二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!
side ヒノ
ぼーっと、彼らの帰りを待っていると窓ガラスが割れる音が家の中に響く。私は咄嗟に戦闘態勢を取った。位置情報が割れるのが早い。相手はそれほど情報収集に長けているのだろう。
「フム…戦闘か…部屋が汚れてしまうかもしれないね…。」
私は警戒したまま、侵入してきたのであろう敵を慎重に探す。床に散らばっている硝子の破片。物陰の全てからふと侵入者が飛び出してきそうでたまらない。
「どこにいるんだい? 君は…どこにいるのか教えてくれ。」
人影すらも見えない。そんな場所に隠れているというのか。短時間で長距離を動けるはずがないので、今リビングに隠れているはず。こちらから言ってもいいのだが、先手を取られてしまえば負けは濃厚になる。そんな葛藤が渦巻いて、動こうにも動けない。
「…黙るのかい。」
答えを教えてくれるなど、そんな淡い期待など抱いてはいなかった。この場には、残念ながら居場所を教えるなどという行為をする自殺志願者などいない。
「…フム。もしかしてだが…私の背後かい? ちょっとした気配を感じる………。」
私は軍人の勘が未だ利いている。気配を感じるぐらいならば問題はない。踵を返すと、たった一人。侵入者かと思われる男が立っていた。
「ありゃりゃ…気付かれてしまいましたか。」
「ところで…わたくしに、何か用でしょうか?」
私の目の前に現れたのは、優雅に執事衣装を身にまとった刀を携えている人物だった。綺麗に、神経質に整えられた白髪がライトの下で輝いている。
「用? 君が訪問してきたというのにかい? この私達に用があるのは君の方だろう。とっとと要件を話すがいい。」
懐から拳銃を取り出し、彼に向って突きつけた。拳銃に怯える様子もなく、私をじいっと観察してきている。常に上がっている口角と一本の糸のように細く長い目が、自分を見透かされているよう。それがとてつもない程に不快だ。
「そうですね、そうでした。すみませんね、ヒノさん。」
男は礼儀正しく頭をさげる。物腰柔らかだが、彼には払拭出来ないコールタールのようにどろっとした心を感じた。まるで、私達のような。
「どうやら、他の四人はいないようですね? 丁度いい…複数人を相手にすると流石のわたくしでも分が悪い。」
男は刀身を私に向け、それに負けじと銃の照準は一寸も動く事なく男を向いている。だが、この時間はもうすぐ無意味を示唆する事になるだろう。
「オイオイオイオイオイオイオイ…ちょっと待ってくれないかい。私はきさまに攻撃する意思はないぞ。」
そう彼に吐露すると、目を見開く。
「…なんの気です?」
すぐさま、警戒したように目を細める。きっと彼からすれば荒唐無稽な話に感じただろう。だが、私は心からそう思っている。
「なんの気…そんなものはない。ただいい機会だと思っただけだ。」
「フム?」
「私は『裏切る』。飽きた、だとかそんなものではない………過去というものが張り付いてうざったらしいのだ。自分の姿が大嫌いだったあの時がフラッシュバックしてなァ。」
私が口を開くと、彼が動揺したようにその一本の糸のように細い瞳が開かれる。
「…成程。」
今から私は、彼らの仲間などではない。お遊びはもう辞めにしようではないか。過去だとかなんだとか、そういうものはもう振り返りたくなかった。この選択はきっと、私が私であるが為に必要になるだろう。
「…その『眼』…嘘を吐いているようにも見えない………いいでしょう…これからはあなたも立派な『仲間』です。わたくしめと共に、歩もうではないですか。」
「…ああ、もちろん。」
こんなノスタルジックで気色の悪い気分になったのはいつぶりだろうか。いや、もしかすれば初めての感覚かもしれない。
「随分と爽やかな表情をしていますね? ちょこっとだけ…表情が明るくなったような気がします。」
彼は口を手で覆い隠してくすくすと笑う。「そうさ、今は気分がいいのだ。私が私であれるのだからな。」と返すと更に彼の口角は弧を描いた。
「そういえば…まだ自己紹介をしていませんでしたね。わたくしの名前はリタ・プレイグ。よろしくお願いしますね。」
彼、いやプレイグサンは礼儀正しく頭を下げた。私もそれに応じて、プレイグサンに対して自己紹介を始める。
「私の名前はヒノ・マインドだ。もっとも、もう君は私の名を知っているようだがね…。」
「マインドさん…」
その『マインド』という名を聞いた瞬間、私はすぐさま彼の話を遮る。
「マインドという名で呼ばないでくれないか。私はヒノだ。」
少しばかりの昔は『マインド』という姓になんの感情も持たなかったのだが、今になってはその呼び名が嫌になる。
「…そうですか、便宜上、そしてあなたの意思を尊重してヒノさんと呼ばせていただきましょう。それでいいですね? ヒノさん。」
「ああ、それでいいよ。すまないね…勝手な都合で呼び名を変えてしまって。」
「いえ。こちらではそんな人は珍しくありませんから。」
案外、こちらの方が居心地がいいのかもしれない。自分が自分で在れるのだから。
軽蔑と嫌悪。その二つの感情は、この私を築く礎となっていた。その礎からは到底、自身を切り離す事など叶わない。私はそれを知れた。
待っているぞ。我が[漢字]忌むべき相手[/漢字][ふりがな]弟達[/ふりがな]よ。次に相対する時、私は君達を全身全霊で向かえ討たせてもらおう。
ぼーっと、彼らの帰りを待っていると窓ガラスが割れる音が家の中に響く。私は咄嗟に戦闘態勢を取った。位置情報が割れるのが早い。相手はそれほど情報収集に長けているのだろう。
「フム…戦闘か…部屋が汚れてしまうかもしれないね…。」
私は警戒したまま、侵入してきたのであろう敵を慎重に探す。床に散らばっている硝子の破片。物陰の全てからふと侵入者が飛び出してきそうでたまらない。
「どこにいるんだい? 君は…どこにいるのか教えてくれ。」
人影すらも見えない。そんな場所に隠れているというのか。短時間で長距離を動けるはずがないので、今リビングに隠れているはず。こちらから言ってもいいのだが、先手を取られてしまえば負けは濃厚になる。そんな葛藤が渦巻いて、動こうにも動けない。
「…黙るのかい。」
答えを教えてくれるなど、そんな淡い期待など抱いてはいなかった。この場には、残念ながら居場所を教えるなどという行為をする自殺志願者などいない。
「…フム。もしかしてだが…私の背後かい? ちょっとした気配を感じる………。」
私は軍人の勘が未だ利いている。気配を感じるぐらいならば問題はない。踵を返すと、たった一人。侵入者かと思われる男が立っていた。
「ありゃりゃ…気付かれてしまいましたか。」
「ところで…わたくしに、何か用でしょうか?」
私の目の前に現れたのは、優雅に執事衣装を身にまとった刀を携えている人物だった。綺麗に、神経質に整えられた白髪がライトの下で輝いている。
「用? 君が訪問してきたというのにかい? この私達に用があるのは君の方だろう。とっとと要件を話すがいい。」
懐から拳銃を取り出し、彼に向って突きつけた。拳銃に怯える様子もなく、私をじいっと観察してきている。常に上がっている口角と一本の糸のように細く長い目が、自分を見透かされているよう。それがとてつもない程に不快だ。
「そうですね、そうでした。すみませんね、ヒノさん。」
男は礼儀正しく頭をさげる。物腰柔らかだが、彼には払拭出来ないコールタールのようにどろっとした心を感じた。まるで、私達のような。
「どうやら、他の四人はいないようですね? 丁度いい…複数人を相手にすると流石のわたくしでも分が悪い。」
男は刀身を私に向け、それに負けじと銃の照準は一寸も動く事なく男を向いている。だが、この時間はもうすぐ無意味を示唆する事になるだろう。
「オイオイオイオイオイオイオイ…ちょっと待ってくれないかい。私はきさまに攻撃する意思はないぞ。」
そう彼に吐露すると、目を見開く。
「…なんの気です?」
すぐさま、警戒したように目を細める。きっと彼からすれば荒唐無稽な話に感じただろう。だが、私は心からそう思っている。
「なんの気…そんなものはない。ただいい機会だと思っただけだ。」
「フム?」
「私は『裏切る』。飽きた、だとかそんなものではない………過去というものが張り付いてうざったらしいのだ。自分の姿が大嫌いだったあの時がフラッシュバックしてなァ。」
私が口を開くと、彼が動揺したようにその一本の糸のように細い瞳が開かれる。
「…成程。」
今から私は、彼らの仲間などではない。お遊びはもう辞めにしようではないか。過去だとかなんだとか、そういうものはもう振り返りたくなかった。この選択はきっと、私が私であるが為に必要になるだろう。
「…その『眼』…嘘を吐いているようにも見えない………いいでしょう…これからはあなたも立派な『仲間』です。わたくしめと共に、歩もうではないですか。」
「…ああ、もちろん。」
こんなノスタルジックで気色の悪い気分になったのはいつぶりだろうか。いや、もしかすれば初めての感覚かもしれない。
「随分と爽やかな表情をしていますね? ちょこっとだけ…表情が明るくなったような気がします。」
彼は口を手で覆い隠してくすくすと笑う。「そうさ、今は気分がいいのだ。私が私であれるのだからな。」と返すと更に彼の口角は弧を描いた。
「そういえば…まだ自己紹介をしていませんでしたね。わたくしの名前はリタ・プレイグ。よろしくお願いしますね。」
彼、いやプレイグサンは礼儀正しく頭を下げた。私もそれに応じて、プレイグサンに対して自己紹介を始める。
「私の名前はヒノ・マインドだ。もっとも、もう君は私の名を知っているようだがね…。」
「マインドさん…」
その『マインド』という名を聞いた瞬間、私はすぐさま彼の話を遮る。
「マインドという名で呼ばないでくれないか。私はヒノだ。」
少しばかりの昔は『マインド』という姓になんの感情も持たなかったのだが、今になってはその呼び名が嫌になる。
「…そうですか、便宜上、そしてあなたの意思を尊重してヒノさんと呼ばせていただきましょう。それでいいですね? ヒノさん。」
「ああ、それでいいよ。すまないね…勝手な都合で呼び名を変えてしまって。」
「いえ。こちらではそんな人は珍しくありませんから。」
案外、こちらの方が居心地がいいのかもしれない。自分が自分で在れるのだから。
軽蔑と嫌悪。その二つの感情は、この私を築く礎となっていた。その礎からは到底、自身を切り離す事など叶わない。私はそれを知れた。
待っているぞ。我が[漢字]忌むべき相手[/漢字][ふりがな]弟達[/ふりがな]よ。次に相対する時、私は君達を全身全霊で向かえ討たせてもらおう。