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追放された貧乏令嬢ですが特技を生かして幸せになります!

#6

拒絶されても、鋼のメンタルで頑張ります

 
 私のピアノの演奏を聴き、人々の興奮は止まないようだ。もっと弾いてくださいと言われ、私はありとあらゆる弾ける曲を弾いた。ベートーヴェンに、モーツァルトに、ショパン、バッハやシューマン……私にはなじみ深い曲だが、この世界の人々は初めて聴く曲ばかりだ。

(そうですね……
 これらの音楽家は、いわゆる天才だから、初めて聴くと驚く決まってる。)

 そして、喜んでもらえて嬉しい私は2時間以上も曲を弾き続け、しまいには指が悲鳴を上げ始めた。

「もうそろそろ、指が疲れて弾けません」

 弱音を吐く私に、残念そうにマリーが告げた。

「将軍に聞いてもらったら、将軍も驚くかなぁと思ったのですが……」

 そこで、はっと、アンドレ様の存在を思い出した。みんなで楽しくしていたからすっかり忘れていたのだが、私はアンドレ様と結婚したのだ。

 だが……

(アンドレ様が、私のピアノを聴いたところでなにも変わられないでしょう)

 心の中でため息をつく。きっと私は暗い顔をしてしまったのだろう。ヴェラがポツリと告げた。

(あのアンドレ様が、私のピアノを聴いたところで何も変わられないでしょう)

 心の中でため息をつく。きっと私は暗い顔をしてしまったのだろう。ヴェラがぽりつり告げた。
「将軍は無視されるかもしれませんね。
私たちも、リア様と将軍がお近付きになられるのが、一番嬉しいの
ですが…」

 私だってアンドレ様にもう少し近付きたい。たとえそこに愛がなくとも、普通に生活して、普通に話をして・・・・・・・そんな関係を望むのは、贅沢だろうか。

 アンドレ様だって、あの様子では全てを抱え込んでおられるように見える。私は妻として、アンドレ様のよき理解者になりたかった・・・・・..

「ご、ごめんなさい。将軍があんなだから、リア様にはご負担をかけたくなかったのですが、ついお節介なことを言ってしまって」

 マリーが心底申し訳なさそうに頭を下げる。

(私は、マリーやヴェラに気を遣わせて、何をしているのだろう・・・・・・)

「そんなことありません!」

 私は二人に告げていた。
「確かに今はアンドレ様との距離は遠いです。ですが少しずつ、近付くことを祈っています」

 使用人たちを見ていればすぐに気付いた。彼女たちは日々アンドレ様に法えて生きているのだということに。
 
 私にはフレンドリーに話してくれているものの、アンドレ様の話をするときは決まって顔が強張っている。その様子を見ると、なんだか切ない気持ちになるのだった。
 
 こうやって館の使用人たちと楽しい時間を過ごし、昨日と同じように一人で夕食を食べ、使用人たちに拒まれながらも食器を片付けていると…・・・・・不意にガチャリと扉が開く音がした。扉の音を聞き、使用人たちがビクッと身を震わせる。その様子を見て、察してしまった。

 (アンドレ様のお帰りですね)

 私はすかさず玄関へと向かう。頭の中には、私のお母様の姿が思い浮かんだのだ。どんなに貧しくとも、お父様が仕事から帰ると、笑顔
で迎えに行く・・

 だから私は当然、夫が帰った際は出迎えるものだと思っていた。

「お帰りなさいませ、アンドレ様」
 
 玄関の前には、昨日と同じグレーの騎士服を着たアンドレ様が立っていた。シャンデリアの光で、銀色の髪がきらきらと輝いている。見惚れるほどのいい男なのに、その瞳は昨日と同じく、私を拒絶するように冷たい。あまりのその冷たさに、思わず怯んでしまうが・・・・・・ここで負けてはいけないと思った。

「アンドレ様、お願いがあります」
 
 私は彼に頭を下げていた。

「私、今日はピアノの練習をしていました。・・・・・・アンドレ様にも聴いていただきたく思います」

 気まずい沈黙が訪れる。

 ヴェラの言う通り、アンドレ様は私を無視するかもしれない。聴いてくれるだなんて期待もしていない。だけどこうしていつも話しかけていれば、いつかは応えてくれる日が来るかもしれない。きっとこの戦いは長期戦だ。

 沈黙の私たちを、マリーとヴェラはハラハラして見ていた。マリーとヴェラだけでなく、その他大勢の使用人が手を止め、この冷酷無慈悲な将軍と哀れな妻を眺めているのだ。

(アンドレ様が聴いてくださらなくても、館の皆さんがいますね・・・・・・)

 アンドレ様は私を黙殺するのかと思っていた。だが、表情一つ変え
ず、刺すような声で告げる。

「早くしてくれ。私は暇ではないんだ」
 
(え......それってまさか・・・・・・)
 
「聞いてくださるのですね!!」

 予想外の反応に、私は満面の笑みを浮かべていた。拒絶されるものかと思っていたのに、まさかピアノを聴いてくださるなんて・・・・・・.

 私はアンドレ様の前に立ってホールへ入り、その後にアンドレ様が続く。どこかへ行ってしまうかもしれないと思ったが、意外にも私の後についてきてくださるのだ。そして私は、アンドレ様が購入したというそのピアノの蓋を開け、椅子に腰かける、そして鍵盤に手を置いた。

(せっかく聞いてくださるのだから、失敗するわけにはいきません)
 
 そして、将軍であるアンドレ様にぴったりだと思った『ポロネーズ第六番 英雄』を弾き始めた。

作者メッセージ

Yuiです!
最近投稿できなくてすいません!!
リアルで運動会が近づいてまして練習をしてたらする時間無くなってました
すいません!!

2025/05/22 19:14

Yui ID:≫ 6yTgHEMno8sog
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