「さぁ、今日も全速前進よ！」
「ボ、ボス！お願いですから、傘をしまってくださいー！！」
立派な傘を持ち、青色の目を輝かせながら[漢字]航走[/漢字][ふりがな]こうそう[/ふりがな]する人。
彼女の名はナヴィア。ギャングである[漢字]棘薔薇の会[/漢字][ふりがな]スピナ・ディ・ロースラ[/ふりがな]のリーダー、取締役、司令塔、ボスの四つの役職？を持っている。
いつも、まるで海に反射する[漢字]陽光[/漢字][ふりがな]ようこう[/ふりがな]のように明るい彼女だが、彼女にも落ち込む時がある。

[水平線]
「さて、今日も終わりね…」
夕暮れの船上、ナヴィアは一人でたそがれていた。
「…マルシラック、シルヴァ……」
左右を見ながら、彼女は静かに、うつむき泣いた。涙が、海へと落ちる。
自分のわがままを何回も聞いてくれた二人は、任務でピンチになったときに助けてくれた二人は、お茶会でいつも自分と笑いあった二人は、もう隣にはいない。
そう思うと、ナヴィアの心は暗くなっていく一方だった。
「……戻ってきてよ………」
叶わぬ願いを口にしながらも、ナヴィアを乗せる船は動き始めた。

[水平線]
「…マルシラック、シルヴァ。覚えてる？」
翌日のこと。
ナヴィアは花束を持ち、船上に立っていた。
花束を前に掲げながら、彼女は目を閉じ、思い出を振り返る。
「あの時は………やっぱりそうよね……ごめんなさい………ありがとう…」
思い出を頭に浮かばせながら、一人でうわ言をつぶやいた。
「…あなた達に、また会える日まで！」
突然、ナヴィアは思い切った表情をして、花束を投げ捨てた。悲しみに限界が来て、吹っ切れたのだろう。
花をまとめていたラッピングペーパーは、投げられた衝撃で外れてしまった。風に吹かれ、どこかに飛んでしまう。
支えてもらう存在がなくなってしまった花達は、茎をむき出しにして個々に散らばった。
「もう思い悩むことはやめたわ。はぁー、お茶にしましょうか！」
傘を閉じ、散った花を避けながら、ナヴィアは優雅に、船内へと姿を消した。
「…本当に、会える日までね」