二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!
クリスマス。こんな殺人鬼達でも、聖なる日は祝うらしい。開けた居間の隅には豪華絢爛と飾られたクリスマスツリーが存在感を放っており、その樹影には四つのプレゼントが積まれていた。
「…あれ。」
朝一番に起きたノアは、クリスマスプレゼントの存在に気付き、そっと観察してみる。誰がなんの為に置いたのか分からないものを警戒してしまう、これは軍人時代のくせでもあり彼らの警戒心の高さの表れでもあった。だが外見だけは何の変哲もない。言ってしまえばどこにでもあるようななんの変哲もないプレゼントである。
「むぅ、別に変じゃあないね…そもそも、他人がいるとするならばクイが気付くか……。」
「まあいいだろう、危険物じゃあないのなら深掘りする必要はない。」
ノアはすっと踵を返し、そのまま台所に立つと冷蔵庫の中身を物色し始めた。
「…びっくりするぐらい何もないね、今日は買い出しに行こうか…。」
ひょっこりとカノが出てくる。その手にはノートが握られており、リビングでも小説を書く気のようだ。「おはよう、ノア兄さん」と挨拶を交わし彼はソファーに座り込むと、ノアに視線を遣りながらこう訊いた。
「ン、これはなんだい? ノア兄さんが用意したのか?」
「いや、わたしじゃあないね。いつの間にかあったのさ。」
どうやら彼も気付いたようで、四つのプレゼントを興味津々に見つめている。腰をかがめて、片目だけでもよく見えるように。カノの場合、警戒というよりかは好奇心に負けて観察しており怪訝な表情を浮かべているがその表情はどこか楽しそうだ。
「うーん……まあいいだろう。気にする必要はないね。それに、用意するのならクイかな。彼はサプライズが好きだしね。」
ノアが危険だと判断しなかった時点で大丈夫だろう、とカノは考えておりそのまま近くのソファーに腰を下ろした。そして少々の時を経た後、今度は違う忙しない足音が響き、スライドドアがゆっくりと開けられる。
「おはようございます、ノア様、カノ様。ヒノ様はまだお目覚めになられていないのですね。」
きょろきょろとリビングを見渡していたクイも、[漢字]プレゼント[/漢字][ふりがな]それ[/ふりがな]の存在に気付き、それに向かって歩を進める。
「ノア様か、カノ様が用意されたのですか? それとも…ヒノ様でしょうか?」
ノアとカノはどちらも首を横に振り、クイも不思議そうな表情を浮かべ警戒しつつもう一度歩を進めた。プレゼントボックスから特に近いカノを守るような体勢であり、一通り見てから、彼もソファーに座り込む。
「…ノア様とカノ様が危険だと判断されていないのならば、心配する必要はないのでしょうか。」
小さくため息をついてから、クイも少しは安心したようでカノの邪魔にならぬようそのまま口を閉ざした。
「おはよう! 今日は少し目覚めが遅かったらしいね。」
朝から元気な声色で、ヒノはにこにこと笑みを浮かべリビングへと降りてきた。やはりクリスマスツリーというものは目立つようで、ヒノもすぐさま謎のプレゼントの存在を認識する。
「へぇ、クリスマスプレゼントか…クイ、君が用意したのかい? それとも別の誰かかな?」
ヒノがそう訊くも、クイも誰も彼もは否定の言葉を投げかけた。
「ふうん、ならば誰だろうね? やはりサンタさんかな? レノ以外は一応未成年だし。」
相も変らぬ笑みを浮かべながら、もう好奇心を失ったと言わんばかりに彼はダイニングの椅子に腰かける。そして、彼のキャンバスを出してペンをとり始めた。
「……なァ、このプレゼントボックス…開けてみないか?」
未知の出来事にノアのテンションが少々上がっているようで、楽しそうにプレゼントボックスを持ち上げる。安易に持ち上げたとて、爆発も何もしない。それでやっと多少の安全は保障された。朝食に至っては、プレゼントが気になっているノアのせいが未完成のまま放置されている。
「もちろんでございます、ノア様。」
クイは即座にノアに言葉を返し、彼から自分自身の名が書かれたプレゼントボックスを受け取った。クイのものは小さいが、カノのものは比較的大きく、どうやら内容物がどれも違うらしい。だが全て緑と赤というザ・クリスマスといった配色をしており、誰もが思い浮かべるであろう外見をしていた。ノアと同じようにクイもそわそわしており、彼も好奇心に負けているよう。
「うん、まあ確かに開けないという理由はないが………。」
[漢字]カノとヒノ[/漢字][ふりがな]残りの二人[/ふりがな]はあまり興味が湧いていないようであったが、それとしても意味の分からないものを開けるという事はワクワクするようできちんと受け取っていた。
「パンドラの箱か、それとも女神が笑うか…どちらでもいいがね。」
不安になりそうな事を口走りながら、ヒノは大きなリボンを解く。それに倣い他の三人もリボンを引っ張った。しゅるしゅるとほどけていき、そのまま皆で蓋を開けてみる。
「フム、化学本か…次の実験のネタになるよ。サンタさんには礼を言わないとね。」
ノアはぺらぺらと冊子をめくりながらそう呟いた。その表情は楽しそうに綻んでおり、朝食も摂り終わってのならば直ぐに読み終わってしまい直ぐに実験を開始するに違いない。
「クッションだね。最近は椅子にずっと座り続けていて腰を痛めていたから助かるよ。」
最も箱が大きかったであろうカノは、低反発で腰に優しい猫柄のクッションが封入されていた。彼は執筆活動の為長時間着席している事が多く、事故で足も悪くなってしまっている関係上運動不足になりがちである。
「画材セットか! いいね、絵具の種類はあればあるほどいい! レノにも少し分けようか。」
丁度絵具を切らしていたのか、嬉しそうにそれを物色している。珍しい色もあるようで、声色も歓喜の感情を含んでいた。それはあまりにも明るい表情であり、見ている者までも機嫌がよくなってしまいそうな程であった。
「…泰山木のキーホルダーねェ。」
白く美しい花を模ったキーホルダー。鞄などにつけると丁度良い大きさである。お土産もので贈ると最も喜ばれそうなのはこれであろう。あまり嬉しそうな表情ではないが、取り付けたり等はしそうであった。
「おお、いいじゃないかクイ! 可愛らしいね。」
カノがクイのキーホルダーをよく観察している。そのキーホルダーはプラスチック製であり、そのまま花をレジンで固めたかのように透き通り美しい外見を保っていた。
「カノ様、ボクは大丈夫ですので差し上げましょうか?」
「いいよ。ワタシにはこのクッションがあるしね。」
きちんと断りを入れながら、皆でそれぞれのプレゼントを見て遊ぶ。それは年相応と言うべきであろうか、まだまだあどけなさが残る会話であった。あまりにそれは殺人者とは思えない純真さであり、もし彼らの事を一切知らない者が見ればただただ友人と団欒を楽しんでいる風景と答えるだろう。
「…………ちゃんと喜んでくれてる…!」
わいわいと穏やかな喧騒を訊きながら、そっと隠れて観察している者がいた。いつもは八の字の眉毛にしているそれを吊り上げて、ガッツポーズを彼は誰にも分からぬように行ってからその声に紛れてもう一度自分の部屋へと戻るレノは、悪戯っ子な表情で微笑みを浮かべ恍惚としている。
・・・
クリスマスの前日、つまるところクリスマス・イブの夜にて。
「…僕も、最長年らしいところ見せないと。」
「ずっと世話になってるのも申し訳ないし。」と付け加えて、そっと木の幹近くにプレゼントを置いた。ちゃんと誰に贈るものなのか、きちんと名を書いた手紙を添えて。筆跡で気付かれぬよう、コンピューターで印刷したものを使った。
「……バレないように。」
自らにそう言い聞かせ、彼は抜き足差し足で自らの寝室に戻る。ちょっとやそっとの足音すらも恐ろしい、この瞬間が生きている中で最も緊張したと彼は語る事だろう。ありがたい事に、どうやらレノの動きで起きる者はおらず皆がすやすやと眠っていた。そしてそのまま、彼は自らの布団に潜り込む。もしかしたら気付かれてしまっているのではないかという緊張感で眠る事は出来なかったが。
・・・
わざと寝坊したようにレノは演出してから、リビングへと降りた。もうすっかりと喧騒は落ち着いており、ノアは朝食を調理し、カノはのんびりとペンをとり、クイは出来るだけ邪魔をしないよう小説を読み込んでいた。ヒノは早速絵具を試しに、部屋へ向かっている。
「なァ、[漢字]レノ[/漢字][ふりがな]てめー[/ふりがな]にはないのかよォ?」
クイは疑問符を浮かべながら、レノの瞳を真っすぐ見つめた。
「僕は成人済みですし、ね! そりゃあ来ませんよ。サンタさんなんて。」
レノはにっこりと笑みを浮かべて言う。その瞳には爽やかであっさりとした穏やかさが混じっており、四人を
微笑ましく見守っていた。満足げに彼は頷いた後、そのまま自室に戻ると、枕元に置かれている何かに気がつく。それはレノが彼らに用意したように、きちんと包まれているプレゼントボックスであった。
「…あれ、なんでこんなところにプレゼントが? 僕置いてないのに……。」
こてん。と小首を傾げて彼は考え込む。もしかしたら四人が置いてくれたのだろうか、と考えてもみたが気付かれているわけがないと考えつつ、しゅるしゅるとリボンをほどいた。
「わ、可愛い! ぬいぐるみだ!」
ボックスに封入されていたのは、可愛らしい熊のぬいぐるみ。その首元には黒いネクタイがつけられており、布地は薄茶色で、オーダーメイドのものだ。
「また増えるなぁ、ふふ。」
嬉しそうに彼は目を細めた。沢山のぬいぐるみに囲まれて眠っているレノは、ちょっとずつぬいぐるみたちが追加されていくという事が嬉しいらしい。ちなみにプレゼントである熊のぬいぐるみを省けば、全てクレーンゲームで入手したものである。
「…成人済みの僕にもまだ、[漢字]サンタさん[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]って来てくれるんだね。不思議だなぁ。」
そうぼやくと、空っぽになっらプレゼントボックスをゴミ箱に投げ入れようとしたが、そっと自らの机の上に置いた。捨てるのが悲しかったのか、レノはもう一度同じようにリボンを結び本棚の空いている場所に飾ると、もう一度嬉しそうに目を細めた。
「うん、すっごい可愛い!」
・・・
「ちゃんと設置する事が出来たよ! ありがとうね、クイ。隙を作ってくれて。」
「お褒め預かり、光栄です!!」
「演技はよかったが…私の方が一枚上手だったな。」
「それに、わたし達にこんな事をするだなんてレノしかいないからね。」
「…ですが、あいつも最長年らしいところを見せたかったのでしょう。騙されているフリを続ける、という方針でよいのではないでしょうか。」
「うん、それでいいんじゃないかなァ。だけれど、彼は勘が鋭いから騙し続ける事はとても難しいのだけれど…。」
「しょうがないだろう。まぁ…直ぐに訊かなかったのならばきっと大丈夫だ。」
「…あれ。」
朝一番に起きたノアは、クリスマスプレゼントの存在に気付き、そっと観察してみる。誰がなんの為に置いたのか分からないものを警戒してしまう、これは軍人時代のくせでもあり彼らの警戒心の高さの表れでもあった。だが外見だけは何の変哲もない。言ってしまえばどこにでもあるようななんの変哲もないプレゼントである。
「むぅ、別に変じゃあないね…そもそも、他人がいるとするならばクイが気付くか……。」
「まあいいだろう、危険物じゃあないのなら深掘りする必要はない。」
ノアはすっと踵を返し、そのまま台所に立つと冷蔵庫の中身を物色し始めた。
「…びっくりするぐらい何もないね、今日は買い出しに行こうか…。」
ひょっこりとカノが出てくる。その手にはノートが握られており、リビングでも小説を書く気のようだ。「おはよう、ノア兄さん」と挨拶を交わし彼はソファーに座り込むと、ノアに視線を遣りながらこう訊いた。
「ン、これはなんだい? ノア兄さんが用意したのか?」
「いや、わたしじゃあないね。いつの間にかあったのさ。」
どうやら彼も気付いたようで、四つのプレゼントを興味津々に見つめている。腰をかがめて、片目だけでもよく見えるように。カノの場合、警戒というよりかは好奇心に負けて観察しており怪訝な表情を浮かべているがその表情はどこか楽しそうだ。
「うーん……まあいいだろう。気にする必要はないね。それに、用意するのならクイかな。彼はサプライズが好きだしね。」
ノアが危険だと判断しなかった時点で大丈夫だろう、とカノは考えておりそのまま近くのソファーに腰を下ろした。そして少々の時を経た後、今度は違う忙しない足音が響き、スライドドアがゆっくりと開けられる。
「おはようございます、ノア様、カノ様。ヒノ様はまだお目覚めになられていないのですね。」
きょろきょろとリビングを見渡していたクイも、[漢字]プレゼント[/漢字][ふりがな]それ[/ふりがな]の存在に気付き、それに向かって歩を進める。
「ノア様か、カノ様が用意されたのですか? それとも…ヒノ様でしょうか?」
ノアとカノはどちらも首を横に振り、クイも不思議そうな表情を浮かべ警戒しつつもう一度歩を進めた。プレゼントボックスから特に近いカノを守るような体勢であり、一通り見てから、彼もソファーに座り込む。
「…ノア様とカノ様が危険だと判断されていないのならば、心配する必要はないのでしょうか。」
小さくため息をついてから、クイも少しは安心したようでカノの邪魔にならぬようそのまま口を閉ざした。
「おはよう! 今日は少し目覚めが遅かったらしいね。」
朝から元気な声色で、ヒノはにこにこと笑みを浮かべリビングへと降りてきた。やはりクリスマスツリーというものは目立つようで、ヒノもすぐさま謎のプレゼントの存在を認識する。
「へぇ、クリスマスプレゼントか…クイ、君が用意したのかい? それとも別の誰かかな?」
ヒノがそう訊くも、クイも誰も彼もは否定の言葉を投げかけた。
「ふうん、ならば誰だろうね? やはりサンタさんかな? レノ以外は一応未成年だし。」
相も変らぬ笑みを浮かべながら、もう好奇心を失ったと言わんばかりに彼はダイニングの椅子に腰かける。そして、彼のキャンバスを出してペンをとり始めた。
「……なァ、このプレゼントボックス…開けてみないか?」
未知の出来事にノアのテンションが少々上がっているようで、楽しそうにプレゼントボックスを持ち上げる。安易に持ち上げたとて、爆発も何もしない。それでやっと多少の安全は保障された。朝食に至っては、プレゼントが気になっているノアのせいが未完成のまま放置されている。
「もちろんでございます、ノア様。」
クイは即座にノアに言葉を返し、彼から自分自身の名が書かれたプレゼントボックスを受け取った。クイのものは小さいが、カノのものは比較的大きく、どうやら内容物がどれも違うらしい。だが全て緑と赤というザ・クリスマスといった配色をしており、誰もが思い浮かべるであろう外見をしていた。ノアと同じようにクイもそわそわしており、彼も好奇心に負けているよう。
「うん、まあ確かに開けないという理由はないが………。」
[漢字]カノとヒノ[/漢字][ふりがな]残りの二人[/ふりがな]はあまり興味が湧いていないようであったが、それとしても意味の分からないものを開けるという事はワクワクするようできちんと受け取っていた。
「パンドラの箱か、それとも女神が笑うか…どちらでもいいがね。」
不安になりそうな事を口走りながら、ヒノは大きなリボンを解く。それに倣い他の三人もリボンを引っ張った。しゅるしゅるとほどけていき、そのまま皆で蓋を開けてみる。
「フム、化学本か…次の実験のネタになるよ。サンタさんには礼を言わないとね。」
ノアはぺらぺらと冊子をめくりながらそう呟いた。その表情は楽しそうに綻んでおり、朝食も摂り終わってのならば直ぐに読み終わってしまい直ぐに実験を開始するに違いない。
「クッションだね。最近は椅子にずっと座り続けていて腰を痛めていたから助かるよ。」
最も箱が大きかったであろうカノは、低反発で腰に優しい猫柄のクッションが封入されていた。彼は執筆活動の為長時間着席している事が多く、事故で足も悪くなってしまっている関係上運動不足になりがちである。
「画材セットか! いいね、絵具の種類はあればあるほどいい! レノにも少し分けようか。」
丁度絵具を切らしていたのか、嬉しそうにそれを物色している。珍しい色もあるようで、声色も歓喜の感情を含んでいた。それはあまりにも明るい表情であり、見ている者までも機嫌がよくなってしまいそうな程であった。
「…泰山木のキーホルダーねェ。」
白く美しい花を模ったキーホルダー。鞄などにつけると丁度良い大きさである。お土産もので贈ると最も喜ばれそうなのはこれであろう。あまり嬉しそうな表情ではないが、取り付けたり等はしそうであった。
「おお、いいじゃないかクイ! 可愛らしいね。」
カノがクイのキーホルダーをよく観察している。そのキーホルダーはプラスチック製であり、そのまま花をレジンで固めたかのように透き通り美しい外見を保っていた。
「カノ様、ボクは大丈夫ですので差し上げましょうか?」
「いいよ。ワタシにはこのクッションがあるしね。」
きちんと断りを入れながら、皆でそれぞれのプレゼントを見て遊ぶ。それは年相応と言うべきであろうか、まだまだあどけなさが残る会話であった。あまりにそれは殺人者とは思えない純真さであり、もし彼らの事を一切知らない者が見ればただただ友人と団欒を楽しんでいる風景と答えるだろう。
「…………ちゃんと喜んでくれてる…!」
わいわいと穏やかな喧騒を訊きながら、そっと隠れて観察している者がいた。いつもは八の字の眉毛にしているそれを吊り上げて、ガッツポーズを彼は誰にも分からぬように行ってからその声に紛れてもう一度自分の部屋へと戻るレノは、悪戯っ子な表情で微笑みを浮かべ恍惚としている。
・・・
クリスマスの前日、つまるところクリスマス・イブの夜にて。
「…僕も、最長年らしいところ見せないと。」
「ずっと世話になってるのも申し訳ないし。」と付け加えて、そっと木の幹近くにプレゼントを置いた。ちゃんと誰に贈るものなのか、きちんと名を書いた手紙を添えて。筆跡で気付かれぬよう、コンピューターで印刷したものを使った。
「……バレないように。」
自らにそう言い聞かせ、彼は抜き足差し足で自らの寝室に戻る。ちょっとやそっとの足音すらも恐ろしい、この瞬間が生きている中で最も緊張したと彼は語る事だろう。ありがたい事に、どうやらレノの動きで起きる者はおらず皆がすやすやと眠っていた。そしてそのまま、彼は自らの布団に潜り込む。もしかしたら気付かれてしまっているのではないかという緊張感で眠る事は出来なかったが。
・・・
わざと寝坊したようにレノは演出してから、リビングへと降りた。もうすっかりと喧騒は落ち着いており、ノアは朝食を調理し、カノはのんびりとペンをとり、クイは出来るだけ邪魔をしないよう小説を読み込んでいた。ヒノは早速絵具を試しに、部屋へ向かっている。
「なァ、[漢字]レノ[/漢字][ふりがな]てめー[/ふりがな]にはないのかよォ?」
クイは疑問符を浮かべながら、レノの瞳を真っすぐ見つめた。
「僕は成人済みですし、ね! そりゃあ来ませんよ。サンタさんなんて。」
レノはにっこりと笑みを浮かべて言う。その瞳には爽やかであっさりとした穏やかさが混じっており、四人を
微笑ましく見守っていた。満足げに彼は頷いた後、そのまま自室に戻ると、枕元に置かれている何かに気がつく。それはレノが彼らに用意したように、きちんと包まれているプレゼントボックスであった。
「…あれ、なんでこんなところにプレゼントが? 僕置いてないのに……。」
こてん。と小首を傾げて彼は考え込む。もしかしたら四人が置いてくれたのだろうか、と考えてもみたが気付かれているわけがないと考えつつ、しゅるしゅるとリボンをほどいた。
「わ、可愛い! ぬいぐるみだ!」
ボックスに封入されていたのは、可愛らしい熊のぬいぐるみ。その首元には黒いネクタイがつけられており、布地は薄茶色で、オーダーメイドのものだ。
「また増えるなぁ、ふふ。」
嬉しそうに彼は目を細めた。沢山のぬいぐるみに囲まれて眠っているレノは、ちょっとずつぬいぐるみたちが追加されていくという事が嬉しいらしい。ちなみにプレゼントである熊のぬいぐるみを省けば、全てクレーンゲームで入手したものである。
「…成人済みの僕にもまだ、[漢字]サンタさん[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]って来てくれるんだね。不思議だなぁ。」
そうぼやくと、空っぽになっらプレゼントボックスをゴミ箱に投げ入れようとしたが、そっと自らの机の上に置いた。捨てるのが悲しかったのか、レノはもう一度同じようにリボンを結び本棚の空いている場所に飾ると、もう一度嬉しそうに目を細めた。
「うん、すっごい可愛い!」
・・・
「ちゃんと設置する事が出来たよ! ありがとうね、クイ。隙を作ってくれて。」
「お褒め預かり、光栄です!!」
「演技はよかったが…私の方が一枚上手だったな。」
「それに、わたし達にこんな事をするだなんてレノしかいないからね。」
「…ですが、あいつも最長年らしいところを見せたかったのでしょう。騙されているフリを続ける、という方針でよいのではないでしょうか。」
「うん、それでいいんじゃないかなァ。だけれど、彼は勘が鋭いから騙し続ける事はとても難しいのだけれど…。」
「しょうがないだろう。まぁ…直ぐに訊かなかったのならばきっと大丈夫だ。」