- 閲覧前にご確認ください -

第一に、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

この小説は『【参加型】今後、類を見ないほどの栄光を!!!』という作品のスピンオフになります。許可は取っておりますのでご安心ください。

ご本家様は必ず周回してください。

この作品は「欲望の書き合わせ」です。ご都合展開などお見苦しい場面が多々あると思われます。そして、キャラクター達が喋る内容は過激なものが多く、人によってはそういう意思があるのかと思われるものもあるかもしれません。了承できる方はご閲覧ください。第三話・第七話にて、下ネタも含まれます。直接的な表現はありませんが、第三話にて一人えっちの事後だと思われる描写が含まれます。第七話は、性行為を表すS〇Xが入りますので、ご注意ください。
番外編3にて、ヒノくん×モブ(死体)の軽いBL表現が含まれます。ご注意ください。
注意書きは常に増える可能性があります。

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二次創作
イカれたメンバーを紹介するぜ!

#13

第八話

side カノ

 今日はノア兄さんが料理を手伝ってほしいという事でワタシ達に料理を教えるらしい。確かに、料理が上手いと色々便利だろうしそれでいいのかもしれない。だが、神経質なノア兄さんの事だ。もしかすれば蹴られるかもしれない。マシだとしても半日説教コースだろう。お仕置きもされるのなら、もしかすると腕や脚の骨を折られるかもしれない。流石に命は惜しい。大人しくノア兄さんに従っていた方がいいだろう。

「カノ、こちらに来い。」

 ノア兄さんが手招きしている。そろそろ時間のようだ。ワタシはノア兄さんの元へ近寄った。そしてノア兄さんがいつのまにか用意していた野菜がまな板の上に置かれている。これを使って何かを作れという事だろう。

「今日作るのは野菜炒めだ。一人前だから、そこら辺は理解していてくれよ。」
「あ、ノア兄さんご飯食べてたね。ワタシの分…って事かい?」
「そうだね。こちらの方が無駄にならないだろう。」

 ノア兄さんは几帳面に分量が書かれたメモを渡してきた。ついでに調理方法と切り方が乗っている。なんというか、ノア兄さんは神経質に近い。完璧主義なのだろうか。だが、たまに飽きたと言いながらどこかへ走り去ってしまう時もある。猫に近しいのかもしれない。

「それじゃあ、作るよ。」
「まずはキャベツだ。芯を切り落とし、食べやすい大きさに切れ。洗っておいたから。」

 ノア兄さんが近くで見守ってくれている。言うとおりにすると、キャベツが他の皿に移され次は人参とピーマンを寄越してくる。

「人参は食べやすい大きさに切れ。その前にちゃんと皮むきをしろよ。」

 ノア兄さんにピーラーを手渡される。意外に人参の皮むきが楽しい。そうして、人参を食べやすい大きさに切った。だいぶ不揃いな見た目はしているが、次にノア兄さんから「ピーマンはヘタと種を取って食べやすい大きさに切れ。」と告げられる。ちゃんと言うとおりにし、人参とピーマンを他の容器に移した。

「次は…サラダ油をフライパンに入れて熱し、豚肉と塩コショウをいれて中火で炒めるんだ。豚肉の色が変わるまでな。」
「はーい。」

 とりあえず、言うとおりにしているとガラスが割れる音がする。どうせ誰かしらが窓ガラスかコップか何かを割ったのだろう。少し目を離すと、ヒノ兄さんが窓から入ってきたのかリビングの中に窓ガラスの破片と思われるものが飛び散っている。

「…ン? ヒノ兄さんが窓を割ったようだな。少し待っていてくれ。」

 ノア兄さんは箒を持って起こったであろう現場へと向かっていった。そして、ガラスが割れた音が聞こえたのかけたたましい音を立ててクイが階段を駆け下りてくる。

「ヒノ様ッ!!」

 窓を割って入ってくるような野郎はヒノ兄さんしかいない。だからか、クイはガラスが割れる音が聞こえた瞬間いつも階段を駆け下りてくる。

「大丈夫でしょうかッ!? ヒノ様ッ!!」

 クイは割れたガラスに囲まれて動けないヒノ兄さんの元へ駆け寄った。この時のみ、ヒノ兄さんが物凄くマヌケに見えるのだがどうすればよいのだろうか。そもそも兄としての威厳が少しもない。初対面の人間からすれば飄々としており少々怖いらしい。その感情はよく分からないが、そういうものなのだろいう。今思うと、レノが下りてきていないがどうせ絵を描いているのだろう。集中しすぎて聞こえていないに違いない。そして、暫くあの三人が騒いでいるところを見ていると、いきなり少し熱いものを感じる。

「あ。ねーノア兄さん。発火した。」
「ちゃんと見ておけと言っただろうがァァァァァアアアアアアア!!」

 消火しなければ。凄い、フランベみたいだ。こんな燃えているところ、村や街以外で見るとは思っていなかった。これを見ていると、ヒノ兄さんが村を一つ焼いた事を思い出す。あの時、ヒノ兄さんが『せめて好きなタイプの野郎がいるか見ておきたかったなあ』と言いながら物理的に更なる火種を撒いていたのが印象的だった。ヒノ兄さんがなんやかんやで一番殺生にこだわらない人間かもしれない。

「ハハッ、見てくれよノア兄さん。フランベみたいじゃないか? それにこんな景色、村を一つ焼いた以来だ! 少しスケッチブックを取ってこよう。待っててくれ。」
「そんな呑気な事言ってる場合かマヌケ!! 消火するぞ!!」

 ノア兄さんは急いでどこからか消化器を取り出し、炎を消した。先ほどの掃除を置いてきてしまっているが、恐らく大丈夫だろう。

「あぁ…折角焼いた豚肉が燃えカスになってしまった…ちょっと火山が噴火したみたいで面白いな。」

 真っ黒になり何が何だか分からないようなものがフライパンの上に乗っている。これは食べたとしても確実に苦すぎるだろう。クイならば食べるだろうが、流石にかわいそうなので捨てておこう。そしてノア兄さんは頭を抱えながらフライパンに乗っているそれを見ている。

「買ってきたお肉が無駄に…こいつにはまだ早かったか…。」
「大丈夫だろう、ノア兄さん。おにぎりぐらいはワタシ一人で作れる。」
「それは誰でも作れるんだ。カノ。」
「まあ研ぎ過ぎてべちゃべちゃになってしまったがな。」
「やはりお前にはまだ食材を触らせるべきではないと今日ここで確信したよ。」

 ワタシはそれだけ言われると、ノア兄さんに呆れられてしまったのかは分からないが部屋に返された。恐らくだが、ワタシは不器用すぎるのだろう。まあ、蹴られたり殴られたりされなかっただけマシだとしよう。

・・・

side ヒノ

 今日はノアが料理を教えてくれる日だ。だが、先ほど時間短縮のために窓ガラスを割って家の中に入ってきたら少し指を怪我してしまった。だが絆創膏さえ貼っていれば大丈夫だろう。きっとお風呂で少し沁みるが。

「はーいノア。呼んだろう? この私を。」
「なんでまだ呼んでいないのに察知して来ているんだ…まあいい。手間が省ける。」

 ノアは平然とそう言いながら、今日扱うのであろう野菜達を冷蔵庫から取り出してきた。そうだ、どうせならば彼女と一緒に料理しようではないか。一緒にノアから料理を習おう。

「あ、ノア、少し待っていてくれないか? すまないね。」

 私はすぐに軽く頭を下げてから、自身の部屋へと走っていった。今日は誰と一緒に料理を習おうか。目についた彼氏を、私は部屋から連れ出していった。ついこの前作った彼氏だ。彼とはあまり思い出を作っていない。この機会に、増やそうではないか。

「今日は一緒にお料理を習おうか。」

 彼氏に話しかける。きっと彼氏となら素晴らしい時間を過ごせるだろう。彼氏は料理が作れるのかを訊くのを忘れていたが、二人で何か同じ事をするというだけでこれには価値があるのだ。そんな事はどうでもいいのだ。そして、ノアを待たせているという事で私は足を急がせる。

「ノア、待ったかい? すまない。少し忘れていた事があってね…。」
「別にいいよ。とりあえず話さえ聞いてちゃんとやってくれればいいんだ。」

 ノアはそう言いながらどうやら彼氏に対しては気にしていないらしい。とりあえず準備をしている時は暇なので、彼氏に話しかけてみよう。

「ほら、お料理の時間だよ。楽しく学ぼうね。」
「…なんだそれは。」
「それとは失礼だな。彼は私の彼氏さ。名前は分からないが…とても素敵な人だよ。」
「…帰れ。」

 ノアに即刻告げられる。私は本当に意味が分からず、「なぜだい? 彼はとても素敵な人だよ?」と返す。彼氏と一緒に料理を習う事の何が悪いのだ。だが、ノアは平然とした態度で言葉を返してくる。

「話聞かないだろう。君。」
「そうだな。きっと聞かない。彼と愛を育みたいからね。」
「なら帰れ。」

 まあ、確かに彼は積極的な人だ。ずっと話しかけてきてノアの話を聞けない可能性の方が高い。次からは彼や彼女とは一緒に来ない方がいいだろう。一応、料理を出来た方が恋人達とも話が盛り上がるだろう。次は独学で学んでみるとしようか。

・・・

side クイ

 ノア様にボクは呼ばれ、すぐにキッチンへと急いだ。どたどたと忙しない音が鳴る。そして、ノア様がキッチンに一人で立ってらっしゃっていた。

「ノア様ッ!! お待たせいたしましたッ!!」
「まあ、すぐ来てくれたのだから待っていないと同じだろう。ほら、さっさと手を洗ってくれ。」
「はいッ!! 承知いたしましたッ!!」

 ノア様のご命令に従い、そして次ノア様が何をおっしゃられるのかボクは観察していた。そして、ノア様が冷蔵庫を開け、ぽいぽいと野菜達とお肉を取り出してくる。ノア様のお手を煩わせるわけにはいかない。

「ノア様、そういう雑用ならばボクがやりましょう。」
「いや。いい。クイは見ておけ。」

 ノア様に制止されたので、ボクの手が止まった。ノア様とカノ様とヒノ様のご命令は絶対。ノア様が出来るだけ快適に過ごせるようにするのがボクだ。ノア様とカノ様とヒノ様に逆らうなど愚かな行為はしてはならない。ノア様が今日使うのであろう食材を出すと、ボクは「ノア様。お次は何をすればよろしいでしょうか。」と訊いた。

「今日作るのは野菜炒めだよ。まずはキャベツは芯を落として、食べやすい大きさに切る。」
「はい!」
「あっ…。」

 ボクはついつい力加減を間違ってしまい、キャベツが爆発四散した。粉々になってしまい、もう跡形もなくなりそこらへんに飛び散っている。急いで掃除しなければ。ノア様のご気分をきっとボクは害してしまっているだろう。

「す、すみません!! ノア様!! ノア様ッ!!」
「大丈夫だよ。謝ってくれるだけで充分だ。」

 どうしたのだろうか。なにか百戦錬磨の戦いの達人のように達観した瞳で物理的に明後日の方向へと顔を向けている。とても心配だ。ノア様の悩みはボクの悩み。出来るだけ解決したい。

「なにかあったのでしょうか? このクイが出来る事ならばなんでもやらせていただきましょう。」
「…料理を教える時、フランベのように燃やして危うく火事になりかけた奴と恋人という名の死体といちゃいちゃする奴がいてなァ…。」
「ああ…。」

 誰だかは察せた。ヒノ様だ。ノア様とカノ様とヒノ様が幸せならばボクはなんでもいいのだが、この場合はどうすればいいのだろうか。どちらについてもきっとボクはボクを許せないでいる。ならば中立を保つのが正解だろう。ここは大人しくしておこう。

「確かに、食べやすい大きさにするとは言ってがそこまでやらなくていい。次からはそこら辺にまで飛び散らさないでくれ。食材を扱う際はちゃんと割れ物を扱うように…丁寧にな。」
「はい。……あっ。」

 無音で野菜は崩れ落ちていった。そしてそれはボク様の手を伝いまな板の上えと滴っている。やはりボク様は力が強すぎてなにかをいつも粉砕してしまう。この前は椅子を壊したし、手が当たってしまい壁も割った。カノ様とご一緒に誘拐してきた野郎の血を拭いている時、力加減を誤りモップを二本ほど折ってしまった。なんだか、もう物を触らない方がよいのかもしれない。そう考えると、ボク様がいつも握っているのに壊れないマチェーテは本当にすごいのだ。これからもあれはボク様の相棒となるだろう。そして、ノア様とカノ様とヒノ様にもご接触しない方がいいのかもしれない。ノア様とカノ様とヒノ様は小さく可愛らしい。そもそも触れる事すら恐縮で一度とて触れないのだから、きっと大丈夫だろうが。

「あーうん…もう少し頑張ってみようか。多分…大丈夫だろう。」
「はいッ!! 喜んでッ!!」
「元気だね…。」

・・・

「あっ。」

・・・

「あっ。」

・・・

「あっ。」

・・・

「あっ。」

・・・

「あっ。」

 幾度もなくボク様は野菜を粉みじんにしている。今回こそ、とノア様が機会を与えてくださったというのにボク様はまた野菜を粉々にしてしまった。そろそろ怒られてしまうだろうか。その覚悟はしておいた方がいいだろう。

「…力加減が苦手なのだな…お前は。まあ、張り切りすぎているだけなのだろう? なら別に大丈夫だ。まずは力加減を出来るようになるところから始めればいいのだからな。」
「…! はい!! ノア様ッ!!」

 ノア様にお許しを頂けた。だが、こんなにも食材を無駄にしてしまったのだから、謝罪となにか物でも持っていこう。ノア様が好きなものと言えばすっぱいものだ。どうせならそれを贈ろう。それに、ボクも自分の制御がままならないガキのようなものになってしまっている。これは深く反省すべき事態だ。急いで改善する必要性があるだろう。

「どうする? 続けるか?」
「いえ…これ以上ノア様にご迷惑をお掛けするわけにはいきません。まず自分で力加減を出来るようになってからお願いさせていただいてよろしいでしょうか。」
「もちろん。」

 やはりノア様はお優しい。なによりもお優しいのだ。これからもノア様とカノ様とヒノ様についていこう。

・・・

side レノ

 ついに僕の番だ。ノア兄貴に料理を教わるのは一度や二度じゃないが、

「レノはー…よく料理を手伝ってくれているし、大丈夫だろう。」
「えっ。」

 まさか教えてくれないとは。教えてほしかったが、しょうがないだろう。今日はどうやらノア兄貴はカノ兄貴とヒノ兄貴とクイ兄貴に料理を教えるので手一杯らしい。今度またメンタルと体力が回復した際に教えてもらおう。そして、すぐに踵を返し正座しているカノ兄貴とヒノ兄貴とクイ兄貴を見つめる。というか、なぜクイ兄貴は悪くないしノア兄貴も怒っていないはずなのに正座しているのだ。ずっと観察していたがクイ兄貴は悪くないだろう。ただ単に謝罪の意を表したいからなのか勝手に参加している。

「さあーて、カノ、ヒノ兄さん。なんで今床に座らせられているか分かるな?」

 ノア兄貴が明らかに怒っていると思われる声色と威圧感で三人を見つめる。これはもう、明らかに説教されるのが目に見えている。そもそも、ノア兄貴と僕以外は大体不器用なのだから出来るわけがないのだろう。ノア兄貴が訊くと、カノ兄貴は「…ゲテモノ生産して家燃やしかけたから。」と少し悲しそうに、反省しているように。「…料理中に彼氏といちゃいちゃしたから。」ちゃんと反省しているのかしょんぼりとした声色で。「…野菜を全て粉みじんにしたからです。誠にすみません。」クイ兄貴は頭が地面につくほど土下座をしている。ノア兄貴とカノ兄貴とヒノ兄貴に対して謝る時、土下座をするのがくせなのだろうか。よく土下座している姿を目撃されている。

「…そうだね。そうだ。」

 満足そうにノア兄貴は三人を見下ろす。あんな三人の表情初めて見た。特にヒノ兄貴、あの人はなんやかんやで僕ら五人の中で一番傲慢でプライドが高いと思っていたのだが、今日は自身が悪いという事を自覚しているからかちゃんと叱られている。あ、どこかで既視感があると思ったらこれはいたずらしたペットを探す飼い主の動画のあれだ。

「…もう二度と料理に携わるんじゃない。」
「すみません…。」

 ノア兄貴とカノ兄貴とヒノ兄貴とクイ兄貴が床に正座させられている。そりゃあ、ゲテモノを作りあげく家を燃やしかけ、彼氏という名の死体といちゃつき始め触るものを全て粉々にしたのだ。誰でも怒るだろう。それに、全員ちょっとしょんぼりしている。クイ兄貴は分かるが、他二人はなぜだろうか。そんなにも仲がいいという印象はなく、どちらかというと利害の一致というだけでずっと一緒にいるだけだと思っていたのだが。

「いいな? もう料理全般はわたしがやる…きさまらは大人しくしておけ。」

 尋問する時並みの剣幕だ。こんなノア兄貴、滅多に見れたものじゃない。クイ兄貴がぷるぷるしている。半泣き状態だ。このまま止めなければ恐らく自分の首をマチェーテで落とすだろう。この話が終わった瞬間急いで止めなければ。というか、叱っているノア兄貴もずっと爪を噛んでいる。ちょっとえぐれているほどだ。あれはもはや指に包帯を巻かなければいけないほどだろう。病院に連行しないといけないかもしれない。

「…はあ、もういい。きさまらは散れ。」

 ノア兄貴が軽蔑したような瞳で三人を見る。そして声色は呆れが含まれていて、なんとなく不安になってしまうような感覚がしてしまった。まあ、まだ拳が出ていないので本当に怒っているとは言いにくいだろう。

「ッ…承知しました。ノア様。」

 少しだけクイ兄貴が息を詰まらせてからすぐにノア兄貴の元から離れた。急いで兄貴をマチェーテで首を落とす前に止めなければ。

「クイ兄貴!! 早まらないでくれよ!!」
「…ノア様を不快にさせてしまった。ボク様はもう…。」

 潤んだ瞳でこちらを向く。あんな表情出来るのかあの人。基本的には無か怒りか新錐状体だから泣いているところなどなんやかんやで見た事がなかった。いや、違う。クイ兄貴ノアの表情を見ている限り、あれはもうきっとノア兄貴がとめなければ首を落としてしまう。クイ兄貴の言葉を聴いたのか、ノア兄貴がくるりと踵を返した。

「…なァ、クイ。わたしはいつそれをしろと言ったのだ? 忠誠心が高いのはいいが…きさまはこのわたし達の番犬であり同居人なのだ。分かるな? 主の命令は絶対。よく分かるな? 飼い犬ごときが飼い主を噛むんじゃないぞ。しかと心に刻み付けておけ。」

 甘美で子供に言い聞かせるようにノア兄貴はクイ兄貴に語りかける。それはとても甘美なもので、頭がくらくらするようなもの。その声色を聴いていると心が安らぎ、自然とノア兄貴に従いたくなってしまう。あまりにもそれは他人を惹きつけるものだった。これをカリスマというのだろうか。脳が溶けてしまいそう。

「…ノア兄さん。あれで出てるよ。」
「ああ…だが、他人を従わせるならばこれが一番効果的だろう? 実の兄弟には効かないというのが唯一の難点だがな。」

 にこにこと爽やかに笑うその笑顔の下には、確実に支配欲と威圧感がたっぷりと含まれていた。それは確実に、他人を圧倒出来るものになるだろう。だが、ヒノ兄貴はその様が気に入らなかったのか、それとも試しているだけなのかは知らないが、いつもの毒舌を発揮し始める。

「この私達も自分の魅力に憑りつかれてしまえばいいという事か。フン、実にしょうもない考えを持つ弟がいたものだな。他人にへーこらするのが嫌いな野郎しかいないという事は理解しているだろう? それともそれすら見抜けないほどきさまは頭が悪いという事か?」

 つんとした、しょうもないものを目にし騒いでいる酒に酔った野郎を見ているような視線。それにはしっかりと迷惑だという念が込められているような気がした。

「失礼だね。昔からずっとそんな物言いだが…まあ、逆にいいではないか。こうではないとこのわたしの兄を務めていたとするならば、きっとわたしはきさまに飽きていただろう。そして、君も殺していただろうね。」
「誉め言葉として素直に受け取っておいてやろう。」

 あれをどう誉め言葉として受け取るのかは分からないが、流石兄弟だ。ああ言っているが、どこかではしっかりと信用しているのだろう。そうでなければあの人達は同居人などにはしない。

「……ククク、そうだね。そうさ。それでいいのだ。流石、ヒノ兄さんだよ。実に素晴らしいではないか! [漢字]完璧[/漢字][ふりがな]ペルフェット[/ふりがな]に[漢字]とてもいい[/漢字][ふりがな]ベニッシモ[/ふりがな]!!」

 あんなにギスギスしているような雰囲気を醸し出してはいるが、仲がいいからこそあんな会話をしているのだろう。どちらも言葉で感情を表現するのが苦手。黙ってどちらも背中を預けるタイプなのだ。その証拠にたまに手を繋いでいる。それはそれで気持ちが悪いが。正直言うと可愛らしく小さな子供のような外見でどうにかなっている感が強い。

「…あ、仲直りしたのかい。」

 カノ兄貴は飽きて小説を書いていたらしい。部屋に戻ってしまったものかと思っていた。もしかすれば、面白い事態になる感覚を感じわざとここに残ったのだろう。それほどカノ兄貴は面白い事態や小説になりそうなものに目がない。

「そうだな。少々ノアが拗ねてしまったが…可愛い弟だ。許してやろう。」

 けらけらと機嫌がよさそうにヒノ兄貴が笑っている。感情の安定が早すぎる。もう少し期限が悪いものとは引っ張るかと思っていたが、感情や情緒が安定しすぎているのだろう。だが、カノ兄貴はすぐさま「ダウト。ヒノ兄さんはワタシ達の事を面白い人間だとしか思っていないはずだ。可愛いなんて天地がひっくり返っても言わないだろう。」と冷静に呟いた。ヒノ兄貴は少しびっくりしたような瞳をした直後、「ふふふっ。」と笑う。

「ブラフを適当に言っていたのがバレたな。流石私の弟だ。」

 自分から肩を組みに行くヒノ兄貴を避け、カノ兄貴はこちらにやってくる。出来るだけ距離を取りたいのだろう。たまに三人で手を繋いでいるくせに。手を繋ぐ方が肩を組むより難易度が高い気がするのだが、もしかして気のせいなのだろうか。

「そうだね、はいはい。」

 あしらうように突き飛ばしてから、カノ兄貴は自分の部屋へとそそくさと帰っていった。今この場にいるのは、ヒノ兄貴とクイ兄貴と僕のみ。ノア兄貴はいつのまにか自身の部屋に帰ってしまっていたらしい。

「ノア様に言われたように…ボクは番犬なのだ…ノア様カノ様ヒノ様に現在のリードは握られている…ボク如きが主であるノア様に嚙みつくなんて…ボクは番犬失格だ…ノア様にはお許しを頂けたが…ボクの失態はボクが許せん…」
「…ノアあいつ、どんな教育を施したんだ? カリスマ性で支配したどころの話じゃないぞ…あいつは昔から他人を支配する能力に長けているとは思っていたが…もしかしてそれか? 他人の心を惑わすのが上手いのかそれとも違うフェロモンだとかなんだとか…何も知らないが、今度調査する必要がありそうだな。」

 なんかどっちもぶつぶつ言っていて怖い。なんだあれは。クイ兄貴はマインドコントロールに近しい事をされているし、ヒノ兄貴は信じたくもない事をぶつぶつと呟いている。確かに、クイ兄貴があんなにあの人達に心酔している理由を僕は聞いた事がない。大体、その時に何かしら邪魔が入るのだ。ノア兄貴かカノ兄貴かヒノ兄貴の誰かが食器を割ったり、デカめのゴキブリが出たり、ヒノ兄貴が近道と言いながら窓ガラスを割ったり。僕は弱っちかった頃の僕に対して教育を施してくれたから兄貴と呼び慕っているのだが、クイ兄貴は不透明すぎる。いつもノア様カノ様ヒノ様と三人の後を追いかけてばかり。自分の事など一切話さない。それだけ心酔している理由に何かあるのだろうか。確かに、クイ兄貴と初めて出会ったのはノア兄貴だと聞いた事はあるが、まさか__________________
 いや、考えたくもない。今日はもう眠ろう。気になってしょうがなくなり、眠りに付けないのは目に見えているが。それでも眠るのだ。今僕はきっと、深入りしてはならない事を目の前にしている。きっと、ヒノ兄貴が勝手に調査するだろう。それを始めた時に、僕も乗っかればいい話だ。今はまだ、動く時ではないのだ。

「あっそうだ…焼肉誘うの忘れてた。次みんな集まった時に言おう。」

作者メッセージ

ヒノくんが奇行担当になってきております。とりあえず変な事させておいてもいいキャラになりつつある。

『ヒャダインのじょーじょーゆーじょー』という音楽にハマっております。

2025/01/07 12:36

おんせんめぐり ID:≫1twJnxLLHxnQU
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