二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!
side ヒノ
「朝か…。」
いつものように近くに置いてある使いもしない目覚まし時計を見る。時計の針は午前四時四十四分を指していた。四が三つも揃う時に起きるだなんて、今日は運がいいのかもしれない。そして、久しぶりにこんなに目覚めよく起きれた気がする。朝から激しめのダンスぐらいは踊れそうだ。豆電球によって薄暗く照らされている部屋を見渡すと、いつもの[太字]私好みに改造された[/太字]部屋が広がっている。ホルマリン漬けにされた遺体を見ると、熱く下半身が疼いてしまう。
「…[大文字][太字][大文字][太字]勃起[/太字][/大文字][/太字][/大文字]してきた…どうしようか…これ。」
もしかしたら朝勃ちかもしれない。勃起してしまうのは生理現象で仕方がない。だが、これが治まるまで遊べないというのは中々厄介だ。気になってしょうがない。
「うーん…やっぱり手っ取り早くするには…抜くしかないね…。」
しょうがなく私は己を慰め始めた。
・・・
オカズなら沢山ある。だからかすぐに私は終われた。他の人の感覚で言うと、この状態はハーレム、両手に花というものだろうか。私は男も女もどちらでもイケるのだから、犯されるのも犯すのもどちらでもいいのかもしれない。こう思ってみると、犯された事も犯した事もない。今度ナンパにでも出かけてみよう。
「…手だけ洗いにいこう。」
先ほどまで自身のちんぽを握っていた手で何かを掴むというのはとてつもなく抵抗感がある。ウェットティッシュを開けてから手を念入りに拭き、そしてウェットティッシュを挟んだ手でドアノブを回す。
「はぁ…やってしまった…だが、まあいいだろう。スッキリ出来たしな。」
気持ちよくなれたのだから、とりあえずはよしとしておこう。念入りに手を洗い、いつも置かれているタオルではなく、部屋から持ってきたハンカチで手を拭き、自分の部屋に戻ろうとする。
「…あれ…今日…クイを見ていないよな…。」
いつも私達の足音を聴く度、誰の足音かを聴き分け瞬時的にやってくるはずのクイを今日は見ていない。寝ているのだろうか。
「とりあえず、リビングにでも行こうか。」
リビングまで歩いてみると、いつもいるはずのクイがいない。眠りについているはずもない。いつもこの時間には起きているのだから。いつもどんな時間に起きたとしてもクイは私達より早く起きている。どうしたのかとクイの部屋を覗いてみると、部屋は無機質に空っぽでクイは寝ておらずどこにもいなかった。部屋は私達の誰かが送った物が大切に保管されており、部屋には印刷された私達の写真が額縁に入れられ飾られている。
「相変わらずの部屋だね…それほど、私達の事を敬愛しているという事なのだろうけど。」
ここにもクイはいなかった。もしかしてだが、出かけているのだろうか。クイがたった出かけるはずもない。ならば______________
「…やはりか。」
近くのカノの部屋を覗いてみると、部屋は空っぽ。カノとクイはきっと二人だけで出歩いているのだ。きっと、カノが出かけるからと心配で付いていったというのがこれの真相だろう。全く、何処かに出かけるというなら私とノアを誘ってくれてもいいはず。それとも、起こすのが申し訳ないとでも思ったのだろうか。あいつに限ってそんな事はないだろうが。何処に行ったのかを調査する為、私も街に繰り出したい。まあ、いいだろう。どうせ二人は地下室にいる。地下から男の悲鳴が漏れ出しているから。悲鳴が聞こえぬよう、ちゃんとした防音室が必要なのかもしれない。
「うーん…楽しんでいるようだし、行ってもいいけど…まあ、いいかな。絵を描きたいし。」
先ほどの悲鳴によって突如インスピレーションが沸いた。この案を描かずにはいられない。冷凍している血液を解凍しながら、私は下書きを進める。今回も人間の苦痛を描いたものなのだから、同じく人間の苦痛によって取られた血を使うのがぴったりだろう。男の悲鳴が止み、暫く時を経た後こつこつと足音が聞こえてくる。
「あ、ヒノ兄さん。起きてたんだね。おはよう。」
「ヒノ様ッ!! お目覚めになられていたのですねッ!!」
「おはよう。血だらけだし、服と体洗ってきな。お風呂は沸いてないけどさ。」
体中返り血だらけで鉄臭い。この様子だと、地下室は洗ったがどうやら体までは洗ってようだ。その証拠に、脚だけ血が少し薄い。
「あ、ちょっと失礼。」
今のうちに絵の具の色を作っておこうと、マチェーテについた血液を少しばかり拝借する。パレットに血液を移し、少し多めの赤色の絵の具と血液を混ぜる。すると、綺麗なさっぱりとした赤色が出来上がった。
「おお。綺麗な色だね。こういうのとても好みだよ。」
「ヒノ様ッ!! 流石ですッ!!」
褒められるのはやはり悪い気分ではない。賛辞の言葉は大人しく受け取っておこう。だが、それよりもキャンバスに血液がついてしまいそうだ。それは絵に影響を及ぼす。私は「ありがと。だけどさっさとお風呂入ってきて。床が汚れるしキャンバスに血が付く。」と言い放ち絵の下書きに集中する。
「はっ!! 本当に申し訳ございませんでしたっ!! 今後は気を付けさせていただきますっ!!」
クイはそう言いながら、土下座をする。そして自身の首に血塗れのマチェーテを構え始めた。首を落としてしまえば、今後から気を付ける事が出来ないだろう、と瞬時的に思う。これも言葉のあやというものなのだろうか。
「クイ。いいよ。汚さなかったらそれでいいから。」
「ありがたきお言葉っ!!」
クイはマチェーテを下ろし、また土下座をする。ついた血が床についてしまいそうで怖く、そしてあの量だともう服は使えないだろう。血がシミになって乾いてしまっている。
「…クイ兄貴…?」
どうやらクイの大声でレノを起こしてしまったらしい。レノは眠気眼をこすりながら私達の傍にやってくる。
「あれ…カノ兄貴とクイ兄貴…なんで血塗れなんですか…?」
レノは寝ぼけており、寝起きには刺激的だと思うが、微動だにしない。戦場で鍛えられたのだろうか。まあ、流石にこれぐらいで調子を乱すような弟子じゃないと私は知っている。
「…もしかして…さっきまで拷問して遊んでましたぁ…?」
寝起きで舌足らずな声。あまりレノは朝が強くなく、いつもこんな感じで、朝は少し遅い。今日は少し早かったようだが。
「あァ。声が大きかったかァ?」
「大丈夫です…んー…。」
眠気が凄いのか、ぽやぽやした様子で時計を確認する。今の時刻は午前五時。いつも四時ほどには起きているというのに、昨日は夜更かししてしまったのだろうか。
「…あ、血切れてましたっけ…冷凍してたの切れてますね…取ってこないと…。」
寝ぼけた様子で冷凍庫を探している。絵に使った分でもう最後だったらしい。切らさぬように気を付けていたものの、やはり高頻度で扱うからだろうか。
「最後につかったのは私だ。私が今度取ってこよう。」
「あ、じゃあお願いします。」
レノはそう言い、洗面台へと顔を洗いに足を運んだ。鎖鎌は流石に扱えないとして、どうして血液を採取すればいいなのだろうか。そう考えてみていると、とある違和感に気付いた。
「…ン? まだノアが起きていないな…ちょっと様子見に行ってくる。」
「どうせ部屋にこもってるんじゃない?」
カノが血塗れで立ったままそう言う。床は汚れていないものの、いつマットを汚してしまうのかとひやひやしてしまう為さっさと風呂に入ってきてほしいがまあ後で入るだろう。
「まあ、そうだとしても見たいじゃないか。あいつの無防備な姿。」
いつも攻撃的で警戒心が強い我が弟の弱っちそうな姿を見てみたいのだ。いつも部屋にかぎがかかっていては入れないが、今日はドアを壊して入ってしまおう。そしてレノが軽蔑したような顔で私を見つめる。
「…やっぱり趣味悪いっすよヒノ兄貴。」
「そうかい?」
自分ではそう思っていなかったが、やはり私の崇高な思考が理解できない人間からすればそうなのだろうか。まあ、そんな事は正直どうでもいい。そしてカノがレノに話しかける。
「ねえレノ。ネクロフィリアで変態のヒノ兄さんが変態じゃないかと思ってたのかい?」
「…それもそうですね。」
レノは納得したような、諦めたような難しそうな顔をして私を見つめている。そしてクイが私をフォローしてくれた。
「ボクは素晴らしい趣味だと思いますっ!! カノ様っ!! レノキサマァッ!! よくもヒノ様にィッ!!」
クイは身内ですらいつものキレ芸を披露する。そう簡単な事では怒らないのだが、私達の事になればいつもこんなのだ。カノは未来を予測していたのか「…やっぱりそうなるよね。」と落ち着いた様子で笑っている。
「まあ落ち着いてクイ。大丈夫だから。」
「…ヒノ様が言うならば許してやろう。但し。レノ。次はないと思っておけよ。」
多少宥めると、直ぐにクイは落ち着きを見せる。レノは安心した様子でにっこりと笑った。
「分かりましたっ。クイ兄貴っ。」
「じゃあ、ちょっと見てくるね。」
・・・
私はノアの部屋の目の前にいる。こんこんこんとドアをノックしてみると、特にノアの声が返ってくるわけではなかった。やはり寝ているのだろうか。ドアを開けてみると、ノアががりがりがり、と万年筆で何かを原稿用紙に書きなぐっているのが見える。恐らくあれは徹夜で書いている。昨日寝る時も完全に同じ体制で、何かを書いていた。
「…なあ、ノア。」
私が少しの声で話しかけると、ノアからの返事はなかった。聞こえていないのか、聞こえていないフリをしているのかどちらかは全く分からないが、もう一度話しかけてみる。
「ノア…他人の話を無視するとは、いい度胸じゃないか。」
総怒りを込めた声で言うと、ノアは少し慌てた様子で弁解を始める。
「あ…ごめんごめん。聞いてなかった。」
にこにこと微笑みながらノアは言う。
「何してたんだ? 集中してたようだが…。」
「ちょっと書いて遊んでた。」
素直に質問には答えてくれるようだ。だが、何を書いていたのかを伏せているのが気になってしまう他人に見られてはいけない物でも書いていたのだろうか。こんな疑問放っておくのにはいかない為、答えてはくれないのだろうが、ノアに訊いてみた。
「…別にそれがなにかは知らなくてもいいんじゃないかな。」
先ほどまでにこにことしていたノアの闇がちらりと見えた気がする。あの様子だと不健全時には陥っていないのだろうが、なにがあったのだろうか。どうせ、『実の兄弟or尊敬している人が何かをぶつぶつとつぶやきながら書き殴っていたら。』という思考実験か何かだ。どれにしようが、大して心配する事じゃないだろう。
「そうか。その紙に何を書いていたのか教えてくれる気は」
「ないね。」
「そっかあ。」
ノアは私の言葉を止めてまで、それを阻止しようと即答した。そんなにも見られたくないのだろうか。見られたくないというならば、鍵をかけておけばいいものの。
「ふーん…もしかして私と同じようにグロ絵描いてるのか? 書き終わったなら、見せてくれ。いい絵なら[漢字]○○○○[/漢字][ふりがな][打消し][小文字]ひとりえっち[/小文字][/打消し][/ふりがな]したいから。いいだろ?」
なぜか自然と規制音が私の声を遮る。少々下品な事を言ったぐらいだというのに、なぜこんな事になるのだろうか。別に問題発言というわけでもないはず。だのに、どこからともなく規制音が走った。これがどんな現象なのか今度実験してみよう。
「そんなわけないだろう…わたしは美しい耳にしか興味がないんでね。死体には興味がないんだ。」
「へえ。似てるね。ノアも美しい耳をもぎ取りコレクションしているんだろう? 私もその類だから。」
ちゃんとノアの性癖は理解している。やはり分類は違うものの同じネクロフィリア。こういう時だけは兄弟なのだと何となく理解出来る。
「…確かに同じなのかもしれないな。だけどわたしは耳をホルマリン漬けにして保管した事が…あるな。」
思い出したようにノアがそう言う。素直になればいいものの。強がっていたというのにこんな事になるノアを見て、少し笑いながら私は「やっぱり血は抗えないんだね。ふふ。」とにやついていた。
「じゃあ。私はリビングに帰るよ。」
「暫くこっちには来るなよ。取り込み中なのだから。」
「はいはい。」
私は邪魔されて少しばかり不機嫌なノアを横目に、リビングへとそそくさと戻った。
「おーいみんな。ちょっと手伝ってくれないか?」
先ほどの規制音の正体を明かす必要がある。この好奇心を満たさなければ何も手に付かないであろう。どれだけ遅くなろうがいい。ちょっとでも正体を言見れればそれで充分なのだ。
「なにに? 要件次第では嫌だけど。」
相変わらずカノは無関心な事に対して冷たい。だが、この事象については興味を持ってくれるだろう。
「さっき私の声を謎の規制音が遮ったからさ。ちょっと実験したくて。」
「へえ…いいよ。じゃあまず出現条件を調べないとね。」
「あっ。じゃあ僕も手伝いますっ!」
「このクイも手伝いましょう。何なりとお申し付けください。」
ノア以外の全員が興味を示してくれた。ノアは集中しているから良しとしておき、これで人手はもう充分だろう。これでやっと実験が出来る。
「恐らくだけど…[漢字]○○○○○○[/漢字][ふりがな][打消し][小文字]ひとりえっち[/小文字][/打消し][/ふりがな]やっぱり、下品な言葉とかに反応するらしいね。」
もう一度言ってみたはいいものの、やはり規制音に遮られてしまう。どこからともなく響くこの音の正体を明かしたい一心でいっぱいだ。だが、それだと同じく下品な言葉である勃起で反応しなかったのが気になってしまう。
「ふーん…勃起の時は反応しなかったからなあ…確率とか?」
流石にそれはないと思っているが、やはり勃起程度では反応しないらしい。これだけではあまり下品じゃないという事なのだろうか。
「…それもよくわかんないですけどね。」
レノが困惑したように言い放つ。クイは少しわくわくうきうきしたような様子で、穏やかに優しく微笑んでいる。久しぶりに実験が出来るという事が嬉しいのだろうか。
「…ノア様、カノ様、ヒノ様。このボクが実験しましょう。」
「ああ。お願いするよ。このリストに書いている言葉を試してくれ。」
私は大量に下品な言葉をさらっと書き上げ、ちょっとした大きさのメモ帳をクイに渡す。クイはそれを受け取り、「承知いたしました。」とだけ言い自分の少し離れた所で試し始めた。
「よーし…じゃあ、みんな手分けして実験するか。」
「はーい。」
私が声掛けをすると、みんな返事が一つに合わさった。そして、各自したい実験を行い始める。
「朝か…。」
いつものように近くに置いてある使いもしない目覚まし時計を見る。時計の針は午前四時四十四分を指していた。四が三つも揃う時に起きるだなんて、今日は運がいいのかもしれない。そして、久しぶりにこんなに目覚めよく起きれた気がする。朝から激しめのダンスぐらいは踊れそうだ。豆電球によって薄暗く照らされている部屋を見渡すと、いつもの[太字]私好みに改造された[/太字]部屋が広がっている。ホルマリン漬けにされた遺体を見ると、熱く下半身が疼いてしまう。
「…[大文字][太字][大文字][太字]勃起[/太字][/大文字][/太字][/大文字]してきた…どうしようか…これ。」
もしかしたら朝勃ちかもしれない。勃起してしまうのは生理現象で仕方がない。だが、これが治まるまで遊べないというのは中々厄介だ。気になってしょうがない。
「うーん…やっぱり手っ取り早くするには…抜くしかないね…。」
しょうがなく私は己を慰め始めた。
・・・
オカズなら沢山ある。だからかすぐに私は終われた。他の人の感覚で言うと、この状態はハーレム、両手に花というものだろうか。私は男も女もどちらでもイケるのだから、犯されるのも犯すのもどちらでもいいのかもしれない。こう思ってみると、犯された事も犯した事もない。今度ナンパにでも出かけてみよう。
「…手だけ洗いにいこう。」
先ほどまで自身のちんぽを握っていた手で何かを掴むというのはとてつもなく抵抗感がある。ウェットティッシュを開けてから手を念入りに拭き、そしてウェットティッシュを挟んだ手でドアノブを回す。
「はぁ…やってしまった…だが、まあいいだろう。スッキリ出来たしな。」
気持ちよくなれたのだから、とりあえずはよしとしておこう。念入りに手を洗い、いつも置かれているタオルではなく、部屋から持ってきたハンカチで手を拭き、自分の部屋に戻ろうとする。
「…あれ…今日…クイを見ていないよな…。」
いつも私達の足音を聴く度、誰の足音かを聴き分け瞬時的にやってくるはずのクイを今日は見ていない。寝ているのだろうか。
「とりあえず、リビングにでも行こうか。」
リビングまで歩いてみると、いつもいるはずのクイがいない。眠りについているはずもない。いつもこの時間には起きているのだから。いつもどんな時間に起きたとしてもクイは私達より早く起きている。どうしたのかとクイの部屋を覗いてみると、部屋は無機質に空っぽでクイは寝ておらずどこにもいなかった。部屋は私達の誰かが送った物が大切に保管されており、部屋には印刷された私達の写真が額縁に入れられ飾られている。
「相変わらずの部屋だね…それほど、私達の事を敬愛しているという事なのだろうけど。」
ここにもクイはいなかった。もしかしてだが、出かけているのだろうか。クイがたった出かけるはずもない。ならば______________
「…やはりか。」
近くのカノの部屋を覗いてみると、部屋は空っぽ。カノとクイはきっと二人だけで出歩いているのだ。きっと、カノが出かけるからと心配で付いていったというのがこれの真相だろう。全く、何処かに出かけるというなら私とノアを誘ってくれてもいいはず。それとも、起こすのが申し訳ないとでも思ったのだろうか。あいつに限ってそんな事はないだろうが。何処に行ったのかを調査する為、私も街に繰り出したい。まあ、いいだろう。どうせ二人は地下室にいる。地下から男の悲鳴が漏れ出しているから。悲鳴が聞こえぬよう、ちゃんとした防音室が必要なのかもしれない。
「うーん…楽しんでいるようだし、行ってもいいけど…まあ、いいかな。絵を描きたいし。」
先ほどの悲鳴によって突如インスピレーションが沸いた。この案を描かずにはいられない。冷凍している血液を解凍しながら、私は下書きを進める。今回も人間の苦痛を描いたものなのだから、同じく人間の苦痛によって取られた血を使うのがぴったりだろう。男の悲鳴が止み、暫く時を経た後こつこつと足音が聞こえてくる。
「あ、ヒノ兄さん。起きてたんだね。おはよう。」
「ヒノ様ッ!! お目覚めになられていたのですねッ!!」
「おはよう。血だらけだし、服と体洗ってきな。お風呂は沸いてないけどさ。」
体中返り血だらけで鉄臭い。この様子だと、地下室は洗ったがどうやら体までは洗ってようだ。その証拠に、脚だけ血が少し薄い。
「あ、ちょっと失礼。」
今のうちに絵の具の色を作っておこうと、マチェーテについた血液を少しばかり拝借する。パレットに血液を移し、少し多めの赤色の絵の具と血液を混ぜる。すると、綺麗なさっぱりとした赤色が出来上がった。
「おお。綺麗な色だね。こういうのとても好みだよ。」
「ヒノ様ッ!! 流石ですッ!!」
褒められるのはやはり悪い気分ではない。賛辞の言葉は大人しく受け取っておこう。だが、それよりもキャンバスに血液がついてしまいそうだ。それは絵に影響を及ぼす。私は「ありがと。だけどさっさとお風呂入ってきて。床が汚れるしキャンバスに血が付く。」と言い放ち絵の下書きに集中する。
「はっ!! 本当に申し訳ございませんでしたっ!! 今後は気を付けさせていただきますっ!!」
クイはそう言いながら、土下座をする。そして自身の首に血塗れのマチェーテを構え始めた。首を落としてしまえば、今後から気を付ける事が出来ないだろう、と瞬時的に思う。これも言葉のあやというものなのだろうか。
「クイ。いいよ。汚さなかったらそれでいいから。」
「ありがたきお言葉っ!!」
クイはマチェーテを下ろし、また土下座をする。ついた血が床についてしまいそうで怖く、そしてあの量だともう服は使えないだろう。血がシミになって乾いてしまっている。
「…クイ兄貴…?」
どうやらクイの大声でレノを起こしてしまったらしい。レノは眠気眼をこすりながら私達の傍にやってくる。
「あれ…カノ兄貴とクイ兄貴…なんで血塗れなんですか…?」
レノは寝ぼけており、寝起きには刺激的だと思うが、微動だにしない。戦場で鍛えられたのだろうか。まあ、流石にこれぐらいで調子を乱すような弟子じゃないと私は知っている。
「…もしかして…さっきまで拷問して遊んでましたぁ…?」
寝起きで舌足らずな声。あまりレノは朝が強くなく、いつもこんな感じで、朝は少し遅い。今日は少し早かったようだが。
「あァ。声が大きかったかァ?」
「大丈夫です…んー…。」
眠気が凄いのか、ぽやぽやした様子で時計を確認する。今の時刻は午前五時。いつも四時ほどには起きているというのに、昨日は夜更かししてしまったのだろうか。
「…あ、血切れてましたっけ…冷凍してたの切れてますね…取ってこないと…。」
寝ぼけた様子で冷凍庫を探している。絵に使った分でもう最後だったらしい。切らさぬように気を付けていたものの、やはり高頻度で扱うからだろうか。
「最後につかったのは私だ。私が今度取ってこよう。」
「あ、じゃあお願いします。」
レノはそう言い、洗面台へと顔を洗いに足を運んだ。鎖鎌は流石に扱えないとして、どうして血液を採取すればいいなのだろうか。そう考えてみていると、とある違和感に気付いた。
「…ン? まだノアが起きていないな…ちょっと様子見に行ってくる。」
「どうせ部屋にこもってるんじゃない?」
カノが血塗れで立ったままそう言う。床は汚れていないものの、いつマットを汚してしまうのかとひやひやしてしまう為さっさと風呂に入ってきてほしいがまあ後で入るだろう。
「まあ、そうだとしても見たいじゃないか。あいつの無防備な姿。」
いつも攻撃的で警戒心が強い我が弟の弱っちそうな姿を見てみたいのだ。いつも部屋にかぎがかかっていては入れないが、今日はドアを壊して入ってしまおう。そしてレノが軽蔑したような顔で私を見つめる。
「…やっぱり趣味悪いっすよヒノ兄貴。」
「そうかい?」
自分ではそう思っていなかったが、やはり私の崇高な思考が理解できない人間からすればそうなのだろうか。まあ、そんな事は正直どうでもいい。そしてカノがレノに話しかける。
「ねえレノ。ネクロフィリアで変態のヒノ兄さんが変態じゃないかと思ってたのかい?」
「…それもそうですね。」
レノは納得したような、諦めたような難しそうな顔をして私を見つめている。そしてクイが私をフォローしてくれた。
「ボクは素晴らしい趣味だと思いますっ!! カノ様っ!! レノキサマァッ!! よくもヒノ様にィッ!!」
クイは身内ですらいつものキレ芸を披露する。そう簡単な事では怒らないのだが、私達の事になればいつもこんなのだ。カノは未来を予測していたのか「…やっぱりそうなるよね。」と落ち着いた様子で笑っている。
「まあ落ち着いてクイ。大丈夫だから。」
「…ヒノ様が言うならば許してやろう。但し。レノ。次はないと思っておけよ。」
多少宥めると、直ぐにクイは落ち着きを見せる。レノは安心した様子でにっこりと笑った。
「分かりましたっ。クイ兄貴っ。」
「じゃあ、ちょっと見てくるね。」
・・・
私はノアの部屋の目の前にいる。こんこんこんとドアをノックしてみると、特にノアの声が返ってくるわけではなかった。やはり寝ているのだろうか。ドアを開けてみると、ノアががりがりがり、と万年筆で何かを原稿用紙に書きなぐっているのが見える。恐らくあれは徹夜で書いている。昨日寝る時も完全に同じ体制で、何かを書いていた。
「…なあ、ノア。」
私が少しの声で話しかけると、ノアからの返事はなかった。聞こえていないのか、聞こえていないフリをしているのかどちらかは全く分からないが、もう一度話しかけてみる。
「ノア…他人の話を無視するとは、いい度胸じゃないか。」
総怒りを込めた声で言うと、ノアは少し慌てた様子で弁解を始める。
「あ…ごめんごめん。聞いてなかった。」
にこにこと微笑みながらノアは言う。
「何してたんだ? 集中してたようだが…。」
「ちょっと書いて遊んでた。」
素直に質問には答えてくれるようだ。だが、何を書いていたのかを伏せているのが気になってしまう他人に見られてはいけない物でも書いていたのだろうか。こんな疑問放っておくのにはいかない為、答えてはくれないのだろうが、ノアに訊いてみた。
「…別にそれがなにかは知らなくてもいいんじゃないかな。」
先ほどまでにこにことしていたノアの闇がちらりと見えた気がする。あの様子だと不健全時には陥っていないのだろうが、なにがあったのだろうか。どうせ、『実の兄弟or尊敬している人が何かをぶつぶつとつぶやきながら書き殴っていたら。』という思考実験か何かだ。どれにしようが、大して心配する事じゃないだろう。
「そうか。その紙に何を書いていたのか教えてくれる気は」
「ないね。」
「そっかあ。」
ノアは私の言葉を止めてまで、それを阻止しようと即答した。そんなにも見られたくないのだろうか。見られたくないというならば、鍵をかけておけばいいものの。
「ふーん…もしかして私と同じようにグロ絵描いてるのか? 書き終わったなら、見せてくれ。いい絵なら[漢字]○○○○[/漢字][ふりがな][打消し][小文字]ひとりえっち[/小文字][/打消し][/ふりがな]したいから。いいだろ?」
なぜか自然と規制音が私の声を遮る。少々下品な事を言ったぐらいだというのに、なぜこんな事になるのだろうか。別に問題発言というわけでもないはず。だのに、どこからともなく規制音が走った。これがどんな現象なのか今度実験してみよう。
「そんなわけないだろう…わたしは美しい耳にしか興味がないんでね。死体には興味がないんだ。」
「へえ。似てるね。ノアも美しい耳をもぎ取りコレクションしているんだろう? 私もその類だから。」
ちゃんとノアの性癖は理解している。やはり分類は違うものの同じネクロフィリア。こういう時だけは兄弟なのだと何となく理解出来る。
「…確かに同じなのかもしれないな。だけどわたしは耳をホルマリン漬けにして保管した事が…あるな。」
思い出したようにノアがそう言う。素直になればいいものの。強がっていたというのにこんな事になるノアを見て、少し笑いながら私は「やっぱり血は抗えないんだね。ふふ。」とにやついていた。
「じゃあ。私はリビングに帰るよ。」
「暫くこっちには来るなよ。取り込み中なのだから。」
「はいはい。」
私は邪魔されて少しばかり不機嫌なノアを横目に、リビングへとそそくさと戻った。
「おーいみんな。ちょっと手伝ってくれないか?」
先ほどの規制音の正体を明かす必要がある。この好奇心を満たさなければ何も手に付かないであろう。どれだけ遅くなろうがいい。ちょっとでも正体を言見れればそれで充分なのだ。
「なにに? 要件次第では嫌だけど。」
相変わらずカノは無関心な事に対して冷たい。だが、この事象については興味を持ってくれるだろう。
「さっき私の声を謎の規制音が遮ったからさ。ちょっと実験したくて。」
「へえ…いいよ。じゃあまず出現条件を調べないとね。」
「あっ。じゃあ僕も手伝いますっ!」
「このクイも手伝いましょう。何なりとお申し付けください。」
ノア以外の全員が興味を示してくれた。ノアは集中しているから良しとしておき、これで人手はもう充分だろう。これでやっと実験が出来る。
「恐らくだけど…[漢字]○○○○○○[/漢字][ふりがな][打消し][小文字]ひとりえっち[/小文字][/打消し][/ふりがな]やっぱり、下品な言葉とかに反応するらしいね。」
もう一度言ってみたはいいものの、やはり規制音に遮られてしまう。どこからともなく響くこの音の正体を明かしたい一心でいっぱいだ。だが、それだと同じく下品な言葉である勃起で反応しなかったのが気になってしまう。
「ふーん…勃起の時は反応しなかったからなあ…確率とか?」
流石にそれはないと思っているが、やはり勃起程度では反応しないらしい。これだけではあまり下品じゃないという事なのだろうか。
「…それもよくわかんないですけどね。」
レノが困惑したように言い放つ。クイは少しわくわくうきうきしたような様子で、穏やかに優しく微笑んでいる。久しぶりに実験が出来るという事が嬉しいのだろうか。
「…ノア様、カノ様、ヒノ様。このボクが実験しましょう。」
「ああ。お願いするよ。このリストに書いている言葉を試してくれ。」
私は大量に下品な言葉をさらっと書き上げ、ちょっとした大きさのメモ帳をクイに渡す。クイはそれを受け取り、「承知いたしました。」とだけ言い自分の少し離れた所で試し始めた。
「よーし…じゃあ、みんな手分けして実験するか。」
「はーい。」
私が声掛けをすると、みんな返事が一つに合わさった。そして、各自したい実験を行い始める。