二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!
side ラン
「どうしたんだ。きさま。なにをそうかりかりしている?」
どうやらオレのアシスタントである、リノが怒っているようだ。今は彼らがいたという余韻に浸っているのだが、これじゃあ集中出来ないではないか。なにがそんなに気に食わないのかは知ったこっちゃあない。興味もないのだからな。
「…いいえ…なにもありません…。」
こめかみに青筋が浮かんでいる。なにがなんだか分からないが、オレが彼らの話をした途端いつもこうだ。全く。躾が出来ないペットほど厄介なものはない。彼らとの話し合いの席につかないとはどういう事だと問い詰めたいところだが、今は彼らに会えたという幸せを噛み締めよう。
「…ああっ…本当に幸せだ…彼らがオレの家に来てくれるだなんて…くくっ。」
自然と笑みがあふれてしまう。どんな時もこんな幸福を得られた事はない。絵画を見ているかのようにうっとりする気分が味わえるかとは思っていなかった。どれだけこの瞬間と彼らに出会えたという現実が幸せだったのか痛感出来る。
「…。」
彼女が少し拗ねたのか、負のオーラを醸し出しながら俯いている。まあ、このアシスタント如きがオレになにか言うものでもない。オレはまだまだ彼らのファンであり続けるのだ。
「そうだなァ…少し、出掛けてこよう。お前も来るか?」
そうオレが呼びかけると、リノはぱあっ、と表情が明るくなった。まあ、彼女は顔に感情が出やすい。それを観察していれば暇は潰せる。ただ利用しているだけとも知らずに、滑稽なものだ。
「はいっ!!」
相変わらずの声量だ。オレが誘うといつもうるさい。少しばかりは落とせないものか。テンションがあがると声が大きくなってしまうのはオレもノアくんカノくんヒノくんクイくんレノくんと出会った際に確認はしている。まあ、しょうがないものだろう。
「耳が痛い。やめろ。」
「あっ…す、すみません!」
すぐにぺこりと頭を下げる。いいだろう。思いついたが吉日。とっとと行かなければ。夜道というものは静かで好きだ。他人と他愛もない話を続け歩くというものが一番好きだが、今はその相手がこいつしかいない。少々面白くないが、今は我慢しておいてやろう。それに、どうせ置いて行ったとてストーカーしてくるのは目に見えている。ならば誘ってやってもいいだろう。
「とっとと行くぞ。準備をしろ。このオレを待たせるなよ。」
オレがそう言い放ち外出の準備を始めると、彼女もつられて準備を始めた。いそいそとオレよりも早く準備を済ませ、オレが命令した通りに終わらせた。
「…いいじゃないか。褒めてやろう。」
「あ、ありがとうございますっ!」
少し頬を赤らめて彼女は笑う。これでいい。早めに行かなくては。人が多くなる前に。そしてオレ達は家を後にした。話す事といえば今日カノくんクイくんと話したぐらいだ。マシンガンのようにそれを話していると、また少しリノの機嫌が悪くなったような気配がする。まあ、そんな事はどうでもいい。オレはこの嬉しさを誰かに話したいだけなのだからな。
「…。」
「まさかカノくんとクイくんがオレ手作りのクッキーに口をつけてくれるとは思わなかったぜ! 本当にあの時は幸せだった…もう一度あれを体験したいな…バレンタインにチョコレートを贈ろうか。食べてくれないかもしれないが、一度見てくれたというだけでオレは幸せだからな!」
目的地は少し遠い場所にある公園だ。公園、というよりかは緑地と言った方が近いだろう。それにオレ達は向かっている。あそこを往復すれば、だいぶ暇は潰せるだろう。騒がしいッ歓楽街より静かな場所の方が漫画の展開も考えられるだろうしな。
「ン? 猫じゃないか。かわいいな。」
オレ達の目の前を横切ったのは、一匹の黒猫。首を咄嗟に見た辺りでは、野良猫のようだ。原稿が破られてしまっては困る為動物は飼わない事にしているのだが、やはりたまに見ると癒される。リノがなぜかむすっとした顔を浮かべる。どうせまた拗ねたのだろうと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「なによ…あんたら。とっとと散りなさい。」
いつの間にか何者かにオレ達は囲まれていた。住宅街で随分と積極的なものだ。被害は気にしていないのだろうか。人間をバラしすぎたかもしれない。オレの芸術を邪魔するとは、礼儀の鳴っていない野郎だ。
「はあ…なんだ。…ン? きさまら…。」
オレは咄嗟に一人を蹴り上げた。なぜなら、今の時間帯は夜中二時。おそらく監視させていたのだろう。烈々なファンなわけがない。一体何の為にオレに来たのだろうか。なんでもいい。今は防衛手段を取らなくては。やられる前に。
「リノッ! きさま、近接戦闘は出来るんだろうなァ!?」
「もちろんですっ、ラン様っ!」
武器はない。だが、オレならば武器がなくとも十分なはずだ。リノも一応戦えると言っている。先制攻撃はこちらが奪った。この人数不利をどうするか。なにが目的なのか、今は探りを入れるという事しか出来ない。
「住宅街だというのに、だいぶ大胆な事をするなァ。被害というモンを考えてないのか?」
「ラン様には指一本触らせないわッ!!」
リノはさらっと相手を蹴り上げる。そうだリノは馬鹿力だった。骨を折れる程の。オレ達二人でなら、そこら辺のゴロツキ如き余裕だろう。
「…はあ、なにが目的なのか分かったもんじゃねえな。あとで聞き出すとするか。」
全員ぶちのめし、それから一人だけ生かせ情報を聞き出せばいい。退役軍人ではあるが、十分まだ現役で動ける。久しぶりの血みどろの争い。自分の正義を突き通す為に戦ったのはいつぶりだろうか。テンションが上がってしまう。
「分かりましたっ! ラン様っ!」
・・・
「…だいぶ、弱かったなァ。」
まあ、そこら辺のゴロツキに過ぎない。それにしても、オレにそこら辺のゴロツキどもを仕向けてきたのだろうか。意味が分からない。家からはそれなりに近い。車をオレは出しに行くとしよう。
「気づかれては困る。こいつらを持って帰るぞ。」
大体五人程だろうか。これぐらいの人間ならば引きずって持っていけばいいだろう。出来るだけ目を覚まさぬように早く。
「早くついこい。お前ならそいつら如き持っていけるだろ?」
「はっ、はい!」
・・・
とりあえずは家に到着した。まずは地下室に持っていこう。辺りが大変なことになってしまうだろうから。まずは四人殺すとしよう。情報を聞き出すのは一人で充分だ。
「よォ。おはよう。いい眠りだったか?」
オレが話しかけると、たった一人の男が硬直する。男は怯える様子もなく、諦観しているようだった。抵抗するという意思はないらしい。これからが本番だ。
「なあ。お前らの目的はなんだったんだ?」
オレが訊くと、男は口を開こうとしない。リノがしびれを切らし、声を荒げる。
「あんた、ラン様が言っているのよ! 言いなさい!!」
リノが憤怒している。こいつはずっと怒りっぽいのだが、どうにかならないものだろうか。話しかけてきた女の頭を掴んで机に押し付けるとかいう事をした際には流石に驚いてしまった、などというどうでもいい記憶を思い出してしまう。ノスタルジックに浸っている場合ではない。こいつらの目的を聞き出さなければならないのだ。
「…俺にも『誇り』がある…仲間の情報は売りたくねーぜ。」
「ほう? そうか…。」
オレはこいつを殺す気で頭を持った。すると男は慌てて口を開く。命を解放してやる温情はない。どうせこのオレに殺されるんだというのだから情報を売ればいいものを。
「えっと…俺らの目的は…この街で増加している殺人率を低くする事だ。」
「最近、なぜか戦争が終わると殺人率がこの街で増加した…全国平均のうん倍だ。この街は誰かに毒されている…そう思わねーか?」
「この世には誰かの為に動いてくれる優しいヒーローなんて存在しねー。だからそこら辺の被害者が徒党を組んで出来たのが俺らの組織っつーわけだ。」
男の話が終わったようだ。だがまだまだ訊きたい事がある。なぜオレを狙ったか、だ。それを男に訊く。ついでに楽に殺してやる、とつけて。
「…えっと…そうだ。お前が今日家に招いていた野郎…そうだ。カノとクイだ。そして他にもあと三人狙っているが…。」
「あと、お前を狙ったわけじゃない。何か知っているか情報を聞き出すという事が目的なのだ。」
それだけ言うと、男は自身のこめかみに拳銃をつきつけ自殺してしまった。威勢のいい銃声音が静かな住宅街に響いた。そして、オレは出発する際の気持ちのいい気分から一転。無性にイラつき破壊衝動に駆られる。
「…彼らを殺すため? そんなもの、オレは許可しないぞ…。」
彼らを殺そうなどと思い上がった考えの野郎は始末しなければならない。邪魔になるような人物は始末しなければならない。オレもオレで個人で調査しなければならないだろう。いや、それよりも、だ。なぜあいつはオレを狙ったのだ。オレを狙ったところで、何もないはず。オレもこの街のシリアルキラーとして扱われているのだろうか。これじゃあ、まともに漫画が描けない。彼らの安全確保のためにも、オレがゆっくり漫画を描くためにもあいつらは始末しなければいけないのだ。
「…まずは家に突撃するか。起きているだろう。」
起きていなくとも、また朝に訪問すればいいだけだ。こんなにも厄介な事件があるとは。それに、反社組織が個人を追うなんて。こんなの…。
「漫画になりすぎるッ!! なによりも面白いじゃないか!!」
なんて面白い展開なのだろう。きっと読者にも人気が出るはずだ。彼らを守るために、なによりも面白い漫画を描くためにオレは彼らの家にさっさと足を運ばせた。だが、自身で体験する事は出来ないだろう。
「…週刊連載という事が悔やまれるなァ…ッチ。」
如何せん、漫画というものは時間がかかる。毎日午後二十三時には眠りにつき体調は崩さぬよう不規則な生活はしないを徹底しているが、これに参加してしまえばどうなるかが分からない。
「サポートに…回るか。武器の提供ならばいくらでも出来る。」
彼らが緊急事態に陥るとはとても思えないが、万が一陥った時はアシスタントも連れて彼らの援護につこう。
「…おい。リノ」
「はっ、はい!」
「戦闘になるかもしれん。準備はしておけ。」
リノの腑抜けた「えっ。」という声が聞こえる。そして少々焦ったような顔を浮かべる。この顔は漫画に使えそうだが、今はそれどころではないのだ。
「先に家に帰れ。オレは用事が出来た。」
「で、ですがっ」
彼女が言葉を発する前に、オレが割り込む。
「このオレの言う事を大人しく聞けないというのか?」
少し圧をかけて言うと、リノはあたふたとしている。これでいい。これでこいつは必ずオレの命令を聞くはずだ。全く、一度で聞けばいいものを。
「すみませんっ、ラン様っ。」
ぺこりとリノは深く頭を下げる。そう。これでいい。こいつがついてきてしまうと面倒なことになりそうだ。まあ、反社組織の人間一人二人ぐらいならばオレ一人で大丈夫だろう。
「どうしたんだ。きさま。なにをそうかりかりしている?」
どうやらオレのアシスタントである、リノが怒っているようだ。今は彼らがいたという余韻に浸っているのだが、これじゃあ集中出来ないではないか。なにがそんなに気に食わないのかは知ったこっちゃあない。興味もないのだからな。
「…いいえ…なにもありません…。」
こめかみに青筋が浮かんでいる。なにがなんだか分からないが、オレが彼らの話をした途端いつもこうだ。全く。躾が出来ないペットほど厄介なものはない。彼らとの話し合いの席につかないとはどういう事だと問い詰めたいところだが、今は彼らに会えたという幸せを噛み締めよう。
「…ああっ…本当に幸せだ…彼らがオレの家に来てくれるだなんて…くくっ。」
自然と笑みがあふれてしまう。どんな時もこんな幸福を得られた事はない。絵画を見ているかのようにうっとりする気分が味わえるかとは思っていなかった。どれだけこの瞬間と彼らに出会えたという現実が幸せだったのか痛感出来る。
「…。」
彼女が少し拗ねたのか、負のオーラを醸し出しながら俯いている。まあ、このアシスタント如きがオレになにか言うものでもない。オレはまだまだ彼らのファンであり続けるのだ。
「そうだなァ…少し、出掛けてこよう。お前も来るか?」
そうオレが呼びかけると、リノはぱあっ、と表情が明るくなった。まあ、彼女は顔に感情が出やすい。それを観察していれば暇は潰せる。ただ利用しているだけとも知らずに、滑稽なものだ。
「はいっ!!」
相変わらずの声量だ。オレが誘うといつもうるさい。少しばかりは落とせないものか。テンションがあがると声が大きくなってしまうのはオレもノアくんカノくんヒノくんクイくんレノくんと出会った際に確認はしている。まあ、しょうがないものだろう。
「耳が痛い。やめろ。」
「あっ…す、すみません!」
すぐにぺこりと頭を下げる。いいだろう。思いついたが吉日。とっとと行かなければ。夜道というものは静かで好きだ。他人と他愛もない話を続け歩くというものが一番好きだが、今はその相手がこいつしかいない。少々面白くないが、今は我慢しておいてやろう。それに、どうせ置いて行ったとてストーカーしてくるのは目に見えている。ならば誘ってやってもいいだろう。
「とっとと行くぞ。準備をしろ。このオレを待たせるなよ。」
オレがそう言い放ち外出の準備を始めると、彼女もつられて準備を始めた。いそいそとオレよりも早く準備を済ませ、オレが命令した通りに終わらせた。
「…いいじゃないか。褒めてやろう。」
「あ、ありがとうございますっ!」
少し頬を赤らめて彼女は笑う。これでいい。早めに行かなくては。人が多くなる前に。そしてオレ達は家を後にした。話す事といえば今日カノくんクイくんと話したぐらいだ。マシンガンのようにそれを話していると、また少しリノの機嫌が悪くなったような気配がする。まあ、そんな事はどうでもいい。オレはこの嬉しさを誰かに話したいだけなのだからな。
「…。」
「まさかカノくんとクイくんがオレ手作りのクッキーに口をつけてくれるとは思わなかったぜ! 本当にあの時は幸せだった…もう一度あれを体験したいな…バレンタインにチョコレートを贈ろうか。食べてくれないかもしれないが、一度見てくれたというだけでオレは幸せだからな!」
目的地は少し遠い場所にある公園だ。公園、というよりかは緑地と言った方が近いだろう。それにオレ達は向かっている。あそこを往復すれば、だいぶ暇は潰せるだろう。騒がしいッ歓楽街より静かな場所の方が漫画の展開も考えられるだろうしな。
「ン? 猫じゃないか。かわいいな。」
オレ達の目の前を横切ったのは、一匹の黒猫。首を咄嗟に見た辺りでは、野良猫のようだ。原稿が破られてしまっては困る為動物は飼わない事にしているのだが、やはりたまに見ると癒される。リノがなぜかむすっとした顔を浮かべる。どうせまた拗ねたのだろうと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
「なによ…あんたら。とっとと散りなさい。」
いつの間にか何者かにオレ達は囲まれていた。住宅街で随分と積極的なものだ。被害は気にしていないのだろうか。人間をバラしすぎたかもしれない。オレの芸術を邪魔するとは、礼儀の鳴っていない野郎だ。
「はあ…なんだ。…ン? きさまら…。」
オレは咄嗟に一人を蹴り上げた。なぜなら、今の時間帯は夜中二時。おそらく監視させていたのだろう。烈々なファンなわけがない。一体何の為にオレに来たのだろうか。なんでもいい。今は防衛手段を取らなくては。やられる前に。
「リノッ! きさま、近接戦闘は出来るんだろうなァ!?」
「もちろんですっ、ラン様っ!」
武器はない。だが、オレならば武器がなくとも十分なはずだ。リノも一応戦えると言っている。先制攻撃はこちらが奪った。この人数不利をどうするか。なにが目的なのか、今は探りを入れるという事しか出来ない。
「住宅街だというのに、だいぶ大胆な事をするなァ。被害というモンを考えてないのか?」
「ラン様には指一本触らせないわッ!!」
リノはさらっと相手を蹴り上げる。そうだリノは馬鹿力だった。骨を折れる程の。オレ達二人でなら、そこら辺のゴロツキ如き余裕だろう。
「…はあ、なにが目的なのか分かったもんじゃねえな。あとで聞き出すとするか。」
全員ぶちのめし、それから一人だけ生かせ情報を聞き出せばいい。退役軍人ではあるが、十分まだ現役で動ける。久しぶりの血みどろの争い。自分の正義を突き通す為に戦ったのはいつぶりだろうか。テンションが上がってしまう。
「分かりましたっ! ラン様っ!」
・・・
「…だいぶ、弱かったなァ。」
まあ、そこら辺のゴロツキに過ぎない。それにしても、オレにそこら辺のゴロツキどもを仕向けてきたのだろうか。意味が分からない。家からはそれなりに近い。車をオレは出しに行くとしよう。
「気づかれては困る。こいつらを持って帰るぞ。」
大体五人程だろうか。これぐらいの人間ならば引きずって持っていけばいいだろう。出来るだけ目を覚まさぬように早く。
「早くついこい。お前ならそいつら如き持っていけるだろ?」
「はっ、はい!」
・・・
とりあえずは家に到着した。まずは地下室に持っていこう。辺りが大変なことになってしまうだろうから。まずは四人殺すとしよう。情報を聞き出すのは一人で充分だ。
「よォ。おはよう。いい眠りだったか?」
オレが話しかけると、たった一人の男が硬直する。男は怯える様子もなく、諦観しているようだった。抵抗するという意思はないらしい。これからが本番だ。
「なあ。お前らの目的はなんだったんだ?」
オレが訊くと、男は口を開こうとしない。リノがしびれを切らし、声を荒げる。
「あんた、ラン様が言っているのよ! 言いなさい!!」
リノが憤怒している。こいつはずっと怒りっぽいのだが、どうにかならないものだろうか。話しかけてきた女の頭を掴んで机に押し付けるとかいう事をした際には流石に驚いてしまった、などというどうでもいい記憶を思い出してしまう。ノスタルジックに浸っている場合ではない。こいつらの目的を聞き出さなければならないのだ。
「…俺にも『誇り』がある…仲間の情報は売りたくねーぜ。」
「ほう? そうか…。」
オレはこいつを殺す気で頭を持った。すると男は慌てて口を開く。命を解放してやる温情はない。どうせこのオレに殺されるんだというのだから情報を売ればいいものを。
「えっと…俺らの目的は…この街で増加している殺人率を低くする事だ。」
「最近、なぜか戦争が終わると殺人率がこの街で増加した…全国平均のうん倍だ。この街は誰かに毒されている…そう思わねーか?」
「この世には誰かの為に動いてくれる優しいヒーローなんて存在しねー。だからそこら辺の被害者が徒党を組んで出来たのが俺らの組織っつーわけだ。」
男の話が終わったようだ。だがまだまだ訊きたい事がある。なぜオレを狙ったか、だ。それを男に訊く。ついでに楽に殺してやる、とつけて。
「…えっと…そうだ。お前が今日家に招いていた野郎…そうだ。カノとクイだ。そして他にもあと三人狙っているが…。」
「あと、お前を狙ったわけじゃない。何か知っているか情報を聞き出すという事が目的なのだ。」
それだけ言うと、男は自身のこめかみに拳銃をつきつけ自殺してしまった。威勢のいい銃声音が静かな住宅街に響いた。そして、オレは出発する際の気持ちのいい気分から一転。無性にイラつき破壊衝動に駆られる。
「…彼らを殺すため? そんなもの、オレは許可しないぞ…。」
彼らを殺そうなどと思い上がった考えの野郎は始末しなければならない。邪魔になるような人物は始末しなければならない。オレもオレで個人で調査しなければならないだろう。いや、それよりも、だ。なぜあいつはオレを狙ったのだ。オレを狙ったところで、何もないはず。オレもこの街のシリアルキラーとして扱われているのだろうか。これじゃあ、まともに漫画が描けない。彼らの安全確保のためにも、オレがゆっくり漫画を描くためにもあいつらは始末しなければいけないのだ。
「…まずは家に突撃するか。起きているだろう。」
起きていなくとも、また朝に訪問すればいいだけだ。こんなにも厄介な事件があるとは。それに、反社組織が個人を追うなんて。こんなの…。
「漫画になりすぎるッ!! なによりも面白いじゃないか!!」
なんて面白い展開なのだろう。きっと読者にも人気が出るはずだ。彼らを守るために、なによりも面白い漫画を描くためにオレは彼らの家にさっさと足を運ばせた。だが、自身で体験する事は出来ないだろう。
「…週刊連載という事が悔やまれるなァ…ッチ。」
如何せん、漫画というものは時間がかかる。毎日午後二十三時には眠りにつき体調は崩さぬよう不規則な生活はしないを徹底しているが、これに参加してしまえばどうなるかが分からない。
「サポートに…回るか。武器の提供ならばいくらでも出来る。」
彼らが緊急事態に陥るとはとても思えないが、万が一陥った時はアシスタントも連れて彼らの援護につこう。
「…おい。リノ」
「はっ、はい!」
「戦闘になるかもしれん。準備はしておけ。」
リノの腑抜けた「えっ。」という声が聞こえる。そして少々焦ったような顔を浮かべる。この顔は漫画に使えそうだが、今はそれどころではないのだ。
「先に家に帰れ。オレは用事が出来た。」
「で、ですがっ」
彼女が言葉を発する前に、オレが割り込む。
「このオレの言う事を大人しく聞けないというのか?」
少し圧をかけて言うと、リノはあたふたとしている。これでいい。これでこいつは必ずオレの命令を聞くはずだ。全く、一度で聞けばいいものを。
「すみませんっ、ラン様っ。」
ぺこりとリノは深く頭を下げる。そう。これでいい。こいつがついてきてしまうと面倒なことになりそうだ。まあ、反社組織の人間一人二人ぐらいならばオレ一人で大丈夫だろう。