二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!
今日は十月三十一日。世間ではハロウィン、という事でお祭り騒ぎが起こっている。もちろん、彼らが居住地としているこの町も例外ではなかった。ハロウィン前に回ってくる回覧板にも、「お菓子を他人の家に強請りにいくのはいいが子供だけで行動させてはダメ。必ず大人と行動する事」という何とも言えない浮かれた内容が書かれているほどだ。それほどこの町では、ハロウィンという行事が根付いている。
「今日はハロウィンだね! ほら、今すぐ仮装でもして出向こうではないか! 町に!」
いきなり扉を開ける轟音が響いたかと思えば、そこにはカノが仁王立ちしていた。ジャックオランタンを模ったバスケットを引っ提げ、死神の仮装をして。
「…あ、付き添いって事っすか…じゃあ、僕殺人鬼の仮装でいいっすか?」
つまるところ、自分は仮装せずにこのまま町に赴きたいという事である。そんな言葉を聞いたカノは明るかった表情をむすっと歪めた。だが、それをも見通している、と言わんばかりに彼の口角は三日月型に変わった。
「いやいやいやァ! 君はそう言うだろうからね、もうこちらの方で用意しておいたよ。」
ノアが用意していたのは、モノトーンの衣装が映える悪魔の衣装である。レノの体格にぴったり合うように作られており、どうやら特注の品らしい。
「…あー…ありがとうございます。じゃ、着替えるんで…待っててください。僕以外終わってるんすか?」
「そうだねェ、終わってるよ。クイがとても楽しみにしているから、早くしてあげておくれ。」
・・・
「レノォ! 遅かったじゃねェかァ!」
クイの機嫌がいつもよりいい。彼はこの五人の中でも最もお祭り騒ぎやイベントが大好きな派手好きだからだろう。それに、こういう何か『特別な恰好をする』という点も大きい。彼はとても手が込んでいる狼男のコスプレをしている。律儀に耳と尻尾までつけて。
「ンー、今日は彼女とデートしてもよかったが…去年のクリスマスでは一人で出かけてしまったからね。今回は付き合おう。」
人の生首が入ったホルマリン漬けを抱きかかえながら、ヒノは笑う。彼は人形の仮装をしており、それに合わせてか四人と比べて衣装がボロボロである。彼女と呼ばれるホルマリン漬けに、一言告げ彼はそのままソファーに置いて行った。
「そろそろいいかな? それじゃあ、出発しようか!」
「あ、その前に。はい、レノも。」
ヴァンパイアの衣装で、髪を珍しく下ろしているノアがレノにジャックオランタンのバスケットを渡す。
「えっ、僕一応成人なんで…付き添い、ってだけなんですけど………。」
動揺を隠せないレノがそう訴えるが、ノアはカラっとした笑みを浮かべ、無言の圧と共に押し付ける。困惑しながらも、受け取るしかないレノは大人しくそのバスケットを腕に通した。
「それじゃあ、出発しようか!」
・・・
こんこんこん、と何度かノックをすると、眠気眼を擦ってやってきたランが出迎えてくれる。
「わーっ、みんな可愛いねぇ! どうしたの? ハロウィンだから……お菓子でも奪いに来たのかなっ?」
ウキウキとした態度を隠せず、彼は楽しそうに笑っている。
「…そうだなァ、トリックオアトリート。菓子を寄越せ。抵抗しようものならばキサマを殺す。」
「ワイルドだね! そういうクイくんも可愛いよ! 狼男の仮装をしてるからかな?」
おちゃらけた事をほざくランクイはに怒りを覚えるが、ここで殴ってしまっては警察を呼ばれるだろう。今すぐにでも動かしたい拳を抑えながら、マグマのように噴き出し止まらない怒りを何とかして耐えきる。ランが持ってきたのは、市販のアイシングクッキーであった。
「手作りだと食べてくれないでしょ? それに、味も口に合うか心配だし…最近みんながよく通ってるパティスリーで買ってきたんだ!」
ストーカーまがいの事をしている事を自身の口から零しつつ、可愛らしく包装されているクッキーを手渡す。本当に一切の手は加えられておらず、五人に食べてもらうためだけのものらしい。
「そういえば、こんなクッキーがショーケースにあったね。礼を言おう。」
「ううん! 全然! 推しの幸せを見守るのがオタクの務めだしねっ!」
ノアは相変わらず何を言っているのか分からないという様子であるが、ぺこりと頭を軽く下げてそのまランの家から去った。ランと関わったからか、少々クイの眉が顰められている。
「…どうしても苦手なんだね、クイは。」
ヒノに話しかけられると、力が抜けたのか眉が緩んだ。三人の目の前では出来るだけ怒りを隠そうとしているらしい。だが、先程の雰囲気からして丸わかりである。
「…はい、どうしてもあの者は受け入れられず…ノア様も、カノ様も、ヒノ様もお許しになられているという事は重々承知しているのですが……。」
苦しそうに、そして饒舌で楽観的な普段とは違った声色で返答を送った。視線も交わす事が出来ず、すっかり俯いてしまっている。自身の片腕をぎゅっと握って、豪胆な彼とは一味も二味も違う姿であった。ノア達の顔に泥を塗るわけにはいかず、だが自身の感情も制御が利かない程に大きい。
「ワタシ達が受け入れているからって、君も受け入れられるとはならないだろう? まあ、正直言ってただの不審者だったからね。」
ランも幹部ではあったので、何度か会議で話し合ったり見かけた事はあるのだ。地上戦を得意とする陸軍ではなく、空軍で戦闘機のパイロットとして活躍していたが。
「…ありがとうございます、カノ様。」
クイの口角が上がり、大きくお辞儀をした。入りすぎていた肩の力が、とてもとても抜けたように見える。
・・・
次。まだ二件目であるがまともに扱ってくれ、お菓子をくれそうな人がランとこの一人以外居ないので残念ながら最後である。
「…なんでそもそもスノさんの家知ってるんだい。ま、いいんだけどサ。」
「ほら、スノ兄さん。とっとと菓子を寄越せ。」
兄さん、という呼称をつけている辺り、マインド家の血筋らしい。彼はポーカーフェイスであり、一切表情を変えずに明るい声で彼らをからかう。
「おおっ、中々に肝が据わった男に育ったらしいねェ! 可愛い可愛い弟達の為に、スノさんのお菓子を少しばかりあげよう!」
ジャージのポケットに突っ込んでいたお菓子をまさぐり、手のひらを差し出してきたカノに乗せてやる。彼が取り出したものは、未開封のソフトキャンディ数個だった。
「これで満足かな? フフフっ、どうせならばお茶でも淹れてあげようか! ほら、ゆっくりしていくがいい! そこの二人も、もちろんおいで!」
ちょいちょいと手招きをするが、誰も彼も足を進めようとする人物はいない。五人全員、動かないのであろう気配を感じ、スノは大きなため息を吐いた。
「釣れないねェ、無駄に頭はよくなってしまって……はぁ。騙されないのかァ、やっぱり、軍人の勘とやらを舐めていたかな?」
戦場で鍛えられてきた彼らからすれば、ひよっこともいえる彼のチープな嘘など見破るのは楽勝である。引っかからなかった事に、眉間の皺を更に深めた。自分の悪だくみを見破られる事が嫌いな彼は、常に不機嫌そうであった表情を更に歪める。
「ン、まーいいさ。スノさんも鍛えておかなければね!」
好敵手が見つかった、と笑い、スノはそのまま彼らを送り出していった。
・・・
「…というか、あの人…兄貴達のお兄さん…っすよね? 僕そんなの知らなかったんすけど。そもそも軍にいました?」
「いないよ。まず、わたし達が軍入りする前に関わりはなくなっていた。」
「ふーん…ヒノ兄貴みたいなものすか?」
「いいや、それとは少し違うが……まあ、いいだろう。大方正解しているからね。」
少しだけ含みを持たせたヒノは、そのまま口を噤んだ。日は暮れているというのに、鴉が煩く泣いている。
「今日はハロウィンだね! ほら、今すぐ仮装でもして出向こうではないか! 町に!」
いきなり扉を開ける轟音が響いたかと思えば、そこにはカノが仁王立ちしていた。ジャックオランタンを模ったバスケットを引っ提げ、死神の仮装をして。
「…あ、付き添いって事っすか…じゃあ、僕殺人鬼の仮装でいいっすか?」
つまるところ、自分は仮装せずにこのまま町に赴きたいという事である。そんな言葉を聞いたカノは明るかった表情をむすっと歪めた。だが、それをも見通している、と言わんばかりに彼の口角は三日月型に変わった。
「いやいやいやァ! 君はそう言うだろうからね、もうこちらの方で用意しておいたよ。」
ノアが用意していたのは、モノトーンの衣装が映える悪魔の衣装である。レノの体格にぴったり合うように作られており、どうやら特注の品らしい。
「…あー…ありがとうございます。じゃ、着替えるんで…待っててください。僕以外終わってるんすか?」
「そうだねェ、終わってるよ。クイがとても楽しみにしているから、早くしてあげておくれ。」
・・・
「レノォ! 遅かったじゃねェかァ!」
クイの機嫌がいつもよりいい。彼はこの五人の中でも最もお祭り騒ぎやイベントが大好きな派手好きだからだろう。それに、こういう何か『特別な恰好をする』という点も大きい。彼はとても手が込んでいる狼男のコスプレをしている。律儀に耳と尻尾までつけて。
「ンー、今日は彼女とデートしてもよかったが…去年のクリスマスでは一人で出かけてしまったからね。今回は付き合おう。」
人の生首が入ったホルマリン漬けを抱きかかえながら、ヒノは笑う。彼は人形の仮装をしており、それに合わせてか四人と比べて衣装がボロボロである。彼女と呼ばれるホルマリン漬けに、一言告げ彼はそのままソファーに置いて行った。
「そろそろいいかな? それじゃあ、出発しようか!」
「あ、その前に。はい、レノも。」
ヴァンパイアの衣装で、髪を珍しく下ろしているノアがレノにジャックオランタンのバスケットを渡す。
「えっ、僕一応成人なんで…付き添い、ってだけなんですけど………。」
動揺を隠せないレノがそう訴えるが、ノアはカラっとした笑みを浮かべ、無言の圧と共に押し付ける。困惑しながらも、受け取るしかないレノは大人しくそのバスケットを腕に通した。
「それじゃあ、出発しようか!」
・・・
こんこんこん、と何度かノックをすると、眠気眼を擦ってやってきたランが出迎えてくれる。
「わーっ、みんな可愛いねぇ! どうしたの? ハロウィンだから……お菓子でも奪いに来たのかなっ?」
ウキウキとした態度を隠せず、彼は楽しそうに笑っている。
「…そうだなァ、トリックオアトリート。菓子を寄越せ。抵抗しようものならばキサマを殺す。」
「ワイルドだね! そういうクイくんも可愛いよ! 狼男の仮装をしてるからかな?」
おちゃらけた事をほざくランクイはに怒りを覚えるが、ここで殴ってしまっては警察を呼ばれるだろう。今すぐにでも動かしたい拳を抑えながら、マグマのように噴き出し止まらない怒りを何とかして耐えきる。ランが持ってきたのは、市販のアイシングクッキーであった。
「手作りだと食べてくれないでしょ? それに、味も口に合うか心配だし…最近みんながよく通ってるパティスリーで買ってきたんだ!」
ストーカーまがいの事をしている事を自身の口から零しつつ、可愛らしく包装されているクッキーを手渡す。本当に一切の手は加えられておらず、五人に食べてもらうためだけのものらしい。
「そういえば、こんなクッキーがショーケースにあったね。礼を言おう。」
「ううん! 全然! 推しの幸せを見守るのがオタクの務めだしねっ!」
ノアは相変わらず何を言っているのか分からないという様子であるが、ぺこりと頭を軽く下げてそのまランの家から去った。ランと関わったからか、少々クイの眉が顰められている。
「…どうしても苦手なんだね、クイは。」
ヒノに話しかけられると、力が抜けたのか眉が緩んだ。三人の目の前では出来るだけ怒りを隠そうとしているらしい。だが、先程の雰囲気からして丸わかりである。
「…はい、どうしてもあの者は受け入れられず…ノア様も、カノ様も、ヒノ様もお許しになられているという事は重々承知しているのですが……。」
苦しそうに、そして饒舌で楽観的な普段とは違った声色で返答を送った。視線も交わす事が出来ず、すっかり俯いてしまっている。自身の片腕をぎゅっと握って、豪胆な彼とは一味も二味も違う姿であった。ノア達の顔に泥を塗るわけにはいかず、だが自身の感情も制御が利かない程に大きい。
「ワタシ達が受け入れているからって、君も受け入れられるとはならないだろう? まあ、正直言ってただの不審者だったからね。」
ランも幹部ではあったので、何度か会議で話し合ったり見かけた事はあるのだ。地上戦を得意とする陸軍ではなく、空軍で戦闘機のパイロットとして活躍していたが。
「…ありがとうございます、カノ様。」
クイの口角が上がり、大きくお辞儀をした。入りすぎていた肩の力が、とてもとても抜けたように見える。
・・・
次。まだ二件目であるがまともに扱ってくれ、お菓子をくれそうな人がランとこの一人以外居ないので残念ながら最後である。
「…なんでそもそもスノさんの家知ってるんだい。ま、いいんだけどサ。」
「ほら、スノ兄さん。とっとと菓子を寄越せ。」
兄さん、という呼称をつけている辺り、マインド家の血筋らしい。彼はポーカーフェイスであり、一切表情を変えずに明るい声で彼らをからかう。
「おおっ、中々に肝が据わった男に育ったらしいねェ! 可愛い可愛い弟達の為に、スノさんのお菓子を少しばかりあげよう!」
ジャージのポケットに突っ込んでいたお菓子をまさぐり、手のひらを差し出してきたカノに乗せてやる。彼が取り出したものは、未開封のソフトキャンディ数個だった。
「これで満足かな? フフフっ、どうせならばお茶でも淹れてあげようか! ほら、ゆっくりしていくがいい! そこの二人も、もちろんおいで!」
ちょいちょいと手招きをするが、誰も彼も足を進めようとする人物はいない。五人全員、動かないのであろう気配を感じ、スノは大きなため息を吐いた。
「釣れないねェ、無駄に頭はよくなってしまって……はぁ。騙されないのかァ、やっぱり、軍人の勘とやらを舐めていたかな?」
戦場で鍛えられてきた彼らからすれば、ひよっこともいえる彼のチープな嘘など見破るのは楽勝である。引っかからなかった事に、眉間の皺を更に深めた。自分の悪だくみを見破られる事が嫌いな彼は、常に不機嫌そうであった表情を更に歪める。
「ン、まーいいさ。スノさんも鍛えておかなければね!」
好敵手が見つかった、と笑い、スノはそのまま彼らを送り出していった。
・・・
「…というか、あの人…兄貴達のお兄さん…っすよね? 僕そんなの知らなかったんすけど。そもそも軍にいました?」
「いないよ。まず、わたし達が軍入りする前に関わりはなくなっていた。」
「ふーん…ヒノ兄貴みたいなものすか?」
「いいや、それとは少し違うが……まあ、いいだろう。大方正解しているからね。」
少しだけ含みを持たせたヒノは、そのまま口を噤んだ。日は暮れているというのに、鴉が煩く泣いている。