼントを渡され、押し寄せてくる住居者たちにもみくちゃにされていた。
「はい猿ちゃん、ケーキ」
依央利がケーキを渡し、やっと猿川は少し開放された。開放というか、スペースができたというか。
「はぁー、お前らすぐ集まりすぎな!少しはゆっくりさせろ!」
猿川の顔は、はたから見れば怒っているように見える。だが、カリスマハウスに住んでいる人たちは、知っている。
「あ、今猿ちゃん、嬉しいでしょ?楽しいとか」
「嬉しくねぇし楽しくもねぇ!」
「そんな事言って〜猿くん楽しそうだし」
彼が今、この誕生日会をめいっぱい楽しんでいるという事を、彼らは知っている。
「猿ちゃん」
「んだよ」
「誕生日おめでとう」
「……めでたくねぇし!!!」
「知らねーよ」
「そんな事言わずに!」
ここはカリスマハウス。毎日のように謎の喧騒が起こる家。
そんな家の中、二人の青年が会話をしていた。
「今日はほら、大事な日でしょ?ねぇ、猿ちゃん!」
そう口にする青年は、[漢字]本橋依央利[/漢字][ふりがな]もとはしいおり[/ふりがな]といった。
もう片方の青年__[漢字]猿川慧[/漢字][ふりがな]さるかわけい[/ふりがな]は、彼の言葉に対し、怒り気味に反応をした。
「はぁ?ぜんっぜん大事じゃねーし!フツーの日だし!」
それに対し、依央利は「不思議の国のアリスじゃん」と呟く。
そう、今日は__猿川慧、彼の誕生日なのである。
「はぁ…。全くもう!今日は猿ちゃんの誕生日、でしょ?」
「はぁ?ちげーし!」
「そんな訳がないでしょ。そこまで反発するか?」
猿川、彼は"反発"のカリスマ。
カリスマに関する説明は省くが、一言で言ってしまうと「彼は何に対してもNOと言う」という感じだ。
依央利が今した発言にも、彼は反発してしまうのだ。反発してしまう理由はわからないが、強いて理由を付けるなら「カリスマだから」である。
「猿ちゃん、誕生日パーティーの準備したから来て?」
「行かねーよ、そんなもん」
「えぇー…主役がいないとダメだって!」
「じゃあダメでいろ!俺は行かねー!」
今この会話は、猿川慧の自室前で行われているが、もう自室のドアは、閉ざされようとしていた。
「来てよー!」
「行かねー!俺は行かねー!」
二人は、数十秒ほどこんな会話をしていた。このままじゃ埒が明かないと思った依央利は、どうにかして彼を呼び出す方法を考える。
そしてその時。依央利は一つのアイデアを思いついた。
__少し前のこと。カリスマハウスの住居者、テラと慧がしていた会話。
「ねぇ猿くん。絶対に、そこにある僕のバッグを取ってきて、僕に渡しちゃダメだからね?」
「ほらよ」
「ありがとー」
「…あっ!!クッソー!!まただー!」
二人のこの会話を、依央利はふと思い出した。
「…猿ちゃん」
「んだよ」
「誕生日会に絶対に参加しちゃダメだからね」
「おう、参加してやるよ」
「……」
上手く行かないことも、視点を変えれば上手くいくという事、人生で一回はあるだろう。依央利は今、それを体験している。
「なるほど、猿ちゃんの扱いはこうすれば良かったのか」
「…えっ、あっ!!」
「こっち来てねー」
「あー!!またかよー!
[太字]生きづれー!![/太字]」
[水平線]
「みなさーん、猿ちゃん連れてきましたよ」
「やっと来た!」
カリスマハウスには、依央利と慧を含め、今7人の住居者がいる。
彼らにも、慧の誕生日を祝う気持ちがあった。はたから見れば、他人の誕生日を祝うような性格なのか、と思えるような人もいるが。
「さて、ケーキは…」
「あ、俺が食った」
「えぇ!?」
「ふみやさん!人の誕生日なんですから、ケーキを食べないで!」
「大丈夫ですよみなさん。そんな事も予想して、もう一つケーキ用意してあったので!」
なぜか誕生日ケーキが食べられているが、カリスマハウスではこれは日常だ。
慧は皆の掛け合いを聞き、ただそこに立っていた。誕生日会だよな?俺一応主人公だよな?なんでなんかちょっと置き去りみたいになってんだ、と思っていた。
「猿川さん、誕生日おめでとうございます。いつもセクシーでいてくれて、ありがとうございます」
謎の祝いや感謝もそこそことなり、今やっと、誕生日会らしい事が行われた。
「さて、ロウソク差したし!猿ちゃん、ほら」
テーブルにあったのは、きれいに飾り付けされた誕生日ケーキだった。店で買ったのかと思われるが、依央利の手作りである。
「…おう」
「素直なんだ、すごーい」
「るっせぇな」
そう言って、ケーキのろうそくの火は、静かに消された。火が消えると同時に、クラッカーの破裂音が響く。
「おめでとー!!」
「おめでとうございます…」
「猿、おめでとう」
「猿呼びすんな!」
「本日の主役」と書かれたタスキを誰かに掛けられながら、猿川は怒り顔で皆の言葉に反発する。
「そうだ猿ちゃん、これは僕からの誕生日プレゼント」
依央利が、猿川に対しプレゼントを渡す。プレゼントは、清潔な包みの中にあって、猿川はそれを大雑把に開けた。
「これ…」
「ずっと欲しいって言ってたでしょ」
彼が渡したのは、猿川がずっと欲しがっていた、あるバンドの入手困難なCDだった。
「お、おう…」
依央利が渡したのを皮切りに、彼らは猿川に集まり、プレゼントを渡す。
ある者は絵、ある者は自らの写真集、ある者は謎の布面積が少ない下着…、といった具合に渡され、それはもう自分のあげたい物をあげてるだけじゃないか、と思われるプレゼントもあった。
「なんでこんなんばっかなんだ…?ってお前ら!離れろ!鬱陶しいわ!」
依央利がケーキを切り分けている間も、彼はプレゼントを渡され、押し寄せてくる住居者たちにもみくちゃにされていた。
「はい猿ちゃん、ケーキ」
依央利がケーキを渡し、やっと猿川は少し開放された。開放というか、スペースができたというか。
「はぁー、お前らすぐ集まりすぎな!少しはゆっくりさせろ!」
猿川の顔は、はたから見れば怒っているように見える。だが、カリスマハウスに住んでいる人たちは、知っている。
「あ、今猿ちゃん、嬉しいでしょ?楽しいとか」
「嬉しくねぇし楽しくもねぇ!」
「そんな事言って〜猿くん楽しそうだし」
彼が今、この誕生日会をめいっぱい楽しんでいるという事を、彼らは知っている。
「猿ちゃん」
「んだよ」
「誕生日おめでとう」
「……めでたくねぇし!!!」
このボタンは廃止予定です
/ 1
この小説はコメントオフに設定されています